テラーノベル
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鎖が小さく鳴り、サリエルはわざとらしくため息をついた。「いやぁ、まさか本当に来るとは。 天使ってもっと融通が利かないと思ってたよ?」
「…ふざけるな。」
「ふざけてないさ。まぁ、来るとは思ってたけど。 」
にやっと笑う。
けれど、その目は鋭く、逃げ場を与えない。
「で?今日は何を聞きに来た。 “悪魔にも心があるのか”とか?」
「…お前は、」
少年は一瞬、言葉を選ぶ。
「なぜ、そんなに落ち着いていられる。 拘束されてるからか?」
肩をすくめる。
「それとも、殺されるかもしれない相手と雑談してるから?」
「…両方かな。」
サリエルはくすっと笑った。
「正直だね、アゼリア・エリオス。 嫌いじゃない。」
軽口のまま、声の調子だけが変わる。
「でも勘違いするなよ。」
赤い瞳が、まっすぐ向けられる。
「僕は哀れまれてるわけでも、救われたいわけでもない。」
「…」
「僕は、自分自身の選択でここにいる。 守ると決めたもののためにね。」
その一言で、空気が変わった。
「守る…?」
「詳しくは言わない。」
すぐに、またいつもの調子に戻る。
「天使に弱みを晒すほど、僕は甘くありませーん。」
「…卑怯だな。」
「悪魔だぞ?」
冗談めかして言うが、笑いは薄い。
「あなたたちは“正義だから斬る”。僕 は“選んだから立つ”。 それだけの違いさ。」
アゼリアは、剣の柄に触れた。
「君は…迷わないのか。」
「迷うさ。」
即答だった。
「だからこそ、決めたことは曲げない。」
一瞬、沈黙。
「あなた今、迷ってる。 それを隠そうともしてない。」
サリエルは、少しだけ優しく笑った。
「まぁ、でもそれは弱さじゃない。 “まだ選んでる途中”ってだけだね。」
少年の胸が、静かに熱を帯びる。
「…お前、私に何を期待してる。」
「期待?」
首を傾げる。
「別に。 ただ――」
少し間を置いてから、続けた。
「次に剣を振るう時、 “名前を知ってる相手だ”ってことを忘れないで欲しいだけ。」
その言葉は、軽く投げられたようで、重かった。
少年は何も言えず、ただ頷いた。
「じゃあ、またね。天使さん。」
「…アゼリアだ。」
「はは。そうだった」
ちゃらけた声で言いながら、 サリエルの目だけは、真剣だった。
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