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大きなホットプレートを4人で囲み、美智が育てた野菜や、山盛りの肉を存分に味わった。


新鮮な野菜は塩だけでもため息がでるほど美味しかったし、肉も牛タンからロースまで揃い、タレも定番の「焼肉のたれ」から、美智オリジナルのソースまで各種並べられた。


食べると美智が嬉しそうにするから、勧められるままにお腹がはち切れそうになるほど食べた。

細身だが、やはり『若い男性』である郁は、雪緒が見ても気持ちいいくらい食べていた。


野菜と肉をたっぷり堪能して、雪緒は箸をおいた。


「あー、ナスがとろけた……」

「きゅうりって焼いて食えるんですね。知らなかった」


感心したように言う郁に、


「そうなの、生のきゅうりに飽きて、レシピ調べて見つけたんだよねー」


美智が缶ビールを飲みながら笑う。

祐輔は大人が食べ終わるのを待ちかねていたように郁の顔を見上げ、


「にいちゃん、スマブラも強い?」

「あったりまえだよ、男子の必修科目だろ」

「あっ! 祐輔、今日はもうゲーム駄目だからねー! 宿題残ってるでしょ!」


美智の鋭い指摘と目線に、祐輔は不満げに唇を尖らせつつも、言葉を飲み込んだ。


郁は身を屈めて、何やら祐輔に耳打ちすると、祐輔は嬉しそうに頷いた。そして目をあわせてニヤニヤとしている。――多分何かしらの悪だくみなのだろうが、祐輔があまりに楽しげで、雪緒まで笑ってしまいそうになる。

子供の笑顔にはつられてしまう。


宿題の妨げになってはいけないと、雪緒が片付けの手伝いを申し出ると、


「ホットプレート洗うだけだから、手伝うようなことないよ!」


と受け流され、余った野菜のお土産まで持たされてお暇することになった。


「ご馳走様でした、おやすみなさい」


玄関先まで見送られて、頭を下げる。


「にいちゃん、またね! 次、スマブラね」

「りょーかい。練習しとけよ。バスケのハンドリングもな」

「はーい!」


名残惜しげに手を振られ、エレベーターホールに向かう。ボタンを押そうとして……雪緒は隣の郁を見上げた。


「……出口はあちらですけど?」

「まだ帰るには早いでしょ」


夕暮れと呼ぶには明るすぎる空に目をやり、郁が当たり前のように3のボタンを押す。


「きみの帰宅が早いも遅いも知らないよ」

「焼き肉の後はアイス食べたいなぁ」

「だから知らないって」


実の妹を思い出すようなごく自然な甘えに、まだ夜とは呼べない時間帯、それに小山家での楽しい時間に絆されてしまった。


渋々ながら、3階に向かうエレベーターに、郁と一緒に乗り込んだ。



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