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「……そんでさ。」
ヒョヌが息を呑む。
ジホの目が、どこか懐かしい響きを帯びていた。
「俺もお前と同じ、韓国人だ。」
路地裏に湿った夜風が吹き抜ける。
「ソウルの西側の出。ヒョヌ、どこだっけ?釜山?」
ヒョヌの唇がかすかに震えた。
「……なんで……。」
「なんで知ってるかって?」
ジホは笑う。
「調べりゃすぐわかるよ、ホストなんて。
名前と顔で何でも出てくる。」
ヒョヌは口の中で小さく、
「뭐야…」(なんだ…)と呟いた。
ジホの指先が、ヒョヌの顎をそっと撫でた。
「お前、ひとりだと思ったろ?
俺がいるよ、ヒョヌ。」
不意に、ジホの瞳の奥で
何かが暗く光った。
1日後…
店の裏の薄汚れた喫煙所。
灰皿の縁に雨粒が溜まっている。
俺は煙草を吸い切る前に、火をもみ消した。
「なあ。」
紫の髪が、視界の端に揺れる。
知ってる顔。なのに、何度見ても馴染まない。
「……なんだよ。」
「너 한국인이지?」
一瞬だけ思考が止まった。
口の奥に煙の味が残ったまま、声が詰まる。
「뭐야, 갑자기.」
「그냥. 같은 나라에서 왔잖아. 뭔가 웃기다, 여기서 이렇게 마주치니까.」
紫髪の笑いは、相変わらず目まで届かない。
何を考えてるのか、どこまで知ってるのか――わからない。
「……それがどうした。」
「同じ国の奴なら、助け合おうぜ?」
紫の爪先が、雨水を蹴るみたいに音を立てた。