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初音ライダー剣
第15話
“宿敵”
リン「このっ!」
レンゲルはレンゲルラウザーを振るってエレファントアンデッドを攻撃する。エレファントアンデッドはこれをハンマーで受け止めるが、その隙を突いてギャレンが銃撃を撃つ。そうして、レンゲルとギャレンはエレファントアンデッドのパワーにやや押されつつも、2人で連携を取ってエレファントアンデッドを次第に追い詰めていく。そこで、レンゲルはベルト右のラウズバンクに手を伸ばす。
リン「くらえ!」
レンゲルはラウズバンクからカードを取り出そうとする。しかし、ギャレンがこれを制止する。
MEIKO「待って!カードは慎重に選ぶの!」
ギャレンはギャレンラウザーを持った右腕を伸ばしてレンゲルを制止する。
大地「…バーカ!」
エレファントアンデッドはこの隙を突いてハンマーを振るって地面を叩いて煙を出し、それに紛れてその場から逃げた。
リン「もう!MEIKO姉が止めるから逃がしちったじゃん!」
MEIKO「チーフからも言われたでしょう?先走って突出しないように、て。」
レンゲル=リンは制止を受けたことに反発し、ギャレン=MEIKOに八つ当たりする。
その頃、花畑の近くの海浜ではミクはルカと話をしていた。
ミク「ユキちゃん、連れ去られちゃったの?」
ルカ「…それがどうした。」
ミクはイーグルアンデッドがユキを連れ去ったことをルカに問う。だが、ルカは素っ気なくミクの質問を回避する。そして、ルカはミクに背を向けてバイクの方へと向かった。
ミク「あの子を助けに行くの?だったら私も…」
ルカ「お前には関係ない!」
ミクはユキを助けに行こうとするルカに同行しようとするが、ルカは振り向いてミクに敵意を向ける。
ルカ「この前の決着をつけようか。」
ミク「な!?」
ルカはミクの方を向き、♥Aのカードとカリスバックルを取り出し、カリスラウザーにラウズする。
ルカ「変身!」
「CHANGE」
ルカはカリスに変身し、戦闘態勢を取る。ミクは釈然としないが戦う覚悟を決め、ブレイバックルを取り出す。
ミク「…変身!」
「TURN UP」
ミクもブレイドに変身し、戦闘態勢に入る。ブレイドとカリスは互いに走って距離を詰め寄り、接近戦を仕掛ける。ブレイドはブレイラウザーを、カリスはカリスアローを振るって互いの斬撃を受け止める。そして、鍔迫り合いに入った2人はしばらく押し合ったところで互いの刃を弾き、再び斬り結ぶ。そうして、2人は刃を駆使して白兵戦を展開した。その中で、2人は互いに心の内を覗けてきたような気がした。
ミク「…やっぱり。」
ルカ「…何だ?」
ブレイドはカリスとの鍔迫り合いの中、カリス=ルカの心境が垣間見えた気がした。そこで、ブレイド=ミクはルカ=カリスに問いかける。
ミク「やっぱり、あなたはユキちゃんを思ってる。あなたの中で、ユキちゃんは大事な人。だから、助けたいと思ってる。」
ルカ「…だったら何だ!」
ミク「何でそんな意地を張るの?あなたも自分の考えていることは分かってるでしょ?ユキちゃんを助けたいって。だから、ここは…」
ルカ「お前には関係ないと言った!」
ブレイドはカリスに自分たちが戦っている場合ではなく、ユキを助けるべきだと言って共闘を呼びかけるが、カリスはそれを頑なに拒否し、ブレイドにカリスアローで一撃を浴びせる。ブレイドはこれをブレイラウザーで受け止めるが、カリスの激昂を込めた一撃は重く、ブレイドはよろけ、たじろいでしまう。だが、カリスはこれに乗じてブレイドに追い打ちをかけることはなかった。
ルカ「…確かに、今はお前と戦り合ってる場合じゃない。敵は別にいる。」
ミク「だったら…」
ルカ「お前にどうこう頼むつもりはない。私は私のやり方でやる。」
カリスはブレイドに背を向け、シャドーチェイサーに跨り、海浜を後にする。
ミク「…」
ブレイドはカリスが去って行くのに対し、自分も後を追おうとするが、先の戦闘のダメージが響き、足がよろけ、変身を解除した。
海浜から岬についたルカはバイクを降り、岬の小さな山で待っていた高原と対峙した。ユキは岬に立っている木に吊るされていた。その近くの岩には高原が膝を組んで座っている。
高原「…意外と遅かったですね。」
ルカ「寄り道してたからな。」
ルカはまずユキの無事を気に掛ける。ユキは未だに気絶して眠ったままだ。
ルカ「ユキちゃんに何をした?」
高原「そこは安心していいですよ。子供を甚振るのは趣味じゃないですから。ですが、助けるのは戦いが済むまで待ってもらいます。」
高原は岩から立ち上がり、イーグルアンデッドへと変身する。
高原「さあ、もう邪魔は入りません。心置きなく決着をつけましょう。ジョーカー!」
ルカ「黙れ!」
イーグルアンデッドはルカを挑発するように言い放つ。ルカは鬼のような形相でイーグルアンデッドを睨み、♥Aのカードを取り出してカリスラウザーにラウズする。
ルカ「変身!」
「CHANGE」
ルカはカリスへと変身し、イーグルアンデッドと距離を詰めてカリスアローを振りかざし、イーグルアンデッドを攻撃する。イーグルアンデッドはこの一撃を難なく回避すると、空中へ飛んで逃げる。
ルカ「…誘っておいて逃げる気か?」
高原「とんでもない。自分に有利なパターンを選んだだけですよ。」
イーグルアンデッドは上空から羽の手裏剣をカリス目掛けて放つ。カリスはこれらをカリスアローで防いだ後、ラウズバンクから♥4「FLOAT」のカードを取り出す。しかし、イーグルアンデッドはそこにまた手裏剣を投げる。
ルカ「ッ!?」
カリスは回避行動が遅れ、右手の甲に手裏剣を受けてしまう。同時に、手にしていた「FLOAT」のカードを手放してしまう。
高原「そのカードは使わせませんよ!」
イーグルアンデッドは自分に有利に戦闘を運ぶべく、カリスから「FLOAT」のカードを手放させる。
ルカ「く…!」
カリスは歯噛みする。
カフェのベンチでは、MEIKOがリンに対してラウズカードやライダーシステム、アンデッドについてレクチャーしていた。
リン「…こんなにあんの?」
MEIKO「そう。」
リン「…難しいよ。」
MEIKO「敵を知り己を知れば百戦危うからず、て兵法書にあるからね。今教えたことはきっちり頭に叩き込んでおいて。」
リン「う…うん。」
リンは自信無さ気に答える。言われたことは少し難しい知識もあり、容量も大きい。
リン「…ねえ、何でミク姉は1人立ちさせていいの?」
リンはミクが早くも1人立ちして戦える様子に不満を感じていた。
MEIKO「ああ、ミクなら大丈夫。あの子は強いから。」
リン「…ミク姉が?」
MEIKO「あんたはカテゴリーAの邪気に苛まれそうになってる。かくいう私も一度は怖気づいて戦いから降りた。けど、ミクにはそういうのがない。むしろ、強敵を相手にも果敢に立ち向かっていく強い心を持ってる。」
MEIKOはミクの強い心を信じている。実際、彼女はミクの強さによって、戦いが怖くなった自分が戦いに戻るきっかけを取り戻せた。故に、ミクの強い心を尊敬しつつある。ミクが自分より年下の後輩であるにも関わらず、だ。
岬の空き地では、カリスがイーグルアンデッドを相手に攻めあぐねていた。イーグルアンデッドは空中を飛び、空中から羽の手裏剣を投げてカリスを攪乱しつつ、ここぞというところで急降下して蹴りや鉤爪で攻撃するといった得意の戦法を展開していく。一方で、カリスは「FLOAT」のカードを手放してしまい、空中戦を展開できず、カリスアローで手裏剣を防ぎつつ、「TORNADE」のカードでカリスアローから竜巻の矢を放つ。しかし、イーグルアンデッドはこれを難なく回避し、その直後にカリスに攻撃をピンポイントで狙ってくる。カリスはこれを紙一重で回避していく。羽手裏剣は1発の威力こそ低いが、遮蔽物等の身を隠すもののない平野での戦いで羽手裏剣は撒き菱の如く散らばり、カリスは次第に素早く動けなくなり、逃げ場を失っていく。そうしていくうちに、カリスの辺り一面に羽手裏剣が散らばった。
高原「もう逃げられませんよ。」
イーグルアンデッドは勝利を確信したように微笑し、羽手裏剣をかざす。カリスはハッとした。今、ユキの足元には無数の羽手裏剣が散らばっている。
ルカ「何をする気だ?」
高原「気付きましたか?本当に腑抜けになったようですね。」
イーグルアンデッドはユキを吊るしているロープ目掛けて羽手裏剣を投げようとする。カリスはユキの方を向かおうとするが、イーグルアンデッドはそう見せかけてカリスの方へ羽手裏剣を投げる。カリスはこれを回避し、ユキの元へ向かう。イーグルアンデッドはそこを狙い、ユキ目掛けて羽手裏剣を投げる。
ルカ「くっ!」
カリスは再度歯噛みした。イーグルアンデッドは最初からカリス=ルカの首を狙っていたのだ。そして、カリスが隙を見せる瞬間を作るべく、ユキを連れ去って人質にした。その狙いに気付いたカリスは一歩踏み留まろうとする。だが、別の場所から音声がした。
「METAL」
ユキに目掛けて飛んできた羽手裏剣を受け止めたのは、なんとブレイドだった。ブレイドは体を大の字に広げてユキを庇い、その身に羽手裏剣を受ける。だが、「METAL」のカードで硬化されたブレイドのボディに大したダメージには至らなかった。
高原「なっ!?」
ルカ「お前…」
突然のブレイドの乱入にカリスとイーグルアンデッドは驚きを隠せなかった。
ミク「借りるよ!」
ルカ「何!?」
ブレイドはカリスに一言そう言うと、「FLOAT」のカードを拾い、ブレイラウザーにラウズする。
「FLOAT」
「FLOAT」の力で浮かび上がったブレイドはイーグルアンデッドに接近し、ブレイラウザーを振るってイーグルアンデッドの左翼に斬撃をくらわせる。
高原「ぐっ!?」
イーグルアンデッドは翼をやられて上手く飛べなくなり、そのまま地面に落ちてしまう。何とか着地には成功し、受け身を取ったものの、着地の時を待っていたカリスの猛攻を受ける。カリスはまずカリスアローを連続で振り下ろし、イーグルアンデッドに斬撃を浴びせていく。イーグルアンデッドは斬撃のラッシュを受けきれず、じわじわと追い詰められていく。そして、イーグルアンデッドが疲弊したところを見計らったブレイドとカリスは5と6のラウズカードを取り出し、それぞれのラウザーでラウズする。
「KICK」 「DRILL」
「THUNDER」 「TORNADE」
「LIGHTNING BLAST」 「SPINNING ATTACK」
ラウズカードからパワーを得たブレイドとカリスは高く跳び上がり、ブレイドは電撃を足に纏ってジャンプキックを、カリスは風のエネルギーを足に纏ってドリルキックを繰り出す。
高原「うああああああ!!」
イーグルアンデッドは2人のキックの直撃を受けて大きく蹴り飛ばされ、飛ばされた先でうずくまって膝をついた。
高原「…人間がアンデッドを助けに入るとは…」
イーグルアンデッドは必死に右腕で胸部を押さえながらも、ブレイドに問いかける。
ミク「あなたみたいなのには分からないよ。人間の情が。」
高原「…情、だと…?」
ミク「人が人を助けようとする気持ち、それが情。その情を持つのが人間なんだ!」
ブレイドは人間の情を説く。その言葉はシンプルながらも、どこか説得力があった。だが、イーグルアンデッドはそれを理解すると、今度はそれを試すようなことを言う。
高原「…クク…成程…だが、その情は運命に勝てますかね…?」
ミク「へ?」
高原「人間とジョーカー…今でこそ手を取り合っていても…いずれは必ず…戦うことになる…」
イーグルアンデッドは息絶え絶えで言い放つ。ライダーとアンデッドが戦うのは当然だ。だが、ブレイドはその言葉にどこか意味深なものを感じ、イーグルアンデッドに問う。
ミク「どういうこと?」
高原「…ジョーカーのことを知れば、分かりますよ…」
イーグルアンデッドはそう言うと、気絶して倒れ伏し、アンデッドクレストを開いた。ブレイドはイーグルアンデッドの言葉に意味深なものを感じたが、ここでイーグルアンデッドを野放しにするワケにもいかない。ブレイドはそう考え、ブランクのラウズカードを落としてイーグルアンデッドを封印した。
戦いの後、ユキはミクとルカによって救出された。ユキはルカに抱えられ、岬の近くの岩場に降ろされそうになる。
ユキ「ん…」
ルカ「ユキちゃん?」
ユキは岩場に降ろされる直前に目を覚ました。
ユキ「…ルカお姉ちゃん?」
ルカ「…怪我はないか?」
ユキ「うん、何とも。」
ルカ「っ!」
ルカはユキを強く抱きしめた。ユキはイーグルアンデッドに連れ去られた時の記憶がなく、今のこの事情を理解できていないが、ルカに抱きしめられるのは何となく温もりがあって心地よかった。
ミク「ふふっ…」
ミクはルカとユキのやり取りを見て、何か感慨深くなり、その場を後にした。その帰路で、ミクは考え事をしながら石の階段を降りていた。イーグルアンデッドの言葉がミクの脳裏に引っかかっていたからだ。
“人間とジョーカー、手を取り合っていても、いずれは必ず戦うことになる”
ミクは以前、アンデッドについて調べていたが、ジョーカーについてはどうしても頭に出て来なかった。アンデッドたちによるBOARD支部襲撃以来、ほとんどの資料が紛失してしまっており、調べることもできない。
ミク「何だったっけ、ジョーカーて…」
果たして、巡音ルカは本当にジョーカーなのか。そもそも、ジョーカーとは一体何なのか。ミクはそう思えてならなかった。