mtk side
今日もあの人は帰ってこない。もういつもの事だ。
帰ってきた時に
女の香水の匂いがこびりついていたとしても、
暴力を振るわれても、
無理やり抱かれても、
ごめんねって、
大好きだよって、
僕が1番だよ、
ぜんぶ僕のためにやってる事なんだ
って言われると全部許しちゃう。
これは僕を嫉妬させるたんなんだ。僕のためにやってくれてるんだって思うと嬉しかったから。
でも、意外と限界だったみたい。今日も帰ってこないとわかったら、いつもの事なのに僕の中のナニカがプチンと音を立てて切れた。
…あれ、ここどこだ?
気がつくと僕は知らない場所にいた。ざあざあと僕を隠すように雨がふっている。
このままどこかに行けたらいいのに
そんな考えが頭に浮かぶと体が勝手に下でゴウゴウと流れている川に向かっていった。
柵に足をかけ、身を投げようとする。
これで、楽になれる…僕って何に縛られてたんだろ
ふとそんな疑問が浮かんだとき
「なにやってんだ!!」
という声が聞こえたかと思うと、グイッと後ろに引っ張られて体勢を崩してしまった。
しかし後ろに倒れたはずなのに痛みがない。目を開けてみると下には引っ張ってきた人が。
「っあ、ごめんなさい!」
「ちょっとあんた何して…え、元貴?」
「え…?えっと、どなたですか?」
「俺!若井滉斗!」
「…あぁ、若井か」
なんでこんなとこで中学の同級生と再開しなきゃいけないんだ。てか、よく何年も会ってないやつのことなんか覚えてんな
「…なんで、いや、なんかあった?」
「…いや、なんもないよ。もう行かなきゃ」
「まって! 帰せないよ」
「は?なんで。手、離せよ。関係ないだろ」
気持ちが悪い。なんでこいつに引き止められなきゃ行けないんだ。あぁ、早くあの人に消毒してもらいたい。
…結局あの人は僕の中にまだいるんだな笑
「…元貴、今自分がどんな顔してるかわかってる?」
「顔? 別に普通でしょ。もう帰して」
「ううん、酷い顔してるよ。とりあえず風邪ひいちゃうから家行こ」
「やだよ」
「え、なんで」
は?なんで? 普通にほとんど初めましてのやつの家に行きたいやつなんかいないだろ
「…とりあえず行くよ!」
「は、やだって!」
意外と力が強く呆気なく若井の家に着いてしまった。
「はい、まず体冷えちゃうからお風呂行ってこい!」
「いや、帰るからいい」
「あ! わかった、じゃあ一緒に入ろう!」
「なんでそうなるんだよ!やだって!」
無理やり服を脱がされ、裸を見られてしまった
僕の体には殴られた跡が無数にある
あぁ、最悪だ。なんか泣きそう。やだ。こいつの前で泣きたくない
「…早く入ろう!」
「…え?」
見ないことにすんのか。ありがたいような、なんか、言葉にできない。モヤモヤする
「ほんと久しぶりだね〜」
「何年ぶり?全然話したこと無かったよね」
「全然話したこと無かったけど、俺元貴のこと知ってたんだよ。なんでも出来ちゃってさぁ。羨ましかったなぁ」
ひとりでずっと喋ってる。けど、僕のアザや今まで何をしてきたかなどは聞いてこない。
気を使われてるような感じがしてだんだんと腹が立ってきた
「あ、そうそう、」
「なんでなんにも聞いてこないんだよ!」
僕は若井の言葉を遮って聞いてしまった。思ったよりも声が出て、お風呂場だったこともありすごく大きく聞こえた。
あれ、こんな風に声出したのいつぶりだろ
「…聞いていいのかなって、俺が無理やりやったのに」
「そういうところが昔からムカつくんだよ」
「え?」
「大して知りもしないくせに首突っ込んできて勝手に離れてくの」
「ごめん。そういうふうに思ってるなんて考えたこと無かった」
「そうだろうな」
ほら、こんなこと思ってる奴だよ。若井だってムカつくだろ。善意でやってることをこんなふうに言われて。
早く追い出してくれ。僕は早く楽になりたいんだ
「…じゃあ聞いてもいい?」
「は?」
「そのアザ、どうしたの?」
え、まさかほんとに聞かれるとは思ってなかったな
どうしようか。いっその事、ホントのこと言っちゃうか。この日が終わったらもう会うことなんてないんだから
「…一緒に住んでた人に暴力振るわれてたの。帰ってこない日も多くて、帰ってきても香水の匂いしてたことがほとんどだったから嫌になっちゃった」
あぁ、涙が出てきた。とまれ。お願いだからとまって。
「…大丈夫。ここにはそんなことする人はいないよ。大丈夫だから、いっぱい泣きな」
「う”、ひぐっ、好きだっのに、」
「うん、大丈夫」
若井は僕が泣いてるあいだずっとハグをして頭を撫でててくれた。
「落ち着いた?」
「うん、ありがと」
「せっかくお風呂入ったのに冷めちゃったね」
「ごめんね」
「元貴のせいじゃないよ。疲れたしょ、もう寝よっか」
「あ、じゃあ、今日はありがと」
「え?一緒に寝るんだよ?」
「んぇ?」
突然すぎて情けない声が出てしまった。
「帰すわけないでしょ? はい、布団入って」
「…はい」
「お、素直。」
「だって帰してくれないだろ」
「よくわかってんじゃん。おやすみ 」
「…おやすみ」
どこで切ればいいかさっぱりすぎて悩む
幸せを教えてくれた人に似てるかももも
コメント
2件
わああこれからの展開が楽しみです🥲💖