斉藤と言われたお巡りさんは、優しい調子で僕の住所と電話番号をよく聞くと、書類が散乱している机に設置してある電話を掛けた。
電話に出たのは多分、母さんだ。
今の時間はおじいちゃんと母さんしか家にいない。
おじいちゃんは二階で番茶を飲みながら、テレビを観たり、たくさんあるトロフィーを愛でているはずだ。
僕は悔しくて涙を流した。きっと裏の畑に行けば子供たちが埋まっているはずだ。今は心が捻じれそうなくらいの悔しさを押し殺して黙っていよう。
電話の後、内田は僕を家まで送った。パトカーではなくて、歩いていた。
終始無言だけれど、何かの圧力を感じて僕も俯き加減で押し黙っていた。
御三増駅から自宅までは歩いて20分はする。その間は僕は永遠とも思える時間の中で四方八方に向かいたがる気持ちを我慢していた。
最初に玄関に現れたのは母さんだった。
驚いている顔の母さんは、僕の顔を覗いては、どうしたのと何回も聞いてきた。
内田はカエルのような顔で、母さんに事情を説明して、今後このようなことがないようにと、念を押していた。
おじいちゃんは、玄関から僕のところへと駆けて来ては、頭を撫でて何も心配しなくていいからねと言っている。
僕は訳も分からずに顔をやかんのように熱くしていた。
「とにかく、裏の畑に行こうよ。お巡りさん」
僕は間違っていない。
内田の手と母さんの手を引っ張って、半ば強引におじいちゃんも連れて行った。
空には暗雲が覆い被さり、雨は概ね(おおむね)止んでいたが、時折パラパラと降り出すような空模様だった。薄暗い裏の畑への砂利の小道を僕はみんなを連れて行った。
畑は不気味に薄暗く。
内田の顔も少しだけ青白いものが浮き出ていた。
「こんなところで、バラバラ殺人事件っていうのも変な話だな」
おじいちゃんは意地悪そうに見える顔を引きつらせた。これからのことに少し緊張しているのかもしれない。
「まあ、子供の言うことですから」
内田は普通に胸ポケットからペンライトを取出し、僕の指差す杉林の覆う大根や人参の場所を照らしながら掘り返した。
現れたのは、人形の手足だった。泥のついた人形の手足だけが次から次へと現れ、内田は首を傾げていた。人形の手足には赤黒い何かがそれぞれ付着している。
「こんなところに、誰が人形なんて埋めたんでしょうね?私、怖いわ。何だか気持ち悪くなるわ」
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