テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
・OD、嘔吐、体調不良諸々が含まれます
・まだ最後まで見終えていないので設定と合っていない部分があるかもしれません
・調べながら書きましたが実際のODの様子とは違った部分があると思います
・決して沖田が作中でしている行為を推奨している訳ではありません
pixivであげる予定のものがあまりにも書き終わりそうに無いので燃え尽きる前に投下させていただきます
何でも許せる方だけどうぞ
──────────────────
真冬の江戸にて、太陽は控えめに辺りを照らし、雪はそれを反射して白く輝やく。そんな中、沖田総悟は窓の外の雪景色などに目もくれず、悶々と頭を抱えていた。
任務での普段なら有り得ない失敗、急な倦怠感、日課ともなっている土方への質の悪い悪戯までも忘れる始末。その原因は慢性的な睡眠不足であった。
初めは小さな違和感から始まった。花の10代、こんな職業柄ではあるものの、比較的健康な生活を送っているつもりだった。なのに何故かいつも通りに眠れない。目を閉じても眠気というものが一向に襲ってこず、体の疲れだけがそこに残る。
その感覚に身に覚えはあった。そう、初めて人を斬った日の夜だ。罪悪感は思っていたよりも無く、熱に浮かされボーッとするものの意識はハッキリしている。理性では全くそんな事を思っていないのに血を求めてしまっているような、まるで自分が獣になってしまったかのような。自分はとうとうそこまで落ちぶれてしまったのか?そうとまで考えた。
もしこの寝付きの悪さの原因がそのような事なら、周りにはまず相談できないだろう。それともう1つ、睡眠不足で任務が十分に出来ないなど、周りに言いたくないし思われたくもなかった。
「どうしたもんかねェ」
元来沖田という人間は、戦闘以外の事に関してはさっぱりである。何も考えずに指示を聞きその剣で敵を木っ端微塵にするのが仕事なのだ。
文句を脳内に垂れ流しながら思考の海を漂い、そうして沖田は1つの解決策という希望を見つけた。そうだ、睡眠薬を飲めばいいのだ。
思いついたが吉、こっそり屯所を抜け出し冷たい寒さの中、急ぎ足で薬屋へ向かう。営業時間ギリギリの所で声をかけ「ここで1番効果の強い薬をくれ」と新選組という顔パスを使い数十のそれを手に入れた。
なーんだ、簡単じゃねェか。そんな事を思いながら上機嫌を隠す事なく自室へ戻り、布団を敷きた。真っ白の錠剤を3個手に持ち、こういう薬は大体2個か3個飲むのが目安だろう。と説明を何も読まず水と共に口へ入れたその薬は、難なく喉を通り、問題なく自分を夢の世界へ招き入れてくれた。
その日の目覚めは最高だった。体の疲れはすっかり無くなり、頭痛もない。
「薬の力ってすげー」俺はひとりごちた。速やかに着替え、ルーティンを済ましていく間も、文明の利器に感心し、それを見つけた自分へ賞賛を贈っていた。まさかこんなにも便利だったとは。
いつもより軽い足取りで明るい食堂を歩く。その間、土方や山崎から痛いほど視線を感じた。だが普段は見ただけで虫唾が走る土方の顔も、今は視界に入ってもスルー出来る程の上機嫌である。何見てんだという文句は特別に引っ込めてあげよう。
横目に様子を盗み見ると、何故だか2人はコソコソと何か話し合い、その後山崎がこちらにそそくさと小走りで向かってきた。
「沖田隊長、朝食一緒に食べませんか?」
粗方、土方が指示でもしたのだろう、ザキが冷や汗をかきながらに朝食へと誘ってきた。
まあ、つい昨日まで隈を濃くし機嫌を悪くしていた男が、急に憑き物が落ちた様な顔をしていれば、何かしらは勘ぐるだろう。
まったくそんなに俺は信用が無いのだろうか。そう思いながらも甘んじて誘いは受け入れてやった。
「隊長今日機嫌良いですね、どうしたんですか?」
「今日はよく眠れたんでィ」
「そうですか…良かったですね」
山崎の言葉に俺は機嫌を良くする、有り余る全能感を抱えながら飯を食べ、山崎を置いて食堂を後にした。
訓練中も前みたいに途中で体が怠くなる、なんてことは無く、俺は常時ウキウキで剣をふるった。近藤さんも「今日は絶好調だなあ!総悟!」なんて言って頭を撫でてくれる。何もかもが上手くいくもんで、薬を飲めば俺は無敵なんじゃないか、と周りから見ればおどけた様な事まで思ってしまった気がした。まあ、そのような事を思いながら1日を過ごす。
日がすっかり暮れた頃、俺はまた部屋に戻ってきた。薬を取り出し2度目の服用を試みる、小さな白い錠剤を手に落とし、水と一緒に飲み込んだ。
小さい頃はこの苦味と薬を喉に通す行為がどうにも恐ろしくて、姉上に無理やり飲ませれていたっけ。昔から何も変わっていない様に思えていたけど、自分も少しは大人になれているらしい。少しずつ瞼が重くなっていく感覚に安堵し、また俺は眠りについた。
──────────────────
それから2週間程経った日、薬の効き目に変化が出始めた。難なく眠りにつける最高の服用ライフは、終わりを告げてしまったのだ。
前までは数分で眠れていたのに、段々と待ち時間が長くなってしまっている。量の問題だろうか。身体が慣れてしまったという事もあるかもしれない。
とりあえず3個から6個に変えてみるか、そう思い錠剤を机に置いてみた。一気に飲むのは怖いので3個ずつ喉に通してみる。
あ、眠い。唐突に意識が遠のき危うく頭が棚に当たりそうになり、冷や汗をかいた。だがこれだ、求めていた感覚は。以前のように迫り来る眠気に歓喜し笑みを浮かべながら目を閉じた。
目を開ける、目の前は何故か真っ暗闇で、その上どうしようもなく全身が重い。頭痛が酷い、頭痛で死を感じるのはこれが初めてだ。お腹の中が気持ち悪い、早くここから抜け出したい。何故、何故こんなことになっている。数分ほどそんな事を考える。そして次に目を開けた時、そこは布団の中だった。
夢か、そりゃそうか。最近は夢を見ることも減っていたはずなのにな。夢から冷めたことに安心はするも、頭痛や気持ち悪さは継続したままだ。今日一日はこれに耐えながら過ごさないといけないのだろうか、治りそうな気が全くしない。
取り敢えず布団から抜け出してみるも、普段通りのパフォーマンスは出来ないだろう。今日が討ち入りじゃなくて良かった。出来れば非番が良かったが、叶わぬ願いだろう。
隊服に着替え、顔に水を数回かける。朝食は食べられる気がしないので食堂には行かない事にした。
「おい、顔色悪いぞ」
「げ、土方」
「げって何だ、げって」
タイミングが悪りい、そういう空気が読めないからいつまで経ってもマヨラーなんですよ。まずい、気持ち悪くなってきた。
「おい!どうした総悟」
「う、るせえ…」
「はあ!?吐きそうなのか、トイレまで…は無理だよな、袋持ってくるから楽にしてろ!」
騒ぎ立てんな死ね土方…
吐きそうになるのを口を閉じ必死に耐えるが長く持ちそうにない。早く土方が帰ってきてくれるのを強く願う。もう無理、やばい、口の中に苦味が広がってくる。気持ち悪い。早く。
「これ、袋だ!すまねえ遅くなった!」
「…ぅ、が」
耐えきれず我慢していた物を一気に吐き出す。朝食を食べていなくてよかった、出てくるのはほとんどは消化しきったものだけだ。喉が痛い、こんな所を土方に見られているという事が屈辱でしかないが逃げることも出来ない。今はただひたすらに気持ち悪い。
「今日はもうゆっくり休め、連絡は俺が入れておく」
ああ、近藤さんに迷惑かけちまう。申し訳ねえな。こんなはずでは無かったのに。
──────────────────
体調はその後すぐに良くなった。もう大丈夫だ、そう伝え俺は仕事を再開する。今日は薬を買い直さなければいけないのだ、前回買った薬はもう底を尽いてしまった。これからは1日6個になると考えると更に沢山必要になってくるだろう。前吐いてしまったのはきっと起きてすぐ動いてしまったからだ。今度は大丈夫、そう思い込んだ。
最初は皆俺に気を使いながら動いていたが、いつも通りの姿を見て安心したのだろう、時間の経過と共に周りもいつも通りの対応に戻って行った。土方はいつまでもジロジロと様子を伺ってきたが、相手が何も言わないので俺も気づいていないふりを突き通した。
夜、これで一気に六錠服用するのは初めてだ。喉を通る感覚がいつもより強い様な気がした、いつも通りの眠気、いつも通りの感覚。安心感を伴っていたはずのそれらが妙に怖く感じる。
6錠が喉を通った数分後、視界がぐらりと揺らめいた。
「え、なにこれ…はっ、お゛ぇ、」
飲んだばかりの薬が液状になって吐き出される、生理的な涙がボロボロと零れ落ち視界が不安定になる。目眩も伴い混乱し何も考えられなくなった。平衡感覚が崩れたせいか、俺は銃に撃たれた鹿の様にバタリと畳の上に倒れてしまった。
幸い頭は打たずにすんだので身体に影響は無さそうだ、と回らない頭で判断する。つらい、つらい、つらい、畳に唾液と溶け掛けの薬が頬を伝って垂れ流されるのを横目に思った。
何も考えられない。頭の中が黒色にフェードアウトしていくのと同時に、瞼も閉じ始め、そして真っ暗になった。
──────────────────
パッと目が覚めた、昨日の事が嘘みたいにいつも通りの朝が来た。だが、畳の上の惨状が嘘じゃないぞと訴える。右頬は唾液がこべりついて気持ち悪いし、畳は汚れ異臭を放ち、嫌悪感に無意識に顔を顰めた。
何故こんなことになっているのだろう。薬を増やしすぎたからか?だがそうしないと眠れないのだ。快適に眠る方法などこれ以外に沖田は知らない。また前の様に睡眠不足になるよりは、ある意味何も考えずに寝られたし、昨日の気持ち悪さを受け入れる方がいいのかもしれない。
チクチクと不眠に苦しむよりは一時的にこのくらいバイオレンスに苦しんだ方が沖田の性に合っているとも言えるのだ。一応他の薬も試してから考えるとするか。沖田は考えるのをやめた。起きてからは吐瀉物の片付けが面倒なこと以外、何も問題はないのだ。このままで大丈夫だろう、このままで。
「ねえ隊長さん、勘違いだったら本当に申し訳ないのだけど、オーバードーズでもしてるのかい?」
前の睡眠薬で散々な目に会ってしまったため、また新しい睡眠薬を買いに行った際、突然店主にこう言われた。おーばーどーず?最近の流行りか専門用語かなにかだろうか。
「なんでィそれ」
「薬を規定の量より多く飲む事、苦しくなっちゃった子がよくしちゃうのさ。隊長さんこの前も沢山買っただろう、新選組としてじゃなくて個人として買ってるにしては消費スピードがおかしいと思ってね。もしそうならこれ以上買わせる訳にはいかないよ」
もう買わせる訳にはいかない、その言葉だけがやけに鮮明に聞こえた。確かに沖田は規定の量より多く飲んでいるがそれは身体が適応し始めてしまったからである。ましてや苦しいからやっている訳ではない。それに、今の自分にはこれが無いと困るのだ。
「やってませんぜ、そんな事。他にも不眠で悩んでる隊士がいるんでさァ、パシリですぜパシリ」
「…そうかい、また困ったことがあったら言ってくれていいからね、君は子供で私は大人だ。変なことを言ってすまなかった」
店主は少し悩む素振りは見せたが納得してくれたようだ。俺は新たな壁を乗り越えた、と心の中でガッツポーズをした。