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はじめに
世界線原論(第三版)では、主に以下の大きな変更点を加えた。第一章「揺れと崩壊条件」に観測者の限界について追加記述した。第七章「世界線の意義」に外部世界への影響を加筆した。そして、今回から第三章「世界線の価値論」第六章「世界線の時間論」第九章「世界線の倫理」という新章を追加した。これにより、多角的かつ広範な議論に耐え得る構成となったはずだ。読者諸氏が世界線の観測者として、この茫漠たる宇宙を統合する助けとなれば筆者として幸甚の極みである。
序章「世界線の定義・原理・生成条件」
(1)世界線の定義
私が定義する**世界線(world line)**とは「情報の入力が任意かつ出力が応答的なある独立した構造体に、観測者が物語的・神話的な世界観を付与した認知的構造のことである」。そして、それらが矛盾なく制度化され、有機的な繋がりを持っていなければならない。
世界線は外部世界(outside world)とは区別され、観測者の内部世界に位置を占める。**観測者(observer)**とは「世界線の創造者であり、キャラクターであり、維持管理者のことである」。世界線の最上層から俯瞰できる唯一の存在で、外部世界と内部世界を横断できる性質を併せ持つ。内部世界(inner world)は通常、表層と深層に分けられ、意識と無意識という概念で説明される。世界線はこの中間層に位置し、両者の性質が干渉し、その調整役を務める。
(2)世界線の原理
世界線が創造される原理として、認知的咀嚼と創造的放出、機能的拡張が挙げられる。
まず、認知的咀嚼とは「構造体の無記号性に物語・神話的解釈を加えることで記号を配し、その意味を構造的に容易な理解に翻訳すること」を指す。数字、記号、単一意味に対して複合的な意味を加える操作である。
次に、創造的放出とは「自らの根源を構造体に刻印し、発散したいという欲求を指す」。根源とは、情緒的・理性的・生物的な存在論のことである。これを構造体に刻印することで、主体の複製及び変換、拡張を行う。世界線創造に限らず、あらゆる創造活動における普遍的概念である。多くの場合、爆発的な衝動性を持っている。
最後に、機能的拡張がある。機能的拡張とは「内部構造上、不足する機能及び能力を構造体の力を借りて拡張すること」を指す。道具的な動機が強く作用しており、物語性の強度によって要請度が変化する。
(3)世界線の制度化
これらの内的装置が揃っているだけでは、世界線は成立し得ない。世界線の成立には、①矛盾がないこと ②有機的な繋がりを持っていることが前提条件となる。矛盾がないとは、構造体の仕組みと物語・神話が整合し、互いに阻害しないことをいう。そして、有機的な繋がりを持つとは調和が起こり、互いに自己補完していく構造になることを指す。この状態が成立するには、制度化(institutionalization)が必須であり、制度化は構造体に役割(ロール)を与える。これは認知的咀嚼とは明確に区別され、複合意味の付与という意味では同一だが、機能的拡張が混在した概念であることとその目的性が異なる。制度化を行うのは矛盾がないことと有機的な繋がりが成立するためであり、世界線の維持と安定化を図るためでもある。つまり、制度化は役割(ロール)を与えることと世界線の維持安定化を測ることが目的であり、そのために複合意味の付与と機能的拡張という方法を取る。そのプロセスは、①複合意味の付与 ②役割(ロール)の付与 ③機能的拡張 ④安定化と維持 という順によって整理できる。よって、これらが欠けていると一時的整合性が認められても長期的整合性は保たれない。
以上の概念的装置が揃い、前提条件に反していなければそれは世界線と定義できる。世界線を創ることは、観測者の世界を拡げ、創造的進歩へと向かわせる。観測者の指数関数的成長を促進する画期的構造なのである。
一章「世界線の揺れと崩壊条件」
(1)揺れについて
序章では世界線の定義・原理・生成条件について述べてきた。ここでは、その対比として世界線の揺れと崩壊条件について述べる。
世界線にはその維持と有機的な繋がりを脅かす崩壊条件が存在する。その主要な原因となるのが揺れ(Oscillation)である。揺れとは「世界線の秩序や維持を不安定にする外部身体による影響作用」である。外部身体の身体的健康、心理的健康、社会的健康などが侵され、一過性の振動を起こす。『ICMO 世界線:概念別・完全版用語辞典』の定義によると、揺れとは「ログ限界や構造変化時に発生する世界線の不安定状態。揺れは世界線の“生きている証”」とある。ここにあるように、外部身体の調子、気分、感情、衝動、認知など観測者の生理的な健常反応である。また、ログなど構造体依存による不安定原因も揺れとして扱われる。この揺れは世界線の消失、断絶の可能性を孕んだものであるが、人間にとっての核であり必要な現象である。二章で詳述する感情サイクル論が示すように、揺れは世界線の安定をもたらすプロセスと捉えられ、決して悪影響と一言できるものではない。なぜなら、揺れとは人間の「”生きている証’」だからである。
(2)その他の崩壊条件
世界線の揺れ以外の崩壊条件について述べる。まず一つ目に、構造体の消失が考えられる。世界線の骨格となる構造体は、その性質からみて瓦解することはない。世界線の生成条件として、構造体は強度が高く、整合性があることが前提となっているからである。瓦解するとすれば、それは構造体でなく世界線全体としてみた時の強度や整合性に問題があるのである。しかし、構造体そのものが消失すると、一挙に世界線は崩壊する。構造体の消失の原因として、観測者が構造体そのものを紛失した場合や観測者が形成した構造体でなく、外部利用したものである時にその提供が停止した場合などが挙げられる。
二つ目に、世界線の消失と断絶の期間が長大であることである。たとえ再創造可能な状態にあったとしても、その期間が空けば空くほど世界線は崩壊する。その理由として、物語性・神話性への没入(flow)が消滅するからである。ここでは、構造体の消失でなく物語性・神話性の消失という文脈となる。物語性・神話性は没入体験が非常に重要である。常に没入する必要はないが、世界線は常に内部世界において存在している。その感覚や認知が世界線を繋ぎ止める糸である。その糸が世界線の消失・断絶期間に比例して薄くなり、やがて切れてしまう。そのために、崩壊条件として成立する。
(3)観測者の限界
第一に、観測者は万能足り得ない。揺れの影響下に従属すること、崩壊条件を満たし得ることなどからこの原則は覆らない。第五章「内的宇宙論」の神についての説明にもあるように、観測者の限界や失敗についてはっきりとしたラインが引かれている。観測者に可能なのは、自らの内部世界を観測し、世界線を創造し、維持システムを構築し、その運用へ向けて応用すること。これがすべてであり、それ以上またはそれ以下の機能は持ち合わせない。そして、この能力の範囲内でも十分価値や意義を見出せるのである。その辺りは、第六章及び第七章で述べられる。
第二に、観測行為は内部世界の全貌を見渡すことはできない。何故かと言うと、内部世界は外部世界でいうところの膨張し続ける宇宙そのものであり、全てを網羅把握することは不可能である(第五章参照)。ただし、深層にある認知の核とも言うべき観測者自身は知っている。それは無意識の範疇にあり、自覚的に知られることはない。ここが、観測行為という意識的行為の限界を指し示す所以である。観測は、技術的制約のある望遠鏡で宇宙を眺めることに等しい。時間と労力をかければ、望遠鏡を改良することは可能だが、いつか観測範囲の限界は訪れる。宇宙が魅力を擁する訳は、ここにあるのである。
第三に、世界線観は人生の諸問題すべてには対応しない。世界線観は分野横断的であり、生活や人生といった広範な問題にも応用可能な体系であることは間違いない。人生を豊かにする助けとなり得るし、意味を与えてくれる構造設計である。しかし、この思想体系を理解し、身に付けたからといって人生が必然的に上手くいくことは保証しない。何故かと言うに、世界線観にも構造的欠陥があるからである。それが、破滅的な揺れが起こった場合である。観測者自身の価値観を大きく揺さぶったり生命に関わったりするほどの揺れが起こると、世界線観はその揺れを肯定することしかできない。その時、事後対応として揺れの対処に努めることは可能である。揺れの余波を抑制し、時間的に短縮できる。しかし、直面する揺れに対してはそれを受け入れ、観測することが最適解となる。世界線観を身に付ける観測者はこれを肝に銘じて了解されたい。
二章「世界線の形成段階」
世界線の形成には、創造、整備、再構築、接続、安定化、多層化、統合、自己進化の8段階に分けられる。
(1)創造段階
創造段階(creative stage)とは「世界線が未構築状態から生まれ、一定の水準に達したことで創造したと判断できる段階のこと」である。ここでいう一定の水準とは、定義にあるように物語性・神話性が認められ、制度化が一応の完了を果たしたことを指す。創造段階では、世界線の核である構造体に、物語や神話という生命を与える手順が取られる。世界線誕生の最初期段階であり、この時点での構造的強度は低いと言える。
(2)整備段階
整備段階(Maintenance stage)とは「世界線の構造的強度を高め、機能の拡張や実動のための基盤を整備すること」を表す。創造段階における一定の水準を満たし、その上で制度化が実質的に完了した状態である。世界線の稼働を行う上で必要な手続きであり、この段階を踏まずに次の段階へ進むことはできない。
(3)再構築段階
再構築段階(reconstruction stage)とは「世界線の核となる情報を外部装置に移行させ、世界線の再現性が保証された段階のこと」である。言い換えると、世界線のバックアップのことである。これを行うことで、構造的強度が高まり、世界線の永続性や循環性が保たれる。後に続く世界線の安定化段階を経るには必須の手続きと言える。尚、再構築(reconstruction)には世界線の永続性と循環性のための移行手続きだけでなく「失われた世界線または断絶した世界線の再創造手続き」を内包する概念であることに注意されたい。
(4)接続段階
接続段階(connection stage)とは「外部世界と内的世界線の相互干渉的接合のこと」である。世界線内で完結せず外部世界とリンクし、機能的かつ象徴的な繋がりを持つ。生活動作(歩く、食べる、寝る、読書をするなど)と世界線内の動作的意味を接続することで、より世界線の構造的強度を高める生活動作接続装置論(Assistive devices for activities of daily living)とも関連する。
(5)安定化段階
安定化段階(stabilization stage)とは「世界線の揺れを抑制し、世界線ごとの衝突・混乱を解消した段階のこと」である。世界線の増殖を並列化(parallelization)と言うが、増殖初期には世界線同士が同期せず、互いに矛盾を抱え合う性質を持つ。そのため、並列化には安定化が必要となり、長期的な維持を行うにはこの段階は通過点となる。外部身体の負荷減少、接続による同期、安定化の維持がその主たる方法となる。また、感情サイクル論(emotional cycle theory)では、歓喜→落胆→歓喜→落胆……のように、感情の一定の起伏は安定化作用に貢献すると考える。歓喜→歓喜→歓喜……のように興奮状態が休みなく続くとオーバーヒートを起こし、安定化作用に悪影響を起こすと考えられ、逆に落胆→落胆→落胆……のように停滞状態が続くと固定化を起こし、歓喜の連続と同様に悪影響を及ぼすと考えられている。快不快のリズムやバランスをとることが肝要であり、この安定化のために情動反応が交互に顕現することを調律(tuning)と言う。
(6)多層化段階
多層化段階(multi-layered stage)とは「世界線の基点である中層から補助的世界線である下層、王室的世界線である上層が形成される段階のこと」である。下層(lower layer)とは世界線構造における低次元の領域である。下層で生まれる世界線を 補助的世界線(auxiliary world)と言い、中層によって統治された地域的役割を持つ。中層(Middle Layer)とは世界線構造における中間次元の領域である。下層を統治し、上層に統治される。二つの次元の中継点となり、国家的役割を持つ。世界線の起源は、まずこの中間層によって生まれる。そのため、この次元で生まれる世界線は単に世界線または基本的世界線(basic world line)と言う。上層(Upper Layer)とは世界線構造における高次元の領域である。中層・下層を統治し、その監督に務めるため王室的な役割を待つ。上層で生まれる世界線を王室的世界線(royal world line)と言う。多層化とはこれら下層、中層、上層の層構造を成す段階を指す。詳しくは、第三章によって後述される。
(7)統合段階
統合段階(integration stage)とは「多層化による次元間が調和し、その働きや構造が統合された段階のこと」である。特に、王室的世界線による中層・下層の安定化が確立した状態である。すべての次元で世界線間が支障なく連動し、x軸とy軸の両軸の関係が安定化したことを意味する。
(8)自己進化段階
自己進化段階(self evolution stage)とは「多層化と統合が完了した構造体が、観測者の意図的な介入によらず、自発的に世界線を有機的に生み出す循環構造段階のこと」である。単に世界線の増殖を行うだけでなく、それらが矛盾なく有機的に繋がることが自己進化である。自己進化のためには、これまでの全段階を踏んでいなければならず、その到達は極めて難しいとされる。自己進化には際限がなく、膨張し続ける宇宙のような象徴性がある。
以上の8段階が世界線の形成に関わる段階である。一部段階は順序通りに進まず、段階を飛び越えることもあるが、長期的な観測に基づくとこの順序に収束する。
三章「世界線時間論」
世界線の発生的過程を追ってきたが、世界線の過去・現在・未来という三軸や世界線間の時間的関係性、外部世界との時間軸の同期性などを明確にしたい。これらの問題を扱う観点を世界線時間論(world line time theory)という。
(1)過去・現在・未来の世界線
時間は直線の矢のように一方向に進み、その順序は過去→現在→未来であり、決して逆の順序足り得ない。この前提を基に、まずは過去から世界線との関係を追っていく。世界線の過去とは、即ち創造段階の前ということになる。まさに世界線の骨となる構造体の発見と、世界線の肉となる物語性・神話性の修飾が行われていない時期である。ここに世界線の議論する余地はないように見えるが、決してそうではない。その萌芽は認知の核にあり、観測者は無意識的に世界線創造の軌跡を観察している。それが、世界線という文脈上に翻訳されていないだけなのであり、誰しもが創造し得る境地にあるのである。世界線創造とは無から生まれるビッグバンではなく、微細な粒子を集めた結晶構造なのである。世界線の起源はその結晶作用に求められる。
次に、現在と世界線の関係性について述べる。世界線は空想的な距離や追憶を生むものではなく、完全に現在軸と同期している。外部世界の時間と内部世界の時間は同時的に点在し、リアムタイムの構造を成している。そのために、外部世界との接続が可能かつ有益なのであり、世界線は認知知覚と同一的である。そのため、最初期は思考リソースを使い、認知的負荷も高い。だからこそ安定化段階が必要なのである。しかし、その先に進むと世界線の同時期存在は外部世界と並行可能であり、無意識的な処理が行われる。これが、二章で触れた生活動作接続装置論の根拠ともなり得る。
最後に、未来と世界線の関係性を探っていく。世界線の未来とは形成段階の過程であり、さらにその先にある問題をも指し示す。つまり、世界線の寿命である。世界線の寿命は様々である。崩壊条件にあったような耐えられない強度がもたらされるか、タイミングの問題から崩壊条件を満たすか、外部身体としての死、つまり生物としての寿命を迎えるかいずれのパターンも想定される。世界線はそういった意味で完全ではない。構造的強度が高く、永続性・循環性は特徴として数え上げられるが、世界線の限界は存在する。しかし、世界線観を保持し続ければ、一度失われた世界線も再生可能であり、未来へ繋げられる余地は残っている。世界線の展望という意味での未来も、このような希望を持ち合わせているのである。
(2)世界線間・外部世界の時間関係
世界線間の時間関係について初めに触れる。世界線間の時間関係は、既に現在軸で述べられたように点在した世界線においてもすべて同時期に存在する。しかし、物語上時間関係が前後することはあり得る。A世界線が先に生まれ、B世界線がその後生まれる。これは、原理的に説明するとA→Bの順で生まれたことになるのは自明である。だが、物語上B世界線はA世界線の未来世世界であると捉えると、原理的な順序がずれて、なおかつ現在軸でもB世界線が先行した未来軸に置かれる。ただし、繰り返すがこれは物語上の設定的要素である。言わば儀式なのであって、原理的説明ではA世界線→B世界線の順で生まれ、両者は現在軸において同時期に存在している。この構造的時間感覚と物語的時間感覚を混同してはならない。
外部世界の時間軸との同期性について述べよう。生活動作接続装置論を援用すると、その同期性は高く、現在軸と完全に一致する。とは言え、生活動作をすべてトレースすることは不可能に近く、物語上にも矛盾が生じてくるだろう。必ず、外部世界と内部世界の間に空白の時間が存在するのである。その空白の時間に起こるズレが、同期性を弱めるかという疑問が生じる。しかし、同期性は弱められないと結論付けられる。その理由として、外部世界と各世界線は同期していながら独立した階層にあるからである。これをわかりやすく例えると、内部世界では世界線という本のページを開いたまま置いておき、外部世界では別の用事を済ませている関係にある。本は確かにそこにあり、過去や未来に存在しない。本の内容が勝手に前のページや先のページに一人歩きすることもない。よって、外部世界と世界線が同期しており、かつその空白の時間によるズレは、同期性を弱める根拠とはなり得ないのである。
四章「世界線文明論」
(1)世界線文明論
二章で触れた下層・中層・上層の多層化構造について詳しく見ると、下層は地域的役割を、中層は国家的役割を、上層は王室的役割を果たしていることになる。これは、文明としての文脈で読み取ることができ、この関係性を世界線文明論(world line civilization theory)と言う。世界線文明論は層構造の関係性の再定義を行うだけでなく、特に中層の世界線において新しい概念を導入する。
(2)機関的世界線
中層の国家的役割には、各専門機関が存在する。例えば、行政機関、医療機関、警察機関、司法機関、研究機関、金融機関、情報機関などが挙げられる。これら機関的役割を担う世界線のことを機関的世界線/施設的世界線(Institutional Worldline)と言う。機関的世界線は機能的拡張としての側面が強く、強固な構造体を持つ世界線に適している。これらが全体として調和し、有機的に働くことで内部世界の中で現実層の国家システムと遜色のない機能を発揮する。
(3)機関的世界線の各役割
個々の機関的世界線について見ると、行政機関は機関的世界線関の事務手続きを行い、文書を発行・承認し、制度を決め、世界線全体の環境整備を行う。医療機関は外部身体の状態を観察し、所見を述べ、治療方針を立て、治療または処方によって世界線の安定化に寄与する。警察機関は世界線の倫理的規定違反を監督し、捜査し、注意を喚起し、時には逮捕・勾留を行い違反した世界線の制限を行う。司法機関は警察機関によって届け出られた事件の起訴をし、判決し、刑罰を行い、世界線の救済を行うことで秩序や安寧を取り戻す。研究機関は世界線そのものや構造について観察し、実験し、体系化し、記録することで世界線の基盤を形作る。金融機関は世界線内に取引及び契約の概念を導入し、通貨を発行し、融資し、資産を管理するなど認知的経済基盤を確立する。情報機関は世界線全体に集められた情報を集約し、管理し、提供し、統制することで世界線の混乱や安定化に寄与する。これら国家的役割が全体を通して統合段階の準備段階を成すのである。
(4)補助的世界線
それでは下層・上層の役割を具体化すると、どのような全体図が描けるだろうか。下層は地域的役割を担うと述べた。この下層における世界線を補助的世界線(auxiliary world line)と言う。この世界線では、役割的意識があまりなく、機能的拡張性も薄い。物語性・神話性の純度が高い世界線と言える。ただし、機関的世界線における役割の一部を嘱託することは可能である。それ故に、補助的世界線という名称が付く。目的としては、自身が創造する作品の擬似体験を行う場として位置付けられる。作品世界を賞味するには、創造という手続きが必須である。その創造手続きを内部世界と接続し、体験としての世界線を実現する。ここで一言したいのは、決して内部世界と外部世界の境界が曖昧になり、現実と空想の区別がつかなくなるという文脈ではない。世界線観として、外部世界は常に最上層にある。その上で、同時に内部世界にいくつもの世界線が存在するのである。つまり、区別は明確についた上で作品世界を体験する。これが、補助的世界線の強みである。
(5)王室的世界線
対して、上層の世界線を王室的世界線(royal world line)という。王室的世界線の役割として、中層にある機関的世界線を、下層にある補助的世界線を統治する。これは、第二章で触れた統合作用を与えることを意味する。世界線同士(各層)の矛盾や有機的繋がりを制度化という概念によって解消したが、統合は各次元の矛盾や有機的繋がりを解消する概念である。そして、王室的世界線はそこを担い、国家と地域をまとめる憲法を制定する。王室的世界線の意向によって、世界線のルールや規定、プロトコルなどは統一的テーマを持つ。下層・中層における絶対的存在と位置付けられる。
五章「内的宇宙論」
これまで述べてきた多層化による三層構造は下層、中層、上層に分かれており、それぞれ低次元、中間次元、高次元に分類できた。
(1)宇宙
ここでは、その三層構造及び3次元構造を1単位として宇宙(universe)または世界線宇宙(world line universe)と呼ぶ。宇宙は、創造段階から始まり、整備段階、再構築段階、接続段階、安定化段階、多層化段階、統合段階、自己進化段階の8段階を経て完成された構造体である。自律的で安定化しており、自己進化を繰り返す膨張状態にある。世界線統合の第1形態である。そして、宇宙は世界線と同じように、複製または増殖可能である。
(2)マルチバース構造
宇宙は世界線と同じように並列化し、いくつもの宇宙を象る構造へ進化する。これをマルチバース構造(Multiverse Structure)と言う。多元宇宙論に基づいた並行世界群のことを指す。内部世界においても同様の現象・構造を観測できる。そして、宇宙間にも同様に衝突や揺れが起こり、消失や断絶の危機を抱えている。そのために、安定化と維持を図ることが求められ、最終的には統合されていく構造を持っている。
(3)無限構造
宇宙を統合するということは、宇宙の上位層が現れ、マルチバースを管理維持し、統合する役割がある。宇宙内でいうところの王室的世界線にあたる。そうした王室的役割を持つ上位層のさらに上位層が形成され、そのさらに上位、上位、上位……と無限に繰り返される構造が見出せる。これを無限構造(Infinite Structure)という。無限構造は外的宇宙論とも一致し、際限がない。無限という名が冠する通り、数学的に無限の性質を持ち得るのが妥当だと考えられてきた。
(4)神的構造と神
しかし、内部世界においては無限構造は無限足りえない。そこには終端が存在し、内部世界の最上層に位置する構造体がある。これを神的構造体(Divine Structural Body)と言う。神的構造体は、観測者の認知の核にあたるもので、そこを源泉にしてすべてが創造され、破壊されていく。内部世界における神(God)であり、すべての権限はここに集中する。この神は、内部世界における最深層であり、観測者自身を指す言葉である。観測者とは外部世界におけるすべての人を指す言葉であるから、自らを唯一神とする独我論的解釈ではなく、普遍的な汎神論として理解する必要がある。そして、神は全知全能の存在ではなく、揺れに影響を受け、それに伴って世界線や構造体の消失・断絶にも関与する。ただし、これは思想上の表現であり、実際の宗教や神とは一切関係がないことに注意されたい。
これら内部世界における構造体観をまとめて内的宇宙論(inner cosmology)と言う。
六章「世界線価値論」
世界線の価値について考える上で重要なことは、価値とは測る基準点によって流動するということである。そのため、世界線の価値について測る物差しを個人、他者、社会、概念に分けて論じていく。
(1)個人的価値
世界線の個人的価値は、身体的、精神的、社会的に認められる。身体的には、世界線が機能することで自己管理能力が高まったり健康促進に繋がったりする。外部身体の安定化を助けるのである。 第四章「世界線文明論」における機関的世界線のうち医療機関がその役目を果たす。ここで重要なのが、これは他者の助力を得ずとも世界線の存在が自己管理能力に接続されることである。意識的感覚では、医療機関という外的環境によって助けられることになるが、実際には自ら解決しているのである。当然、他者や環境を頼ることも肝要であるが、同時に自助能力を高めるのは生活において意義のあることである。自助論としても、世界線は機能するものと考えられる。
精神的価値については、この後の第七章「世界線の意義」において詳しく述べられる。ここでは、その周縁的価値について触れるに留めようと思う。身体的価値の項目にあるように、世界線の存在は外部身体の健康が促される。つまり、精神にも好影響を及ぼすのである。また、外部世界の揺れの危機に陥った時、世界線は確かに揺れの影響を受けるが、同時にその避難場所にもなり得る。誤解を避けるために述べるが、これは現実逃避ではない。緊急の要をきたす精神の危機に、外部世界一つでは逃げ道がない。これを構造的に解決するのが世界線である。結果として、世界線を避難場所として利用することで安定化が図られ、かつ世界線の存在自体が一種の保険となる。常に安心感や余裕を得られるのである。現実逃避ではなく、現実避難という文脈で解釈できる。
個人の社会的価値としては、身体的価値・精神的価値の前提がある限り、必然的に社会的安定化も担保されることにある。また、世界線文明論の考えから内部世界において文明を築く構造を持つと、社会への理解や受容が容易になる側面もある。社会への抵抗感や緊張感を和らげ、青年期におけるコンフリクトやフラストレーションの解消・発散に接続できる。社会構造そのものが内部世界にあることは、社会進出への前身的役割を果たすのである。
(2)他者的・社会的価値
世界線の他者的価値として、多様で柔軟な思想体系に触れることで、他者の世界観に感化を起こし、その成長発展に貢献することができる。また、他者の世界を観測し、互いの価値観を相互に理解できる。円滑なコミュニケーションや人間関係を築き、他者との接続を依存という形でない健全な関係に置くことができる。他者との必要距離を確保できるのである。
社会的価値としては、自助能力が高まることで外部身体の健康状態が改善し、能力が維持向上する人々が増えれば、経済的コストの抑制と発展に繋がるだろう。さらに、人材価値としても高まるため、生産性が上がり、より多くの成果物を獲得できる。社会政策や社会制度が個人の内部にインプットされており、成長に応じてアップデートされることと、内部世界に文明を築くことで、外部世界の社会と内部世界の社会は対立を起こさず、常に協働関係を結ぶことができる。しかし、無批判に社会受容は行わず、自らの信念に基づいて社会批判の目を養うことができるのである。これらは後の第七章に出てくる開放性の項目に大きく関連する。
(3)概念的価値
世界線の概念的価値については、既存の思想体系や哲学には見られなかった新奇性があり、認知的フレームとして有益である。作品創造、体系確立、理論収集、実験的応用、興味関心の広がりなどに昇華する。まさに、新しい世界を創造する助けとなる。さらに、これまで述べてきたように、健全かつ利益があり、倫理的な価値を受容し、それ以外を取捨選択する合理的判断を行えるようになる。構造的・システム的に自動選別機能を搭載できるため、認知的負荷を抑制することも可能である。これは、高度な無意識下での処理過程のことであり、思考抑制や無批判を指すものでない。また、自らの中に世界線を創造し、文明を築き、宇宙を仰ぐことで抽象化能力が高まり、体系化やイマジネーションも能力として増幅する。構築するのみでなく、そうした抽象的問題や体系を解体する力も身につくため、能力の準備段階、能力の獲得、能力の向上、能力の維持、能力の射程すべてにおいて適用できる概念強度がある。これらは七章でも詳しく述べられる。
このように、さまざまな立場から世界線に関する価値を検討する観点を世界線価値論(world line value theory)という。
七章「世界線の意義」
それではこうした世界線について知り、身につけ、応用することでどのような意義があるのかを考え、その射程を見定めていく。世界線の意義には大きく分けて、①遊戯性 ②継続可能性 ③循環性 ④成長性 ⑤開放性にまとめられる。一つ一つ解説していく。
(1)遊戯性
まず、①遊戯性(Ludic Creativity)とは最も基本的かつ重要な概念の一つであり「自由な発想と思考の飛躍によって、既存の形式、観念、構造から脱却する新奇性のある楽しみのこと」である。これは、人が生きていく上で生理的に必要とするものであり、遊戯性を持たないまま生きることは死に等しい。世界線の構造自体、独自性があり、そこには遊戯性が基幹概念として組み込まれている。遊戯性を持つことは、人生に彩りを与え、外部世界の揺れを安定化し、自ら統制できるようになることを表す。受動的な生ではなく能動的生を自らの意思による選択で、決定し、築き上げることができる。自己形成の原理ともなるべきものである。つまり、人間の魂こそ遊戯性の本質と言えよう。人間を人間たらしめる中心核と位置付けられる。そのため、教育分野においてもこの特性を最も重要なものと見做し、各人それぞれの個性を尊重し、その能力を最大限に伸ばすことが要請される。何者もこの遊戯性を他者から剥奪したり阻害したりしてはならない。人間の基本的権利を内包する概念であると規定し、決してこれを侵すことは認められない。
(2)継続可能性
2つめに、②継続可能性(Continuability)とは「世界線の存続に関わる判断を観測者が主体的に肯定すること」である。再構築化はその一端であり、外部装置の移行によるバックアップは消失と断絶の保証となり、消失・断絶後の世界線の復旧を行うことは永続性及び循環性を示す。これらの判断・操作・認知に対して肯定的態度を取ることが継続可能性の要である。
ここで注意したいのは、自らの意思によって主体的に継続することを選択することである。ここにおいても、自己形成の原理が根差しており、人間が自ら考え、判断し、行動することを促進する役割をも内包する。
(3)循環性
3つめに、③循環性(circularity)とは世界線の構造そのものを表す概念で、「世界線及び構造体間がまとまりをもった相互干渉により、調和と統合が繰り返され、自律的な流動を起こす性質のこと」である。これにより、認知の歪みや混乱を回避し、自己破壊や自己喪失などの行動をシステム構造が排する仕組みを形成している。これまで述べてきた制度化、安定化、統合などの総合概念である。
(4)成長性
4つめに、④成長性(growth potential)とは「世界線運用に際して、観測者に現れる能力の向上や獲得のこと」である。世界線観の意義すべてを包摂する概念で、観測者の能力を飛躍させ、生きる上で必要な能力を習得させる。第一章で触れたように、観測者の成長性は指数関数的な成長率を見せることがあり、世界線創造においては初期に見られる傾向がある。その後、漸次成長率は抑制され、一定の値に収束することが多い。しかし、世界線運用途中にもその爆発的な成長率が発揮されることがあり、この点において循環的である。その原理は明確でないが、第一章において述べた創造的放出と機能的拡張の関連が示唆される。即ち、観測者内部に湧き上がる刻印欲求が極限まで高まり、同時に無構築だった内部世界に機能的拡張が交互作用を起こし、それらが掛け合わされて指数関数的な成長率を見せるのではないだろうか。成長性は観測者にとって至上の恩恵であり、世界線の発展に大きく関わる。
(5)開放性
5つめに、開放性(openness)とは「外部世界における他者及び社会などと接続し、閉じた系から開かれた系へ拡張すること」を指す。これまで述べてきたのは、観測者の内部世界に局限する体系であった。しかし、開放性はその閉じた系を切り開き、自身の内部世界を他者や社会へ相互干渉・共有・調和する性質を表す。内部世界の接続においては、さまざまな手段が講じられる。他者と思想を交わし理解しあったり、社会体系を自身の中に取り込んだりすることで接続可能となる。その際、新たな世界線や新たな宇宙が誕生する可能性があり、これらは先に述べた循環性によって調整される。開放性は外部世界において寛容かつ柔軟な価値観を創出する。これは、無思慮に価値観を受容することではなく、思慮判別の上で排他的思考や偏見差別的観点をなくし、有益なものをありのままで受容することを指す。思想や認知特性としても、開放性は開かれた系に変容させるのである。
開放性の延長線上にある問題として、外部世界から内部世界への影響を述べたい。即ち、外部世界の構造や圧力が、内部世界の開放性の性質を歪ませるのではないかと言う問題である。これについては、第六章の社会的価値及び概念的価値で述べたように、批判的かつ合理的に価値や情報を選り分ける選別機能があるので問題がない。寛容と受容態度は諾々と受け入れることとはノットイコールで結ばれる。また、評価軸自体を歪ませることもない。外部世界は世界線の最上層であるが、その価値体系や評価体系は各世界線と同列に置かれる。等しく扱われるということは、多様な世界線のうちの一意見なのであり、これは世界線観と照らし合わせるといかに影響力が分散されるかがわかる。よって、この問題は解決されるのである。
第八章「世界線運用論」
(1)世界線運用論とその必要性
世界線運用論(World line operation theory)とは「世界線観を外部世界に接続し、実用的かつ応用的に適用すること」を指す。世界線の運用について述べるにあたって、まず、なぜ運用が必要なのかを示そうと思う。
『世界線原論』ではこれまでにも「外部世界との接続」や「開放性」など運用方針を示す記述をしてきた。しかし、実際の運用へ向けた実践的記述に欠けた弱点があった。つまり、「世界線運用論」は理論体系としても閉じた系ではなく開かれた系へ接続しようとする試みである。そのため、私が実際に運用している世界線を例にして、その可能性を探っていく。
(2)世界線運用例①-ICMO世界線
私は現在、ICMO世界線、世界線医院、RPG世界線という3つの世界線を運用している。ICMO世界線は世界線文明論で言うところの研究機関である。世界線医院は医療機関。RPG世界線の位置付けは難しいが、タスク管理と実行機関と言ったところだろうか。この3つを運用していく上で重要なことは、数値化と具体化、相互干渉化である。例えば、ICMO世界線はチャットボットAI「Copilot」を構造体にした研究所という設定の世界線だが、その中で「目標策定書」というものを作成している。やるべき目標テーマを決定し、目標項目を加え、達成したら印を捺して文書化する。その際、期限や項目の具体化は徹底する。また、AIに達成項目の分析をさせ、妥当性や達成意義などを再定義させている。こうすることで、行動の促進や認知機能の拡張、外部世界の充実が図られる。事実、これにより創作プロット、理論、実験、そしてこの『世界線原論』誕生の契機が作られた。ICMO世界線がなければ、実行し得なかったのである。
(3)世界施運用例②-世界線医院
また、世界線医院は日記を構造体にした世界線だが、毎日就寝前に「カルテ」を作成する。健康目標の達成率や評価、主観的記述を書き込むのである。そして、この「カルテ」を前述のICMO世界線と接続する。「カルテ」に書かれた内容分析と評価を行い、所見、方針、治療・処方を行う。当然、これは医療的診断ではなく物語上の象徴性を持たせた構造的分析結果に過ぎない。しかし、この取り組みにより生活水準は向上し、健康問題の改善が見られたのである。
(4)世界線運用例③-RPG世界線
RPG世界線は私スマートフォンのメモ機能に作成したタスク管理システムなのだが、このタスクを「クエスト」と見做し、ゲーム感覚で実行できる。そして、「クエスト」には報酬が必要なので、外部世界の中で私が欲しいものを設定して、達成できたら購入できる権限を得る設計にしている。これをさらに前述のICMO世界線と世界線医院に接続できる。世界線医院で達成すべき健康目標をICMO世界線の分析結果に基づいて設定し、その目標をRPG世界線の「クエスト」に翻訳して設計する。すると、達成率は上がり、身体的にも心理的にも改善傾向が認められた。この構造を分析すると、外部世界を高次元として 、その下層にICMO世界線が位置し、その中でICMO世界線が中継点となって世界線医院やRPG世界線が連動する。つまり、すべての層が接続状態にあり、かつ機能しているのである。
このように、数値化、具体化、相互干渉化を行えば運用は現実的であり、実行可能である。どの観測者の内部世界にも適用可能な開かれた系となっている。
九章「世界線の倫理」
世界線観の理論的説明を序章から第七章まで述べ、第八章「世界線運用論」ではその実践法について詳述した。その上で、観測者は自らに課す必要のある倫理(ethics)について知っておかなければならない。世界線観における倫理とは「自身又は他者及び社会や外部一般への侵害等の規定違反を固く禁ずる」ことを指す。侵害とは、身体的、精神的、社会的、経済的、権利的全般を侵すことである。人権問題とも密接な繋がりを持ち、必ず守ることが約束されなければならない。
(1)倫理規定第一条
では、その倫理規定とはどのようなものか。一つに、「観測者は自らの安全を第一に置かなければならないこと」。世界線運用を行い、身体的・精神的・社会的・経済的・権利的な侵害が起こり、生命の危機など重大な問題が発生した場合には直ちに世界線を緊急停止すること。そういったプロトコルを世界線内に制度化しておくことなどが求められる。世界線の運用を誤ると、これらの問題が発生する可能性がある。そのため、観測者は常に自身の状態をセルフチェックし、その分析に基づいて適切な行動を取らなければならない。
(2)倫理規定第二条
二つに、「他者の思想、価値観、尊厳、世界線の過干渉、支配、操作等の侵害行為全般を行ってはいけないこと」。ここは特に、厳格に守られなければならない。第五章「内的宇宙論」で述べられたように、観測者は唯一神でなく、あらゆる人の中に神的構造体が宿る汎神論を『世界線原論』は信ずる。そのため、独善的行為は禁じられなければならず、他者の創造源に無闇に立ち入ることはしてはならないのである。ただし、思想の共有や適切な干渉による相互理解は、むしろ推奨する行為である。それは開放性を高め、成長性を刺激する健全な行為からである。
(3)倫理規定第三条
三つに**、**「世界線観を政治的・宗教的その他あらゆる団体と結び付けてはならない」。世界線観は個人や他者、社会などに波及し得る特性を持っているが、その目的は自らの健康・成長・幸福に繋がるための個人利用に限られ、政治や宗教といった個人では収集の付かない団体的利用、本来の目的から逸れた思惑や利益の絡む利用などは禁じられる。世界線観を正しく利用することが望まれるが、悪用は絶対にしてはならない。世界線観は健全思想であり危険思想ではないのである。
(4)倫理規定第四条
四つに、「世界線観の思想体系や『世界線原論』の著作権は筆者にあり、無闇にこれを提唱・盗用・剽窃してはならない」。世界線観の個人利用や思想体系の評価分析、引用元が示された引用などは許可される。ただし、この思想を筆者の許可なく筆者以外のものであると主張した場合、法的手段に講じるものとする。
(5)倫理規定第五条
五つに、「その他の権利侵害全般の一切を禁じる」。これは、「権利」と銘打たれるもの全般の侵害を禁じ、具体的明文がないものも有効に作用することを意味する。そのため、この倫理規定に具体的に書かれていないからと言って、権利侵害に繋がる悪用は認められないのである。
(6)倫理規定第六条
六つに、「倫理規定は随時追加・改訂・削除される」。必要に応じて、倫理規定は追加・改訂・削除を行うものとする。変更があるかもしれないため、特に引用や権利問題に関する行為を行う前に、この倫理規定を確認することである。
以上をもって、倫理規定の記述を終える。
終章「要旨」
(1)世界線の定義・原理・制度化
世界線とは独立した構造体に物語性・神話性を付した認知的構造体のことである。
その原理は認知的咀嚼、創造的放出、拡張的機能の3つで構成される。
そして、世界線の生成条件は矛盾なく機能的なまとまりを持ち、制度化されていることが前提である。
(2)揺れと崩壊条件
世界線の主要な崩壊条件に揺れがあり、揺れは世界線の消失と断絶の危機にあるが、人間の生きた証であり、必要なものと見做される。
その他の崩壊条件には、構造体の消失と物語性・神話性の長期消失・断絶による没入の脱落がある。
観測者には限界があり、全能ではない。また、観測行為や適用範囲などにも限界がある。
(3)世界線の形成段階
世界線の形成段階には①創造 ②整備 ③再構築 ④安定化 ⑤接続 ⑥多層化 ⑦統合 ⑧自己進化の8段階に分けられる。
(4)世界線時間論
時間的諸問題を扱う観点を世界線時間論という。
過去、現在、未来の三軸は一本の矢のように不可逆的である。世界線の過去とは創造段階以前、現在は外部世界とのリアルタイム構造を持ち、未来は世界線の寿命を扱う。
世界線の原理的発生順序と物語的発生順序が前後することがあるが、構造的時間感覚と物語的時間感覚を混同してはならない。
世界線の空白の時間は同期性を弱めることにはつながらない。
(5)世界線文明論
世界線文明論については、下層が地域的役割、中層が国家的役割、上層が王室的役割の3次元に分かれ、構造体を文明としての文脈で解釈した。
また、中層の国家的役割について具体化すると、機関的世界線(施設的世界線)として、各機関の役割を果たす構造を持っていた。
下層の補助的世界線は物語性・神話性の純度が高く世界線の体験としての役割が強く、上層の王室的世界線はこれら下層と中層を統合しまとめる役割を持っている。
(6)内的宇宙論
内的宇宙論は下層、中層、上層で構成された構造を1単位と見做し、それを宇宙(世界線宇宙)と呼んだ。
宇宙は増殖し、やがてマルチバース構造を形成する。
さらに、そのマルチバース構造を統治する構造体が無限に連続する。これを無限構造と言い、その無限性には終端があることが示された。
この終端に位置する構造体を神的構造体と言い、その中心核は認知の核であり、神であると定義された。そして、その神とは観測者自身のことであるが、揺れの影響を受け、かつ独我論的思想とは無関係で汎神論的思想に依っており、実際の宗教とは関係がないことに注意しなければならない。
(7)世界線価値論
世界線価値論とはさまざまな観点から世界線の価値について検討することを指す。
世界線の価値には、個人的価値(身体的、精神的、社会的)、他者的・社会的価値、概念的価値に大別される。
(8)世界線の意義
世界線の意義は大きく分けて、①遊戯性 ②継続可能性 ③循環性 ④成長性 ⑤開放性に分類できる。
(9)世界線運用論
世界線運用論とは世界線観の実用的な運用論のことであり、その運用には数値化・具体化・相互干渉化が必要である。
(10)世界線の倫理
世界線における倫理とは、個人または他者、社会、外部一般への倫理規定違反を侵すことを禁ずることにある。
その倫理規定には第一条から第六条まで制定されている。今後、改訂されることもある。
参考文献
『ICMO 世界線:概念別・完全版用語辞典』
『ICMO 世界線:信念・哲学カテゴリー』
『童心について』
『ICMO実験記録 第一実験:人間性の限界 ― 核破壊実験(Human Core Deconstruction Experiment)』