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くらげになりたい
この一言で始まって終わるひとりの少女の話
いきなり不気味な少女が言い出す。
あのね、くらげって痛みも悲しみも感情もなにもなくて海にゆっくり溶けてしぬんだって。
私は一瞬固まった。なにか分からない感情 気持ちが押し寄せてきたんだ。
少女は口を開く。
私ね もうこの人生に疲れたの。いつもいつも同じ毎日
ヒビが入ったガラスのように今にでも壊れそうな心で…こんなにも悲しみも苦しみも感じる体はもうばいばいしたいの。
だから私は何も感じないただ青い海でゆらゆらと動いてる”くらげになりたいの”
その少女の言葉を聞いて私は羨ましかった。
私も感じてみたい。あなたの感情や痛みを…
少女は私をじっと静かに見つめて言った
あなたは今何を考えてるの?
私は分からなかった。感情がないから
そう。
“私はクラゲだ”
少女が夢見るクラゲ。
でも。あなたが思うような青く広い海なんかじゃない。こんな小さな檻に閉じ込められた観賞用のくらげ
私は喋れないのにずっと少女は問いかけてくる
あなたは何になりたいの?
どうしてここにいるの?
私は私を夢見るあなたになりたい。そんなことも考えられないまま時間は経ってゆく。
少女は腕を見せてきた。痛々しい左腕…でもよく見ると私が書いてある。
あのね。クラゲって美しいの。見た目も存在も
あなたを見ているだけで私の心は無になってくれるの。
私はクラゲになれるかな?
その問いには誰も答えられない。どこからか音楽が流れてくる。
少女はいつの間にか消えていた。
どれくらい経ったんだろう。待っていても帰ってこない
私にはずっと少女の くらげになりたい と強く願う声が聞こえる
私は心のどこかで少女を待っていたのかな
あぁほんとに醜いなぁ
この一言が水に溶けながら頭に刻まれる。
真っ暗な視界に光が入ってきた
その時。私の目の前には少女が立っていた
私みたいな広がった髪の毛。
少女は笑っている
私に向け手を伸ばしてくる。
少女の手は暖かく、包み込まれ私は消えてゆく。
ありがとう
ふわふわとしたスカートと下に広がる髪の毛が風でクラゲのようになびく。
リリィ…あなたのようになりたい。
そう言いながら少女も空へと消えていった。
さようなら醜い私
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