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夫婦や義兄弟が固めの杯を酌み交わして契りを結ぶのと同じように、魔族は己の血肉を使って契りを交わす。文字通り「血の盟約」を結ぶのだ。
ラウスが召喚術を行う時に使った青銅のナイフを取り出すと、ゼルダは自分の左手の生命線に沿って刃を短く這わせた。白い肌が傷付き、真紅の玉ができた。
「ほれ、啜れ」
血の雫ができた左手をラウスに差し出すと、彼は掌に顔を寄せ 舌先で血の雫を舐め取った。
「少し痛いが、我慢するんじゃぞ」
今度はゼルダがラウスの左手を取ると、人差し指の先端をナイフで軽く傷つけた。
「んっ」一瞬だけラウスが身を強張らせる。
指先にできた血の玉を、ゼルダが舌先を使って舐め取った。
その姿が、何だか卑猥に見えて、ラウスは思わず息を止めると顔を赤らめ、顔をそらした。
ゼルダがラウスの指先から口を離す。ほんの一瞬だけ彼女の唇の先からラウスの指先に唾液の糸が光った。
「んー。どうした、そんなに顔を赤らめて。どうせ、やらしいことでも考えておったのじゃろう」
「ちっ、違います」
ラウスが慌てて反論する。
「ふーん。どうだかのぉ」
言うなりゼルダはラウスを後ろから抱え、脇腹を思いっ切りくすぐった。
「ほれ、言え。言わんか。白状せい」
「あはは、ちょ、駄目っ。そこっ、らめですって、ふははは」
ラウスがゼルダの腕の中で身悶えする。ゼルダが更にくすぐり続ける。
「あっ、ふひひ。らめれすって、うひひ、くふふ」
笑う顔は、年相応の子供の顔だった。
本来なら生を謳歌し、無法者たちとは一切縁のない生活を送っている筈の、年齢の子供。
運命の歯車が何処かで噛み違え、ラウスのような哀れな子供が生まれる。因果律を正しく操作している筈の天上神たちに、ゼルダたち魔神が反発するのは、こういう理由もあった。