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私
の名前は、山吹真琴。
中学二年生になったばかりの十五歳。
この春から通い始めた中学校には友達もいるけど、クラス替えがあったせいでまだ打ち解けきれてない人もいる。だから毎日が新鮮で楽しい。
新しい教室では窓際の席だったこともあって、朝一番の授業のときなんかは特に気持ちが良い。窓から入ってくる風を受けながら教科書を読んでると眠くなって困っちゃうくらい。先生に当てられたときなんて、たまにウトウトしてて怒られちゃったりする。でも今日はまだ一度も当てられてないし、その心配もないみたい。だって今朝の占いで『今日の運勢一位! ラッキーアイテムはピンク』って言ってたもんね。えーっと、確か……。
「――ん?」
何かが聞こえてきた気がして顔を上げる。けれどそこにはいつもと同じ光景があるだけだった。廊下側の列にある自分の机に座って頬杖を突きながら外を見てる女の子たち。お昼休みになるとみんなで集まって楽しそうにおしゃべりをしている子たちもいれば、一人で黙々と本を読むだけの静かな子もいる。みんなそれぞれ自由に過ごしているようだけど、それでもやっぱりどこか仲良さそうな感じがあってちょっと羨ましいかも。
それにしてもいったいどこからどこまでが夢だったのか? 今となってはよくわからないけれど、少なくとも僕には昨晩の記憶がない。
僕は自分の部屋で眠っていたはずなのだけど、朝になって目を覚ましたら、知らない部屋のベッドの上にいたのだ。
そこはとても広い洋室で、壁際に並んだ本棚にはぎっしりと本が詰まっている。窓際には大きな机があって、その上に置かれたノートパソコンでは何かの作業が行われていた。
そのパソコンの前に座っている人物がこちらを振り向く。眼鏡をかけた青年――この家の主だろうか?
「おはようございます」
「……えっと、おはようございます?」
とりあえず挨拶を交わしてみた。
相手はまだ少し戸惑った様子だったが、やがて僕の顔をまじまじと見つめたあと、ふと思い出したように言った。
「ああ! そういえばまだ紹介してませんでしたね!」
それから椅子を回転させると、今度は背後にある窓から外の様子を窺うようにして言う。「それじゃあ君たちがどうやってこの船に乗ったのか教えてもらおうかな」
その問い掛けに、俺は思わず口をつぐんでしまう。
すると、そんな俺の様子を見た男は続けて言った。
「もしかして、何も言わないつもりかい?」
男の口調にはどこかこちらを試しているかのような響きがあった。
だから俺は観念して答えることにする。
「……ああ、そうだよ」
「そうか。残念だよ」
男が肩を落としている様子から察するに、どうやら俺が正直に答えなかった場合のことも考えていたらしい。
やはりただのお調子者のおっさんではないようだ。
「では改めて聞こう。君はどうしてここに来たのだい?」
さっきと同じ質問だが、今度はもう少し詳しく説明してくれないか? そうですね……まず最初に結論から言いましょう。
この世には魔法なんてものは存在しないのです。
しかし、貴方がたは今まさにその現実に直面しているわけですよね? つまり、我々は今現在、科学では解明できない不思議な現象を目の当たりにしているということになります。
これこそが我々が魔法と呼んでいるものの正体です。
魔法というものを簡単に説明するならば、我々の常識から外れた法則に支配された力のことです。
例えば先ほどお話ししました「転移門」についてですが、これは今から200年ほど前に発見されて以後、研究が進められてきたのですが、未だ原理的には解明されていません。ただこの技術が実用化された場合、今までにない画期的な発明になる事は間違い無いでしょう。
また現在確認されている転移魔法陣は5つありまして、それぞれ赤、青、緑、黄、紫の光を放っています。これらは全て違う国へと繋がっているようですが、残念なことにどの国のどこに通じているのかまでは分かっておりません。
しかし転移魔法陣についてはまだまだ謎が多く、その利用価値は極めて高いと言えますね。転移門の近くでは魔物の出現頻度が低いことも分かっているので、今後は冒険者の皆さんにとっても益のある物となると思いますよ。
さあ、次は何をご紹介いたしましょうか……?……ふむ。では最後にこちらをお見せして終わりにいたしましょう。
これはつい最近発見されたばかりの遺跡なのですが、中々興味深い場所となっております。
ここは『古代文明』時代のものと思われている遺跡なのですが、実際に調査したところ、非常に高度な文明が築かれていた事が分かったんです。それも恐らく現在の我々の知識では到底及ばないほどの科学力を秘めた施設だったんですよ。
我々研究者の間では、「これが本当に現代の技術で作られたものなのか?」とか「これを作った者は何者なのだ!?」などと騒がれておりました。中には「もしかすると神の御業ではないだろうか」なんて言い出す者もいましたが、流石にそれは飛躍しすぎではないかと……。
ともかく、今回見つかったのはこの施設の地図です。これでまだ発見されていない部屋の位置などが分かりますので、今後の調査が非常に捗る事でしょう。
えーっと、これくらいでよろしいでしょうか。
それでは今回はここまでにさせていただきます。次回もまたよろしくお願いします。