田舎道を車に揺られながら進んで行く、助手席に座り窓の外をぼんやり眺めていると、ピンク髪の有名人二人がスマホのライブ機能をオンにした。
明司兄妹「「明司チャンネルでーす!(チャキーン)」」
「キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」
「いよっ!炎上チャンネル!」
「今日ライブ何するん?」
千壽「今日は田舎でのんびりライブしたいと思いまーす!」
春千夜「んで、今回はゲスト呼んでまーすw」
そう言ってアタシの方にカメラを向けてきた。
「誰〜??」
「おんにゃのこ!きゃわぁ(´∀`*)」
「若ぇ笑誘拐か笑笑」
春千夜「誘拐じゃねーよ!そんじゃぁゲストさんは自己紹介よろしくー」
ニヤニヤしながらカメラを向ける男は春千夜。
一応ガキの頃から知り合いだけど、正直ウゼェ。
永子「はーいどうもーゲストの永子でーす誘拐されましたー」
「棒読草www」
「やっぱ誘拐じゃねーか!」
「通販しますた笑笑」
夏休みのせいだろうけど、このクソみたいな配信で昼間っから人数が多いみたいだな。
永子「つーかさぁ、アタシがここに連れてこられたのって、絶対心霊系っしょ?」
千壽「えっ?!そうなの?!」
春千夜「おい、さっきも言ったろちゃんと聞けよ」
「え?心霊???」
「ナンソレキイテナイ」
コメントがざわざわし始めると、春千夜は企画が書いてあるメモ帳を取り出した。
春千夜「えーと、今向かってんのは山奥にあるボロ小屋。近くに住んでる村人がマタギとかで利用してたのが…なんか変な死に方したり精神がおかしくなったりしたらしいぜ。」
「説明ドモ」
「後半テキトーw」
「それと永子ちゃんになんの関係が???」
千壽「あー、それはね!」
私と心霊の関係について、千壽ちゃんが身を乗り出す。
千壽「実は永子ちゃんって、有名な神社の巫女さんなんっだって!」
「えええええーーーーー!!」
「意外な事実!」
永子「詳しくは、その神社に勤めてる神主の娘ってだけ、まだ見習い」
武臣「だけどすごいよなぁ、永子の婆さん…彩野姚子さん、だっけ?霊媒師としても優秀らしいぜ」
明司チャンネルの自称マネージャー兼、運転手の武臣さんが会話に割り込んで、アタシのおばあちゃんの話を始めた。
アタシん家は、代々女性に祓う力があって、厄祓いの巫女だったり霊媒師だったり色んなことしてる神社らしい。
それに目をつけた明司チャンネルの三すくみが、今回の企画を考案したってわけだ。
武臣「…よし、こっからは歩きだからな」
鬱蒼とした森の入り口は、車なんか通れたもんじゃないくらい整備されず、コンクリートのひび割れから小さな竹?や雑草なんかが生えてた。
千壽「えー、こっからは歩きになるそうです!めっちゃ雰囲気あって如何にも!って感じですね!」
「おお!!雰囲気あるー!!」
「マジで行くん?心霊系はやべーぞ」
春千夜「うげぇ…早く終わらせてさっさと帰ろーぜ」
潔癖で有名の春千夜は、早速苦虫を噛み潰したような顔してさっさと進んで行く。
正直アタシはまだ修行中だからか知らんけど、今んとこそういう感じは全くない…というかわからん。
一応今まで生きてて気配とか視線とかはたまにわかるんだけど、テレビとかに映ってわっ!ってなる感じの経験は一度もなかった。
…そう、このとき、今の今…までは。
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