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第9話:コザクラチェック・特別回
ピンクゴールドのカーテンが開き、昭和レトロなテーマソングが流れ出す。
♪チェックするわよ、ぜ〜んぶ見てるわよ〜
今週の、コザクラチェ〜〜ック!
VRコミュニティ番組『コザクラチェック!特別回』。
今日のテーマは、“今一番気になる存在”。
カメラがズームすると、緑と赤のツートーンボブ、ピンクリップと白い昭和風フリルドレスに身を包んだコザクラが、キラキラのステージに立っていた。
「はいはーいっ!今日は……ちょっと真面目な話、しちゃおうかなって思ってます!」
コメント欄が一瞬ざわめく。
「え、珍しい」「ガチ語りくる?」
「コザクラ、どしたの」
【番組中:告白】
深呼吸を一つ。
彼女の笑顔がふっと落ち着く。
「system_0って知ってる? ――あの、VRゲームの無言のファントム。
今日ね、ちょっとだけ、話していい?」
【VR社会:反響と拡散】
コザクラの言葉は、ネット上ですぐに話題をさらった。
「この人は、誰かを傷つけないために、ずっと無言で戦ってるの。
“正しさ”とか“勝利”より、“壊さない方法”を選び続けてる――」
静かな声。けれど重い言葉。
「あたしの“お兄ちゃん”……だなんて、言えないけどさ」
「あたしにとっては、世界で一番、優しいファントムなんだよ」
コメント欄が一気に染まる。
「泣いた」「なんだこの特番」「今すぐLAST STRIDE入りたい」
「system_0=コザクラ兄説、これで確定?」
【現実:シスケープ開発部】
ユーヤは無言で作業を続けていた。
が、周囲の社員たちの端末には、COKOLOの番組ウィンドウがちらちらと開かれていた。
「これ……今配信してる“コザクラチェック”、見た?」
「system_0って……やっぱあの人?」
ユーヤは小さく息を吐き、視線を外す。
彼の右手は、マグカップではなく、NEO-Vヘッドセットに伸びていた。
【ログイン前】
デバイスを手に取る。
手元のディスプレイには、コザクラの言葉がハイライト表示されていた。
『この人は、誰かを傷つけないために――ずっと、戦ってる』
ユーヤはほんの一瞬だけ、眉をわずかに動かした。
何も言わずに、NEO-Vを装着する。
画面に浮かぶID――system_0。
【ログイン:闇に消える背中】
廃墟マップの空間に、影が現れる。
照準を合わせたプレイヤーたちが一瞬、手を止める。
system_0は――ただ、振り返らずに前へ進んでいた。
彼の後ろ姿に、誰かが言った。
「あの人、もしかして……ずっと誰かを“守ってる”んじゃないか?」