テラーノベル
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大学院生の涼架にとって、いよいよ「現場」に近い試練がやってきました。大学のオープンキャンパス当日、保護者が説明会に参加している間、その子どもたちを預かる臨時託児ルームのリーダーを任されたのです。
「お願い! 二人の若さとピュアな心(?)を貸して! 予行演習させて!」
リビングに広げられたのは、色とりどりの折り紙、絵本、そして手作りの紙芝居。涼架の必死な訴えに、二人の反応は対照的でした。
「……なんで俺が。心理学のレポート書かなきゃいけないんだけど」
滉斗はソファの端で、いかにも「めんどくさい」というオーラを全身から放ちながら、分厚い専門書に目を落としています。
「いいじゃない、ひろと。僕、子どもたちと遊ぶの、ちょっと楽しみかも。ね、りょうちゃん、僕は何をすればいい?」
元貴は目を輝かせて、涼架が持ってきたパペット(うさぎさん)を手に取りました。
「さすが元貴! 天使! 君は『優しいお兄さん』役ね。で、滉斗は……そうだな、『ちょっと強面だけど実は優しいクマさん』役!」
「……帰るぞ」
「ここ自分の家でしょ!」
涼架の必死の制止により、即席「涼架先生のシミュレーション」がスタートしました。
「よし、じゃあ二人とも、今は5歳児ね! 僕は今から絵本を読むから、自由にガヤを入れて!」
涼架が感情たっぷりに絵本を読み始めると、元貴はすっかりなりきって「わあ、次どうなるの?」「おおかみさん、怖くないよ!」と、涼架が一番やりやすいリアクションを返します。
一方の滉斗は、膝の上に置かれた本を眺めながら、
「……この主人公の行動原理が不明確だ。5歳児にしては自己犠牲の精神が強すぎる」
「ひろと! 5歳児はそんなこと言わないの!」
「次は折り紙だよ! はい、クマさん(滉斗)、うさぎさん(元貴)に折り方を教えてあげて!」
涼架の無茶振りに、滉斗はため息をつきながらも、驚くほど器用に、かつ無言で「手裏剣」を折り上げました。
「……ほら、できたぞ」
「わあ、ひろとすごい! カッコいい!」
元貴が本気で喜ぶと、滉斗は「……まあ、この程度なら」と少しだけ口角を上げました。それを見た涼架はニヤリ。
「そう! その『無愛想だけど頼れるお兄ちゃん』感、意外と子どもに受けるんだよね!」
最初は面倒そうにしていた二人でしたが、涼架が「もし泣き出しちゃう子がいたら、こうやって目線を合わせて……」と真剣に解説を始めると、自然と居住まいを正しました。
「りょうちゃん、本当にすごいね。あんなに騒がしかった学園祭の時とは別人みたい」
元貴が感心したように言うと、涼架は照れくさそうに笑いました。
「だって、子どもたちにとって、その日の僕は『たった一人の先生』でしょ? 責任重大だよ。……二人のおかげで、なんだか自信出てきた!」
数時間の特訓(?)を終え、リビングは折り紙のクズだらけ。
「疲れた……。5歳児って、こんなにエネルギー使うのか……」
ソファに倒れ込む滉斗の隣で、元貴は満足げにうさぎのパペットを動かしています。
「ひろと、お疲れ様。本番、りょうちゃんのイベント見に行こうね」
「……ああ。……あいつが子どもに囲まれてパニックになってないか、監視しに行く」
口では厳しいことを言いながらも、滉斗は涼架が作った「手作り名札」を、自分のカバンの中にこっそり仕舞っていました。
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コメント
3件
若井さんなんかかわいい 涼ちゃんさすがって感じする‼️
ひろぱ恥ずかしがってる?笑