テラーノベル
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あのプロポーズの日にクラブの上から見た、幻の世界大会ダンス…今は才花の部屋で舞っている。
小松さんが、ロスのダンスが好きという気持ちはとてもよく分かる。
あのパフォーマンスの中に成長中の才花を見ていただろうし、技の組み合わせもその年齢に合ったパワフルなものだ。
才花がイギリスにひっさげていくつもりだったこのダンスは、彼女の集大成だったはず。
技術と体力はピークを迎え、でも資金の限界があり、今年こそはと仕上げにかかっていたに違いない。
それが素人の集まるクラブで披露し、俺しか見ていないここで踊るなんてこと誰が予想していた?
だが、悲観的な思いは才花の口角が上がっていることで払拭される。
パチパチパチパチ…俺の拍手にお辞儀して見せた才花は
「羅依、クラブの講師は受けたからにはちゃんと続ける」
部屋の真ん中に立って俺を見た。
「そうか」
「ここの使い方は少し考えてもいい?」
「何かありそうだな」
「ちょっとね」
「楽しそうだ」
「羅依のおかげで」
「もう一度受け止めようか?」
「ケガしないでよ?」
「俺?」
「そう」
同時に俺のヤンチャな奥さんは、俺に向かってフロアを蹴っていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「羅依、このTシャツ借りていい?」
「ん、パジャマか?」
「今夜の講師はこのTシャツ」
「デカ過ぎだろ?」
「これにレギンス、これ。あ、これ最初から破れてるから」
「それくらい、俺でも分かる」
「本当はデニムのショートパンツと合わせて、履いてないようで履いてるよっ、ていうのも可愛いけど、一応講師だからおとなしい格好にするよ。キズも見えちゃうしね」
水曜日の朝、羅依を見送ると、乾燥機から洗濯物を出してたたむ。
それから炊飯器にお米をセットして、軽く全身の筋肉を動かすトレーニングをする。
その後、自分の小さい頃からのダンスに関する動画をレッスンや大会に関係なく持っているだけ全て見た。
うん…こうして見るといろいろ思うことがあるね。
5頭身くらいの体にダボッとした服装で踊っている頃は、みんなと揃って踊ることが楽しかった気がする。
今見ても子どものグループダンスは可愛い。
そこから上達するにつれて技も大きくなり、4人、3人グループで踊り、ペアでも練習したし大会にも出た。
クラブダンスは別として、羅依がくれた私の部屋というスタジオをどう使おうかな…
‘ここは才花の部屋だから自由に使え。今日みたいに不完全燃焼なら、ここで完結させればいい。ギャラリーが必要ならブラインドを上げればいい。クラブダンスの永遠にアップダウンなんてのが退屈なら、ここでレベルアップする生徒を取ればいい。才花の可能性は無限だ’
羅依の言葉は私を包み込んだり、突き動かしたり…ふふっ…それでもやっぱり私は羅依の網の中にいるんだよね。
私はスマホを充電器から手にすると
‘今日、空き時間はありますか?’
短いメッセージをひとつ送った。
コメント
2件
才花ちゃん始動💃⤴️⤴️
才花ちゃんサイサイダンススクール開校する?チビチビくん達の。 ここは才花ちゃんのお部屋!私も思うよ!才花ちゃんの可能性は無限だよ♾✨また翔ける✨🥹 才花ちゃんは誰に連絡したのかな?緒方さんかな?相談するには1番いいよね!