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#ミステリー
鬼霧宗作
686
みおん
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コメント
3件
うわ、めっちゃ重い展開……。小山刑事のニヤニヤした感じがめちゃくちゃムカつくし、主人公のフラストレーションがこっちにも伝わってきたわ。ベートーヴェンの「運命」とタロットカード「運命の輪」がリンクしてるのが不気味だし、犯人のメッセージ性が強すぎる。続きがめっちゃ気になる。これはただの殺人事件じゃなくて、何かもっと深い意味がありそうだ。
結局、実家に帰ってもあまり眠れなかった。途中で沙和子が電車を乗り換えるまでにした会話が、「じゃあね」「またな」と最後のあいさつのみ。
それ以外は何も話さなかった。
沙和子の言い方はキツいが、きっと前々から俺を気にかけてくれたんだろう。
余計にダメな兄だと痛感させられる。
5歳も年下の妹になぜ心配かけてんだ。
俺は自分の情けなさに笑いながら、タバコに火をつけた。
今日からまた仕事か……。
毎日行ってる喫煙所に行くか迷う。
木原は恐らく、前のことを気にしないで俺に絡んでくるだろう。
そんなくだらないことを考えながら、支度を済ませ会社に向かう。
もう7月の初旬、余計に暑くなってきた。
電車も混んでいて余計に暑苦しい。
そんな状況でも俺はそれどころじゃなかった。
木原、臭男、他の社員のニヤケ顔が脳裏に浮かぶ。
行きたくないなぁ。
駅に着くとやはりタバコが吸いたくなって、喫煙所へ向かう。
タバコと木原のニヤケ顔を天秤にかけたらタバコが勝った。
タバコの依存性は麻薬と変わらないんじゃないか?
この強すぎる中毒性。
まあ俺の意志の問題だが……。
タバコを吸って数分経っても、木原は来なかった。
珍しい。
実は気まずくなったとか?
……いや、それは無いだろう。
だが、なんで今日は来なかったのか?
木原もヘビースモーカーなのに。
会社に行くとやけに静かだ。
普段は扉の前にいても少しは話声が聞こえるんだが……。
ドアを開けてあいさつすると、スカンクが飛びついてきて、俺の胸倉を掴み、臭い口で叫んだ。
「正直に行ってくれ、小田君! 君がやったんだろ? いや、やったって正直に言ってくれ!今なら情状酌量の余地はあると思う! ……多分」
なんだ?
何事なんだ?
他の社員は俺に恐怖の眼差しを向けている。
しかも部長や社長までも。
背後から肩を叩かれた。
振り返った俺は凍りついた。
小山だった。
その後ろには大鷲もいる。
「草尾さん。そう取り乱さんでも……小田さんもびっくりしてるでしょ?」
「……だが、こいつで間違いない! 木原に元カノのことをバラされた腹いせに殺ったんだ! 奥さんごと……」
は?
どういうことだ?
木原と奥さんがどうしたって?
俺は状況が理解できず、唖然と立ち尽くす。
「だからって、部下を犯人扱いするのは良くないですよ」
小山は後ろの大鷲を見ながら、
「な、大鷲?」
と同意を求める。
「ええ、私なら嫌ですね」
大鷲はあっさりと答える。
「とりあえず応接室をまた借ります。まだ小田さんには何も聞いてないので」
もう全員と話をしたのか……。
小山と大鷲に促され、俺は応接室にむかう。
「私の出世が……トッププレイヤーの部下が……あんな……あんな出来損ないの役立ずに~~」
臭男が後ろで喚いている。
俺のことそこまで思ってたのか。
酷い言いようだ。
応接室に入る。
「よっこらせ、と。まあ座ってくださいよ、小田さん」
「はい……」
俺も座るが、座った心地がまったくしない。
まるで空気椅子をさせられてるかのような緊張感だ。
「社内ではえらい嫌われようですな。社員の方々は全員あなたが犯人だと」
「小山さん!またそんな……」
後ろで立ってる大鷲は焦ったように声をあげたが、小山が睨みをきかせて黙らせた。
「何があったんです? 私は何も知らないし、やましいことはやってない!」
訳もわからず犯人って。
まったく意味がわからない。
「まあ落ち着いて話しましょうよ~。とりあえずこれを見てください」
大鷲は何か言いたげだったが、ぐっと堪えていた。
写真だ。
これは……木原だ。
髪型が変わっているが、木原だった。
カツラだろうか?
白髪にも銀髪にも見えるカツラにスーツを着てる。
普段とは違う感じのスーツだが……。
右手には指揮棒。
そして何よりも気になったのが、 空っぽになったお腹の中にレコードプレイヤーが入っている。
しかも左手の人差し指がプレイヤーの針のところで抑えられてる。
まるで自分でセットしたかのように……。
「すごいでしょ~。でもそれだけじゃないんですよ」
もう一枚の写真を見せられる。
これはもっと酷い。
俺は愕然とした。
木原の奥さんだろうか?
タイヤに頭と手足が有刺鉄線で巻かれていた。
頭と手足は左右対称に円が作られており、頭は逆さまで結ばれていた。
近くにバスドラムのフットペダルらしきものが置いてある。
バスドラムを叩くビーター部分が足になっていた。
もう見ていられない。
俺は目を背けた。
「ちなみに胴体はゴミ箱に捨てられていました。不要なパーツだったてことですなぁ。がはははは」
余計なことを言わなくていい。
前も思ったけど、この刑事は正気か?
これを笑いながら説明するなんて。
ほら、大鷲が震えてるぞ。
「鋸好きですよねぇ。この犯人! 小田さんも鋸好きだったりします?」
このオヤジ……!
怒鳴って殴り飛ばしたい衝動に駆られたが、ダメだ。
冷静になれ。
感情的になったら負けだ。
俺は自分自身に言い聞かせる
「す、好きなわけないでしょう。日曜大工が趣味ってわけじゃないし……」
学生の頃、図工の時間で木を切ったぐらいだ。
「でしょうね~。ベースが元々ご趣味だったんですよね? 大切な指を傷つけたら大変だ」
ぐ……。
知ってるなら聞くな、クソオヤジ。
俺を怒らせようとしてるのか?
だが、俺は実際何もやってない。
「あ~。話が途中でしたね。このレコードプレイヤーはずっと音楽を奏でてたみたいでね。近隣住民の苦情で土曜日の朝に発見されたんですよ! 昨日の夜からずっとうるさいってね」
土曜日の朝か。
それは俺が東京から千葉に向かっていた。
家族が証明できる。
「ただ、死亡推定時刻は7月1日、金曜日に木原さんが帰宅された19時頃! あなたはその時残業もせずお帰りになったとか?」
「は、はい……」
嫌な予感がする。
「木原さんは普段から残業をしないタイプで、いつも通りご帰宅されたみたいです」
そして俺に指を刺しながら、
「そして! 普段は夜遅くまで残業してるあなたは、明日用事があると言って定時で帰った!なぜですか~?」
なんなんだ、このねっちこい話し方は。
腹が立つ。
「それは葬式が……」
「あ~そうでしたね。最近殺害された大沢さんのお葬式でしたっけ? 忘れてましたよ~」
わざとだろ。
食い気味で言いやがって……。
「千葉にはいつ戻られたんですか?」
「土曜日の8時頃に家を出ました」
「ふーん。わざわざ定時である17時に帰る必要があったんですかねー? いつも通りに遅くまで残業しろとは言いませんが、少ーしぐらいはできたでしょ?」
そして俺の目元に指を刺しながら、
「それにその隈! あまり睡眠もとれてないようですし?」
失礼な奴だな!
「こういう事情がなければ、早く上がれないので……この会社はそういう会社です。確かに寝付けは悪いですが、私だって早く帰ってゆっくりしたいこともあります」
「ゆーっくりね……。まあ余程の仕事好きじゃなければ、残業なんて本来誰もしたくはないですよねー。それで金曜日は帰られてゆーっくり過ごされてから、翌日に千葉に戻られたと?」
「は、はい。そうですが……」
「家にいたことを証明できる人は?」
「いません」
いるわけないだろ。
一人暮らしなんだから。
「はぁ~。またアリバイ無しかー」
今回は普通に言いやがった。
「ちなみにその顔のシップは?」
正直に言うべきか…… 言うしかないだろう。
「金曜日、帰るときに木原と揉めてしまって……」
「なんと! 動機はあるんですね!」
ぐ……。
悔しいが確かに俺には動機はある。
「まあ、あなたが木原さんに殴られているところを目撃していた社員から聞いてるんですけどね………がははは」
こいつ知ってて…… しかも見られてたのか。
「他に聞きたいことがあるんですが……。木原さんのお腹にあったレコードプレイヤーで何が流れてたか知ってます?」
知るわけないだろ。
俺は心底うんざりしてしまった。
だけどここで悪態をついても得することはなにもない
自分自身に言い聞かせる。
「わからないです。木原が好きな曲が流れてたとか? 私は彼の音楽の趣味は知りませんので」
本当のことだ。音楽のことで話をしたのはあの3人と家族だけ。
「実は彼の曲の趣味とは異なってましてねー。彼はクラブミュージックを好んでたようで、いくつかCDも見つかってます」
きっと奥さんに内緒でクラブにも通ってだんだろうな。
「それとはまったく別! この写真を見て何もわかりませんか? この髪型と服装。どこかで見たことあると思いませんか?」
おいおいこんな写真近づけないでくれ……。
もう見たくもない。
ちょっとまてよ……。
確かに見覚えがある。
これって音楽の教科書や学校の音楽室に飾られてた……。
「ベートーヴェンに似てる……」
そうベートーヴェンだ。
腹にレコードプレイヤーを入れられて殺されてる以外はベートーヴェンだ。
「ピンポーン! 正解です!」
小山が手を叩く。
「クイズ選手権に出れるんじゃないですか? 小田さん!」
ぐ………。
俺は歯を食いしばる。
「そう! 流れてたのは誰もが聴いたことがある、ベートーヴェンの運命です!」
運命……。
確かに誰もが聴いたことのある曲だ。
だが、木原がクラシックの曲を好んでいるとは思えない。
「木原にクラシックの趣味があったんですか?」
「んー。実はこのレコードプレイヤーや指揮棒は盗難品で、近く老人宅でコレクションとして飾られていたものが盗まれてたんですよ。現金と一緒にね」
盗難品か……。
お金もコレクションも奪われて、その老人も気の毒だ。
しかも殺人現場でそれが見つかるなんて……。
「その時は、レトロで高価そうという理由で盗まれたんじゃないかと捜査はしてたんですが~。まさか盗難品が人の腹から出てくるなんて! 流石にご老人に事実を言うべきか迷ってます! がははははは」
笑い事じゃない。
「しかも! 少し腸の一部がついてしまっていまして………持ち主はこれを受け取ってくれますかね?がはははははは!」
受け取るわけないだろ。
しかも大爆笑しやがった。
こんな奴が刑事なんて腐ってるな。
職種は違えど、同じ公務員である妹のことが心配になる。
「ショック死されても困りますからね、ぶぶ。困ってます、ぶふ」
笑いを堪えるな。
しかも、縁起でもない。
「んっんー。小山さん! 一度本題に戻りましょう」
流石に耐えきれなくなったのか、大鷲が咳払いして小山に伝えた。
「わかってらぁ。咳払いなんかすんな! 鬱陶しい」
嫌な上司を持つと大変だな。
俺もその気持ちはわかると、俺は心底大鷲に同情した。
「お気になさらず、話を戻しましょ」
お前のせいだ。
大鷲も若干不機嫌そうだ。
「木原さんには、クラシックの趣味なんてまったく無かったわけですな」
ようやく話が本題に戻った。
「何故ベートーヴェンに?」
純粋に疑問だ。
確かに有名な偉人であり、有名な曲ではあるが……。
なぜ?
「そりゃー私も知りたいですよ! 犯人ではないんでね。小田さん。音楽をやられてましたが、クラシックは?」
「自分が演奏してたのはハードロック系等です。クラシックとはあまり縁がないですね」
母さんは元吹奏楽部でクラシックを好んでいたが、俺は興味が無かった。
「んーそれは困ったなぁ」
何が困っただ。
そんなに俺を犯人にしたいのか?
俺は無意識のうちに警戒心を強める。
「あと、これも……」
再度奥さんの写真を見せられる。
どちらかといえばこっちのほうが見たくない。
バラバラだからな。
「この中心のカードに見覚えあります?」
タイヤのホイールの真ん中に、カードが貼られている。
これは……
「タロットカード?」
「ピンポーン! またまた大正解です!」
小山がまた手を叩きだす。
「小田さん! やはりクイズ番組に出られてみては?」
こんなクイズ番組があってたまるか!
殺人現場の証拠探しクイズなんて……。
「私はこの手のことはなーんも知らなかったんで調べたんですが……。運命の輪というカードらしいですよ」
知ってる。
昔、これを元にした事件のドラマを見たからな。
バラバラ殺人ではなかったが……。
「位置が正しい向きと逆の向きだと意味が違うらしいです」
細かい内容はあまり知らないが、逆位置は大半がいい内容でなかった気がする。
これは逆位置だ。
「まあ簡単に言うとチャンスを逃したり、タイミングではないという意味です。奥さんは妊娠されてたそうですよ」
「妊娠?」
「ええ、1か月ぐらいだったとか。それでタロットカードでタイミングではないと表現されて殺されるなんて……皮肉ですな」
妊婦をバラバラにするなんて…… 正気ではない。
「小田さんは占いに興味は?」
痛いところをつかれたな。
「はい……少し前に少々」
「少し前? 具体的にいつ頃ですか?」
うっ……。これを言ったらまた疑われてしまうかもしれない……。
それに 男が占いに興味があったなんて、学達にも言えなかったことだ。
だが、調べられたらいずれは分かるだろう。
正直に話そう。
「1年前です……」
そう……綾葉と 別れて数日後、無気力になってた俺は占ってもらうことで、少しでも良い方向に進めばと考えたことがあった。
「1年前? それはあなたがちょうど、大沢さんと別れた頃じゃないですか? その時占いに頼ることで状況をいい方向に向かわせようと思った?」
「その通りです。でも、祈願してもらっても、おすすめの神社にお参りをしても状況は良くならず……。すぐにやめました」
「なるほど」
仕方がなかった。
神でも霊能力者でもすがるしかなかったんだ。
寂しい部屋で大きな喪失感に苛まれていた俺は、誰かにすがりたかった。
こんな時に頼れる友人は2人しかいない。
でも1人は他県におり、もう1人は音信不通だった。
その結果、俺は占いに頼ろうとした。
でもダメだった。
喪失感は全く埋まらなかったし、状況は悪化していくばかり。
綾葉は「神様はいるんだよ!」って、言ってたけどそれも嘘だ。
神なんて人間が勝手に作って、崇めた幻影にすぎない。
神が人間を作ったんじゃない。
人間は猿から進化しただけ。
昔の人間がフィクション作品のように神をいくつも作っただけだ。
それを都合よく解釈して崇めているんだ。
「で、神にも見捨てられて絶望したあなたは……」
「俺は何もやってない!」
もう我慢の限界だった!
俺は勢いよく立ち上がった。
「まあまあ。別にあなたが犯人だ!なんて断定してないでしょう?」
「それに近い言葉を言おうとしてただろう!」
「言おうしたのであって、まだ言ってないが……。最後にこれの意味、わかったりします?先に言っときますが、これはコピーした物です。レコードプレーヤーと一緒に木原さんのお腹の中にありました。」
小山から紙を1枚渡される
黒色の文字で書かれている。
~運命 ~最終楽章
作曲家が運命の輪と出会う。
作曲家が占ってほしいと頼んだ。
占ってもらう代わりに、自分の曲を演奏する。
運命の輪がルーレットのように回りながら喜んだ。
私が好きな曲だと。
作曲家は右手で指揮し、左手で演奏した。
右足は、運命の輪を打楽器の代わりにしてリズムを取る。
一緒に演奏できた運命の輪はとても嬉しそうだ。
曲が終わったときには運命の輪は止まり、男の運命を指し示すだろう。
読み終えて
「意味がわかりません……」
こんなメッセージを殺害現場に残すなんて犯人は一体何を考えているんだ…。
「わかりませんか~。それは残念ですな」
何が残念なんだ。
その言葉に無性に苛立ちが湧いてくる
「ここをよく見てください。」
不意をついたように拡大された奥さんの顔の写真を見せられた。
「なっ……!」
「ね? すごいでしよ? 矢印の形に皮をはがしてるんですよ」
まさかルーレットってこのことだったのか……。
「しかも天井にはlive、真下にはdie and go to hellと血文字で書いてありました。簡単に和訳すると生きると死んで地獄に落ちるっていう意味です。矢印は下を向いているということは、作曲家は地獄に落ちたってことになりますな」
なんて恐ろしい発想なんだ。
「あと木原さんの足元が水浸しになってたんですよ」
「水?」
「そうなんですよ~。少し離れたところにバケツが倒れてまして、それには血でCocytusと書いてありました」
「コーキュートス?なんですかそれ?」
「またまた~。実は知ってるんじゃないですか?」
「………」
頭にきすぎてもう言葉が出ない。
「イタリアの詩人、ダンテの神曲という作品で出てくる地獄の最下層、9番目に位置する川のことですよ。そこでは裏切りや嘘をついたものが氷漬けにされるらしいです」
「そうなんですか……」
というとその物語でいったら、作曲家はコーキュートスに落ちたということになる。
「小田さん、詩集とかにも興味あったりします?」
興味深い話だと感じたが、今まで詩を好んで読んだことはなかった。
「いえ。読んだことすらありません」
「わかりました……。まあここまでにしときますか。これ以上会社にも迷惑でしょう」
迷惑な存在はお前だがなっていう目で俺を見る。
「大鷲、行くぞ。」
「はい」
2人は去っていったがこの後だ。
俺はどうすればいい?