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「う~、な見そ、な見そ」
今婿殿の家を求め全力疾走せり吾が名は伊邪那美神(イザナミ)、黄泉の国に住む何処にでもいる極一般的な黄泉津大神なりける。
強(し)ありて違ふところをあぐとせば、娘と婿殿の生末に興ありとてとこかナ……
かような吾が辿り着いた婿殿の家の庭先で見た物は、
即席の処刑台で火炙りにされる婿殿、
少し離れた所で大の字で仰向けに倒れる婿殿の父上、
泣き崩れる吾が娘達を抱きしめ、慰める婿殿の母上、
婿殿の足元で火の燃料扱いされる赤い狼、
「オーホホホホホホ!ほら、ワンちゃん、火力が足りませんよ!!!女誑しの大ウソ付きは火炙りにされるぐらいが丁度良いんです!!!!!」
と叫んで狼にもっと焼けと蹴りを入れる南蛮の小娘と、
「一寸王王王、アンタ誰の召喚モンスターよ!? いい加減にしなさい!!!」
と狼を叱り付ける、小娘の妖
「一体全体いかでかくなりきや?」[一体全体何故こんな事になった?]
吾が呟きに、
「ご無沙汰しております、伊邪那美神。それが……」
と手に履歴書在中と赤書きされた封筒を手にした”がぶりえる”なる翼人曰く、
事の始まりはけふの夕方頃、婿殿のがり娘達の召喚の許可の知らせの及びしほどより起こりて、
[事の始まりは今日の夕方頃、婿殿の元に許可の知らせが届いた時から]
婿殿、喜び勇んで両親に知らせの及びしほど伝えん。
これを聞いた両親、これをことの他喜びて、いち早く迎えんと婿殿をせかし、
婿殿、黄泉大毘売命を呼ばんと欲せば瞬く間に吾が娘達馳せ参ずる、
されど婿殿気が逸りて大過起こさん。
呼び出したるは吾が娘達のみにあらず。
時同じくして彼の臣たる者も全て呼びてしまえば、
まず口火を切るは小娘の妖、名を”えいんせる”といいける者が、
「ご主人様?そこの二人が新入りかしら?確か”黄泉醜女”って言うんだったわよねぇ?」
吾が娘、蛭子が応じて曰く、
「いいえ、今は”黄泉大毘売命(ヨモツオオヒメ)”という名前を旦那様から頂きました。現世の事は右も左も解らぬ不束者ですが、
皆様何卒ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします」
「へ~え、だ、旦那様。旦那様ねぇ……
ちょっとご主人様!!??私という者がありながらアンタ一体何やってんの!!!???
それとアンタ!アンタよアンタ!」
吾が娘、淡島を指して曰く、
「アンタもコイツの事を旦那様とか言い出すの!!??」
「いや、コイツって……」
婿殿がボヤくが、
「五月蠅い!アンタどうせ彼女の一人もいないんだからこんなのに引っかかっちゃったんでしょ!!??」
「ねぇ、旦那様。何、この羽虫。五月蠅いから羽とか首とか千切っちゃっても良いよね?」
「待って(震え声 ほらエインセル!失礼な事言ってないで早く謝る!!」
「ほ~ら、もう化けの皮が剥がれた!?
私知っているんだから!東洋には人を惑わす妖怪ってのがいるんでしょう!?
神様?黄泉醜女?
い~え、違うわ。この乳!(パシーン!!!)この尻ぃ!(パシーン!!!)このふとももぉ!(パシーン!!!)
こ~んな悪い物でご主人様を誑かすなんてコイツの正体は妖怪シコシコ女よ!!!」
えらくノー知性な言い争いしたすが、本当の禍はこの後に直ぐ訪れて、
婿殿の後ろから、女が一人、チョークスリーパーの要領で組付き、
「マ・モ・ルさーん。私、こんなの聞いていなかったんですけど、ひょっとして私、騙されました?」
ウフ、ウフフフフフ……
と虚ろな笑いで首を極めるジャンヌ・ダルクが、突如真顔になって婿殿を付き飛ばすと、
「貴方を殺して私も死にます。来世こそ二人で幸せになりましょう」
今度は私だけを見てくださいね……と言うと、
突如地面から火刑台が出てきて婿殿が括りつけられると、何処からともなく火の付けられた薪が放り込まれ、時を置かずに大火となり、ジャンヌダルクが追い焚きとばかりに王王王を追加投入して現在に至っています。
手に持っていた茶封筒を火にくべて、「いやぁ、何処の職場も色々ありますね」と”がぶりえる”はかく語りき
「さり、さり」[そうだ、そうだ]と黄泉津大神頷けば
かくて 天下泰平 なべて世は事も無し