コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
丸っこい母さんがおじいちゃんに寄り添って肩を摩った。
「うーん。歩が間違えたのも頷けるね……。誰かが……子供だといいけれど、悪戯をしたのかな? でも、確かに不気味なことだよね。俺の人生でもこんな奇妙なことは一度だって起きなかったんだよ」
緊張していたおじいちゃんも、たまらず畑から出てくる人形を両手で掘り出していた。
「うーん。確かに不気味ですね。けれども、子供の悪戯ならば、事件性はないでしょうな。でも、誰がこれだけの精工な人形の手足を畑に埋めたんだろう。これじゃあ、野菜は育ちにくいでしょうな」
内田は片手にペンライトを持って、片手で土を掘っていた。次から次へと出てくる人形の手足に辟易しているようだ。
「まあ、雨も本降りになると困るので、今日はこのへんで」
内田は額の汗を拭いながら、泥だらけになった片手を僕の家で洗いに行った。
僕は無数にある人形の手足の中に、一つだけ動いている足があるのに気が付いた。けれども、僕は何も言わなかった。言う気がしなかった。
「まあ。事件というわけでは……」
あれから、しばらくたって、父さんが帰ってきた。キッチンで大人に混じって僕は思考を巡らす。内田は首を捻りたい気持ちを極力我慢しているようだった。
カエルに似た顔は不可解な出来事に直面して、今では目玉が大きく開いて、まるで窒息しそうなカエルの顔がそのまま大きくなったように見えた。
「歩。いつ頃、見つけたんだい? 人形の手足なんかを裏の畑に埋める人がいるなんて? 一体、誰だか解らないけど、あそこはこの近辺に住んでいる人達の。大事な誰の土地でもない。自由な野菜作りができる場所なのに……。どうして、こんなことをするんだろう?僕は怒りたい気持ちでいっぱいだよ」
父さんは母さんが人数分淹れたお茶を啜りながら、小さい事件の犯人に憤慨していた。
「そうね。でも、子供の仕業なら、誰の家の子かしら? この近辺って子供が多いでしょ」
「確かに子供と年寄りだけだね。佐々木さんや藤堂さんに篠原さん。大久保さん、田中さん……きりがないね」
おじいちゃんは、猿のような顔の皺を増やして俯き加減だ。
「誰の悪戯か知らないけれど、犯人の子を見つけてください」
母さんは内田にお茶を注ぎながら自然に懇願していた。