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空港の朝の空気は、少しひんやりしつつも人の賑わいでざわついていた。
すちとみことは待ち合わせ場所のベンチに並んで腰をかけ、まだ寝ぼけ気味のみことの頭がすちの肩に寄りかかっている。
「……ほんとに、どこ行くんだろ」
すちは腕時計をちらりと見て、小さく息をついた。
数分後、キャリーケースを引きながら眠たげな顔をしたひまなつと、片手をポケットに突っ込んだいるまが現れる。
「おはよー……眠い……」
ひまなつが欠伸をしながら座り込み、いるまは軽く手を挙げて挨拶する。
「行き先知ってる?」
すちが探るように問いかける。
「さぁな。俺は知らねぇよ?」
するといるまは口元をゆるめ、肩をすくめたが、目の奥にはわずかな笑みが浮かんでいて、知っていることを隠しているのが丸わかりだった。
「怪しいな……」
すちは眉をひそめるが、それ以上追及しなかった。
さらに5分後、最後にらんとこさめが軽快に現れる。
「おっ待たせ〜!」
こさめが手を振り、らんは余裕そうな笑顔でキャリーを引いていた。
「やっとそろったな。で? どこ行くんだよ」
すちが腕を組みながら問いただす。
らんは一瞬もったいぶるように周囲を見回し、にっと笑った。
「――ハワイ!」
「えっ……!?」
みことがぱちくりと目を丸くし、ひまなつは「えー……海だ……」と力のない声で呟く。
いるまは腕を組んだまま「まぁ、悪くねぇな」と涼しい顔をしていた。
「というわけで、パスポート持ってるよな? じゃ、行こうぜ!」
らんは宣言し、隣のこさめと指を絡めて先に歩き出す。
こさめは「楽しみだねー!」と元気に声を上げ、振り返って手をぶんぶん振っていた。
すちとみことは顔を見合わせ、ぽかんと口を開けたまま、これから始まる予想外の旅に胸を高鳴らせていた――。
ハワイ行きの飛行機の中。
朝早い便ということもあり、離陸してしばらくするとすぐに機内は静かになる。
窓側の席に座ったみことは、外を眺めているうちにまぶたが重くなり、コトンとすちの肩に頭を預けて眠り始める。
すちはその重みを感じながらも邪魔にならないよう姿勢を整え、彼の寝顔を見守りながら静かに目を閉じた。
通路側の席では、いるまが大きくあくびをしながら「寝るわ」と呟き、ひまなつは耳にイヤホンを入れて音楽を流しつつ、腕を組んでぐったりと寄りかかっていた。
後ろの列では、らんとこさめが並んで座り、こさめは「わくわくして寝れないなー!」と言いながらもらんの肩にすぐ寄りかかって、結局数分で寝息を立て始める。らんはそんな彼の髪を軽く撫で、静かに目を閉じる。
機内はエンジン音だけが響き、6人ともいつしか夢の中へ。
そして——長いようで短い空の旅を終え、飛行機が着陸態勢に入る頃、窓から見えるのは青く広がる海と、輝く太陽に照らされた島々だった。
アナウンスが流れ、到着を告げる。
みことが目を覚まし、まだ眠そうに瞬きをすると、隣ですちが「着いたよ」と優しく声をかける。
あっという間に、ハワイへ到着していた。
――ここから、6人の南国旅行が始まる。
ホテルに移動した六人は、それぞれの部屋に荷物を置く。
部屋に入った瞬間、すちとみことは思わず足を止めた。
天井まで続く大きな窓からは、ハワイの青い海と空が一望できる。広々とした部屋には白を基調としたインテリアが並び、南国らしい花々の香りがふわりと漂っていた。
しかし、ふたりの視線を一番引きつけたのは、部屋の中央に置かれたキングサイズのベッド。
その上には真っ赤なバラの花びらがハートの形に散らされ、枕元にはカードが一枚。
「Happy Wedding」と英語で書かれた文字が、まるで祝福するように輝いていた。
「……え?」
みことが目をぱちぱちさせる。
すちも同じく固まり、しばらくしてから小さく笑った。
「……え、これ……新婚旅行の部屋ってこと?」
「し、新婚って……いや、籍は入れてるけど…ぇと……」
みことは耳まで赤くして、ベッドとカードを交互に見つめている。
すちは腕を組み、少し首をかしげながらも冗談めかして言った。
「らんらんのやつ……わざとだな。俺たちの部屋だけ、こういう仕様にしたんじゃない?」
みことはまだ困惑気味に立ち尽くし、カードをそっと手に取った。
そこには、達筆で「Honeymoon Special」とホテルスタッフが書き添えている。
「……でも、ちょっとだけ嬉しい」
「……そうだね。新婚旅行はしてなかったし、こういうのも悪くないか」
すちはふっと笑い、二人は荷物を置いた。
ホテルからバスに乗り、最初に向かったのは、海沿いの人気観光スポット。白い砂浜と透き通る海に足を踏み入れた瞬間、みことは「わあ……きれい……!」と感嘆の声を漏らす。
すちは微笑みながら、そっとみことの手を握り、隣で「ほんとだな」と頷いた。
こさめはテンション高めに波打ち際で走り回り、らんが少し呆れながらも後を追う。
いるまはひまなつの腰に手を回し、二人で砂浜を歩きながら、ゆったりした時間を楽しむ。
6人で写真を撮ったり、地元の屋台で軽食を楽しんだりしながら、自然と笑い声が絶えない。
途中、すちがふとみことの肩を抱き寄せ、波の音に耳を澄ましながら、「楽しいね」と小さく呟く。
みことも顔を上げて笑みを返した。
観光名所を巡りながら、6人はお互いのペースを尊重しつつも、時折じゃれあったり写真を撮ったりして、賑やかで幸せな時間を過ごしていく――。
6人は海沿いの広場で小さな砂浜を見つけ、迷わず靴を脱いで波打ち際へ向かう。
すちとみことは手をつないだまま足を波に浸す。みことは水の冷たさに少し声を上げ、すちは「大丈夫?」と優しく肩をすくめる。
「大丈夫……でも、冷たい!」みことは小さく笑いながら、すちに体を寄せる。
すちはそんなみことをぎゅっと抱きしめ、軽く水を跳ね上げて楽しそうに笑った。
こさめは水しぶきを上げながららんに向かって突進する。らんも負けじと蹴って水を飛ばし、二人でキャッキャと騒ぎながら波打ち際を走り回る。
ひまなつといるまは少し離れて、ゆったりと波に足を浸しながら談笑。ひまなつが水をつまんで投げると、いるまも笑いながら避けたり受け止めたりして、二人の穏やかな空気が漂う。
すちはみことに小さな水のかけ合いを仕掛ける。みことは驚きつつも笑いながら反撃し、二人でじゃれあいながら少しずつ波の中に入っていく。
「ははっ、すち、やめ……!」
「いや、待て、こっちも!」
波に揺られながら互いの手を取り合い、笑い声と波の音が重なって、海辺はまるで二人だけの世界のようになる。
しばらく遊んだ後、ふと立ち止まると、すちはみことの髪や頬にかかった水滴を手でそっと拭い、「冷たかったな、大丈夫?」と優しく声をかける。
みことは少し照れたように頷き、「うん、大丈夫……すちと一緒なら平気」と小さく笑った。
その後も6人は交互に水をかけ合ったり、波に足を浸したりして遊び、太陽に照らされた海と笑い声に包まれながら、ハワイでの最初の思い出を存分に楽しむのだった。
海での水遊びの後、6人は砂浜の少し高くなった場所に腰を下ろし、手持ちの軽食や屋台で買ったサンドイッチ、フルーツを広げて休憩する。
すちはみことの隣に座り、濡れた髪をタオルで拭きながら、「お腹すいたな」と微笑む。みこともタオルで顔や髪を拭きつつ、笑顔で「うん、美味しそう」と頷いた。
こさめはらんの膝に座り、フルーツをつまみながら「やっぱ海の後はこれだ!」と元気いっぱい。らんはこさめに軽く笑いかけつつ、自分もサンドイッチを口に運ぶ。
いるまとひまなつは寄り添いながら、同じお菓子を分け合う。ひまなつが「ちょっと甘いけど美味しい」と言えば、いるまが「まあ、いい休憩だな」と満足そうに微笑む。
すちはみことの頬に手を添え、砂で少し付いた汚れを拭いながら、「こうやってゆっくり過ごすのも、悪くないな」と小さく呟く。
みことも肩をすちに預け、「うん、すちと一緒だと落ち着くね」と答え、二人でしばし静かに海を眺める。
波の音、笑い声、そして南国の空気に包まれながら、6人は穏やかなひとときを過ごした。
6人は再び観光へ出発する。
レンタカーで街を巡ったり、徒歩で人気の観光スポットを目指したりしながら、思い思いに風景を楽しむ。
すちとみことは手をつなぎながら歩き、みことは「さっきの海も楽しかったけど、ここもすごいね」と笑顔で話す。すちはそんなみことを見てにっこり微笑む。「本当にね。こうやって二人で色んな場所に来られるの、嬉しいな」
こさめは好奇心旺盛にあちこちへ駆け出し、らんがそれを追いかける。こさめが見つけた小さな雑貨屋で立ち止まり、「これ見て!面白い!」と声を上げると、らんも笑いながら「お前、ほんと好奇心旺盛だな」と言って一緒に中に入る。
ひまなつといるまは少し離れて歩きながら、カフェに立ち寄る。ひまなつが頼んだドリンクを飲みながら、いるまは「こういう時間もいいもんだな」と呟く。ひまなつも笑顔で「うん、たまにはゆっくりしよう」と頷いた。
観光地では6人で写真を撮り合ったり、地元の名物を試したりして賑やかな時間を過ごす。
すちとみことは互いに自然と肩を寄せ合い、時折海をバックにした景色を眺めながら、ゆったりとした幸せを噛みしめる。
午後の観光も、太陽と笑い声に包まれながら、6人それぞれの距離感と絆をさらに深めていくのだった。
観光を終え、6人はホテルに戻る。
ロビーに入ると、疲れを感じつつも笑顔が絶えないメンバーたち。荷物を置き、リビング兼ラウンジで一息つくことにした。
すちとみことはソファに並んで腰を下ろす。みことは砂浜や観光での出来事を思い出しながら、「今日も楽しかったね」と小さく笑う。すちはそんなみことの手を握った。
らんとこさめは向かいのソファに座り、こさめが「今日は色々回ったなー」と興奮気味に話すと、らんが穏やかに笑いながら「お前が楽しんでるなら良かったよ」と返す。
いるまとひまなつは足を組み、互いに肩を寄せ合いながら、今日の観光で見つけた面白いものや美味しかったお店の話をしている。ひまなつが「次はあの店も行きたい」と言うと、いるまも「いいな、行こう」と微笑みながら 頷く。
みんなで談笑しながら、疲れを癒すお茶や軽食をつまむ。窓の外には夕方の柔らかい光が差し込み、部屋全体を温かい色に染める。
「んじゃ、明日は9時集合だから!遅れんなよ!」
らんがにやりと告げる。
「どこ行くの?」
みことはきょとんした表情で見つめるも、こさめがすぐに「秘密!」と満面の笑みで答える。
すちはいるま達に視線を向けるも、「俺らも知らん」と返答される。
4人は困惑しながらも部屋に戻って行った。
広々としたベッドの上、柔らかいシーツに体を沈めながら、二人は向かい合っていた。
「寝相悪くても落ちなさそうだね」
みことが布団に顔を半分埋めながらぽつりと呟く。その無邪気な表情があまりに愛らしくて、すちは思わず唇を寄せてしまった。
「……ん」
不意打ちのキスに、みことは目を瞬かせ、すぐに頬を赤くする。
「明日は早起きだから、キスだけしよ?」
すちは悪戯っぽい笑みを浮かべながらも、やさしい声色でそう尋ねる。
みことは視線を逸らしつつ、小さく「……うん」と頷いた。その耳まで赤く染まる仕草がまた、すちの胸を締めつける。
すちはそっとみことの頬を包み込み、ゆっくりと唇を重ねた。最初は浅く、次第に深く。吐息が混ざり合い、唇が離れても名残惜しさにすぐ重なり合う。
「……すち」
みことが震える声で名前を呼ぶ。
「ん、何?」
「……やっぱり、もう一回」
小さなお願いに、すちは笑みを深め、今度は少し長く、柔らかに唇を奪った。
何度も何度も重ねたキスは、まるで「おやすみ」を繰り返すよう。ベッドの広さも、ホテルの豪華さも関係なく、この瞬間はただ二人だけの世界。
最後に軽く唇を啄むと、すちは「おやすみ」と囁き、みことを腕に抱き寄せた。安心しきったようにみことが胸元に顔を埋め、二人はそのまま穏やかな眠りについた。
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