テラーノベル
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オープンキャンパス当日。大学の一角に設けられた特設託児ルームは、子供たちの元気な声と熱気で溢れかえっていました。
元貴と滉斗が様子を見にドアを覗くと、そこには「涼架先生」の姿が。黄色いエプロンをなびかせ、子供たちの目線に合わせてしゃがみ込み、全力で笑い声を上げている涼架は、もう立派なプロの卵でした。
二人の姿を見つけた子供たちが、一斉に動きを止めました。
「あ! 新しいお兄ちゃんだ!」
「うさぎさんみたい! 可愛い!」
「こっちの大きいお兄ちゃん、強そう!」
一瞬の静寂の後、津波のような勢いで子供たちが二人に押し寄せました。
元貴はその柔らかな雰囲気から、すぐに子供たちのハートを掴みました。
「ねえ、お兄ちゃん、本読んで!」
「このパペット、お名前なんていうの?」
元貴は床にちょこんと座り、子供たちに囲まれながら、優しく絵本を読み始めました。聴覚過敏の元貴ですが、子供たちの無邪気な高い声が心地よいリズムに感じられるほど、その場は温かい空気に包まれていました。元貴の周りには、まるでお花が咲いたような平和な空間が広がっています。
一方、対照的だったのが滉斗です。
そのガッシリした体格と、どこか無愛想だけど動じない佇まいが、わんぱく盛りな男の子たちの本能を刺激してしまいました。
「すげー! このお兄ちゃん、全然動かない!」
「のぼり棒だ! 誰が一番高く登れるか競争だぞ!」
「……おい、引っ張るな。服が伸びるだろ」
口では文句を言いつつも、滉斗は子供たちが転ばないように、さりげなく腕で支えたり、腰を落として安定させたりしています。右腕に一人、左腕に一人、背中に一人。文字通り「人間登り棒」と化した滉斗は、眉間にシワを寄せながらも、絶対に子供たちを振り払うことはしませんでした。
結局、二人はそのまま涼架に泣きつかれ、お手伝いとして最後まで参加することに。
涼架が、全体の司令塔。泣き出した子をあやし、おむつ替えやトイレの誘導を完璧にこなす。
元貴が、 静かに遊びたい子や、寂しくなった子の「癒やし」担当。
滉斗は、体力の有り余る子たちの「アスレチック」兼「警備員」担当。
「ひろと、すごいね。子供たち、ひろとのこと大好きみたい」
元貴がクスクス笑いながら声をかけると、滉斗は背中に子供を乗せたまま、
「……お前が楽しそうだから、いい。……おい、鼻水つけるな」
と、呆れたように、でもどこか誇らしげに応えました。
夕方、保護者のお迎えが一人、また一人とやってきました。
「お兄ちゃん、またね!」「のぼり棒お兄ちゃん、バイバイ!」
子供たちが名残惜しそうに手を振って帰っていく中、最後の一人を見送った瞬間、涼架はその場にへたり込みました。
「終わったぁぁ……! 二人とも、本当にありがとう! 二人がいなかったら、僕、今頃干からびてたよぉ……」
エプロンを外した涼架の目は、少しだけ潤んでいました。
「でもね、今日確信したよ。僕、やっぱりこの仕事が大好き。二人みたいな素敵な助っ人がいてくれたら、僕、最強の保育士になれる気がする!」
夕焼けに染まるキャンパスを、3人で並んで歩きます。
「ひろと、明日筋肉痛になっちゃうかもね」
「……ああ。5歳児の握力、なめてた」
「あはは! じゃあ今日は、僕がお礼に豪華な晩ごはん作るからね!」
涼架の弾んだ声が響く中、元貴はこっそりと滉斗の服の袖を引きました。
「ひろと。……お疲れ様。のぼり棒お兄ちゃん、カッコよかったよ」
「……。……家帰ったら、お前がマッサージしろよ」
新しい生活の中で、3人の絆はより深く、より頼もしいものへと変わっていくのでした。
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コメント
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2人共子供に好かれる性格してるんだなっっ!今回もめちゃ良きです✨✨