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咲乃ルイ
#バトル
「ねえ暗夢ちゃんさ、朱城くん体育祭の応援全然覚えてなくない?」「え、そうだね。」
「もう体育祭も近いからさー、私たち困るんだよ。どうしたら覚えてくれるかなー?」
夜の熊野神社にて。
「という相談をされたから、今夜は朱城くんの夢に入って応援練習をするよ!」
「僕前に何回も朱城くんの事相談してたよね?なんで僕のリクエストは無視してあさひちゃんのは即答するのかなあ?」
「優先度があるの。あさひちゃんが累乗なら白夜くんは加法・減法だよ。」
暗夢は学年末テストで、数学百点を獲ったことがまだ嬉しいらしい。
「じゃ、白夜くん、行ってみよう。」
「う、うん…。」
朱城くん家についた。朱城くんはもう寝ている。
「うわ、歌詞カードピカピカ…。全然読んでないじゃん。」
「じゃ夢に入るよー。」
夢の中は真っ暗な体育館のような空間だった。
「あれ暗夢、この部屋は?どんな練習?」
「私たちは今日は直接は動かないよ。應援團が来るから。」
すると、下駄を履き、ボロボロ和服を身にまとう人たちが、部屋の戸を勢いよく開け、「オス!」と叫んだ。
「え、あの人たちが應援團?バンカラ?」
「うん、そうだよ。」
「え、僕たちの中学校と雰囲気全然違うじゃん。それに、凄く怖そう…。」
「内容は中学校の応援と一緒。そうじゃなくて、これは精神を鍛えるんだよ。」
聞いたことがある。盛岡や仙台の高校には毎春、密閉で光の入らない体育館で、新入生への洗礼として應援歌練習が行われるらしい。声が小さかったりフリが揃わないと應援團に叱られ、歌詞を覚えていないと「歌詞場」と呼ばれる地獄に連れて行かれるとか…。朱城くん、大丈夫かな…。
「それでは最初にエールの練習を行う。」
一回目のエール。朱城くんは声は小さいしフリも適当だった。すると團長は
「やめだー!」
と怒号を響かせ旗を振り回した。見てる僕も恐怖を感じた。
「歌詞を言ってみろ!」
「え、えっと…。」
「歌詞ちゃんと覚えてこい!歌詞場だ!」
すると朱城くんは、巡回していた應援團員に、体育館の脇に連れていかれた。
「あの小窓の隙間の光で、應援團に囲まれながら歌詞カードを覚えるまで読み込むんだよ。」
「暗夢、これ流石に厳しすぎない?朱城くん既に泣いてるよ…。」
「これぐらいしないと覚えないよ。現に高校生になったら誰でもやるし。」
夢の中の過酷な應援練習は五晩にかけて行なわれた。三日目辺りから朱城くんは違和感に気づき入眠に拒否反応を示していたが、暗夢が強制的に眠らせた。結果、朱城くんはなんやかんや應援を覚えてくれたから、これならもう大丈夫だろう。
最終日、全ての應援を通しきった。すると團長が、
「朱城、よくやったー!」
と叫ぶ。その瞬間、体育館に光が差し込んだ。
「終わった、のか?」
朱城くんは疲れと達成感の余り涙をこぼしていた。
「この試練を乗り越えたお前は、どんな環境でもやって行けるはずだ。まずは今度の体育祭、全力でやりきってほしいと思う。俺からは以上だ。これで應援練習は終了する!以上解散、シタ!」
「シタ!」
朱城くんが元気に呼応すると、夢が終わった。
朝。現実の学校での応援練習。朱城くんは誰よりも声を出し、誰よりもフリにキレを出していた。朱城くんはあさひちゃんに
「朱城くんすごい!見違えるほどかっこよくなってるよ。」
と褒められている。暗夢は「私が褒められるべきじゃないの?」と、言わんばかりの目であさひちゃんを見つめていた。