テラーノベル
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朝の爽やかな光が差し込むバスの中。
大きな窓から流れていく南国の街並みは、色鮮やかな花々やリゾートらしい建物が並び、車内の四人――すち、みこと、いるま、ひまなつは「どこに行くんだろう」と胸をそわつかせていた。
みことは窓に額を近づけて目を輝かせている。
「なんか観光地っぽいけど……テーマパークとかかな?」
すちはそんなみことの横顔を見ながら
「あいつのことだから、どうせ何か仕掛けてくるんだろうな」と小さく笑っていた。
バスが止まると、ドアが開いて熱気が一気に流れ込む。
「はーい、着いたよー!」
こさめの弾んだ声が響いた。
降り立った瞬間、四人の目に飛び込んできたのは――真っ白な壁とガラスのチャペル、真っ青な空を映す大きな噴水。
整えられた南国の花々が咲き誇り、白い砂を模した小道の先には煌びやかな建物がそびえていた。
「……え?」
みことの声が小さく漏れる。
「ここ……結婚式場じゃねぇか」
いるまが低く呟いた。
「夢でも見てんのかと思った」
ひまなつは目を瞬かせ、気怠そうに肩をすくめる。
「いやいや、待て。なんで俺らがこんなとこに?」
すちは驚き、戸惑いを隠せなかった。
その混乱を楽しむかのように、らんが振り返ってにっこり笑う。
「はいはい、ここで一旦別れるから。また後で集合な!」
「は? ちょっと待――」
言い終える前に、らんはすちといるまの腕をぐいっと掴み、強引に引きずっていく。
「おい、何だよ! 説明くらいしろって!」
いるまが声を荒げるも、らんは「ダーメ! 今は内緒!」と茶化すだけ。
残されたみこととひまなつは困惑しきりだったが、こさめがぱっと笑顔を浮かべ、「さ、行こ行こ!」と二人の手を左右から掴んだ。
「え、ちょ、こさめちゃん!? どこ行くの!?」
みことが慌てて声を上げる。
ひまなつも「おいおい……俺、わけわかんねぇんだけど」と抵抗するが、こさめは子どものように元気いっぱい。
「秘密ー! でも楽しみにしてて!」と笑いながら引っ張っていく。
みことは振り返り、すちの姿を探す。だがすちもらんに引っ張られて反対方向へ。
お互い視線が一瞬だけ合った。
「大丈夫」と目で伝えるようにすちが小さく頷いたのを見て、みことは胸を落ち着けようとする。
白い回廊を走る靴音が重なり、南国の陽射しの下、二手に分かれた六人の影が遠ざかっていく。
――この先で何が待っているのか。
期待と不安の入り混じった鼓動が、誰の胸にも高鳴っていた。
らんに腕を掴まれ、すちといるまが連れてこられたのは、ホテルの一角にあるような豪華な扉の前だった。
らんがノックして開けると、ふわりと漂うのは柔らかな香水と花の香り。
中に足を踏み入れると――そこは一面真っ白の壁に大きな鏡、ハンガーラックには燕尾服やスーツがずらりと並んでいた。
テーブルには蝶ネクタイやポケットチーフが色ごとに整えられている。
「……は?」
すちは一歩後ずさる。
「なぁ、これ……完全に新郎の控え室じゃねぇか」
いるまが腕を組み、低く呟いた。
らんは得意げに笑いながら、二人をぐいぐい中へ押し込む。
「そう! サプライズだよ! 今日ここで、みんなにスペシャルな体験してもらおうと思って!」
「おい、体験って何だよ……」とすちが眉をひそめるが、らんは肩をすくめてニヤリ。
「まぁまぁ、衣装見てから文句言えって!」
仕立ての良さそうなタキシードの前に立たされ、すちは思わず息を呑む。
「……俺、着るのか? これ」
いるまは苦笑しながらも、「まぁ似合いそうだな」と呟き、首の後ろを掻いた。
一方その頃――
こさめに手を引かれてやってきたみこととひまなつ。
案内された部屋は、まるで花嫁の夢を詰め込んだような世界だった。
レースのカーテンが揺れる明るい空間。
壁一面には純白のウェディングドレスやカラードレスが並び、キラキラ輝くビーズやフリルが眩しい。
部屋の中央には、大きな三面鏡とふかふかの椅子。テーブルの上にはティアラやブーケまで置かれている。
「……えっ、えっ!? な、なんで俺らここに!?」
みことが目をまん丸にして立ち尽くす。
ひまなつも半目で鏡越しに並ぶドレスを見て、「冗談だろ……これ、絶対女用のだよな」と呟く。
こさめはケラケラ笑いながら二人の背中を押す。
「そうそう! せっかくだからさ、みんなでちょっとした式ごっこしようよ!」
「式ごっこ……!?」
みことは耳まで赤くなり、どうしたらいいかわからず助けを求めるように視線を泳がせた。
しかし、そこにはすちの姿はなく――鏡に映る自分の戸惑った表情だけが返ってくる。
「す、すち……」と小さく呟いた声は、ドレスの煌めきに吸い込まれていった。
すちといるまの控え室。
スタッフに案内されながら、半ば強制的にタキシードへ袖を通していく。
「……意外と、悪くないかもな」
いるまは鏡に映る自分の姿を見て、少し照れ隠しのように鼻を鳴らした。黒いジャケットがその体格をより引き締めて見せ、普段のラフさとは違う落ち着いた雰囲気を纏っている。
一方、すちは鏡の前でネクタイを直されながら、心臓が落ち着かない。
「……いや、これ、どう考えても本物の式場だろ。なんで俺がタキシードなんか……」
口では不満を漏らしつつも、仕立ての良いジャケットが肩に馴染む感覚に、妙にそわそわしてしまう。
「お似合いですよ」
スタッフに笑顔で言われると、余計に頬が熱くなる。
――その頃。
隣の部屋では、みこととひまなつが。
「ちょ、ちょっと待ってよ……これ、絶対着るの?」
レースに覆われた純白のドレスを前に、みことは小さく縮こまる。
こさめは「似合うから!」と即答し、嬉しそうに背中のチャックを上げていく。
「わ、わぁ……」
鏡に映ったのは、肩を出すデザインのドレスに包まれ、ぎこちなく立つ自分の姿。
耳まで赤く染めながら裾を掴み、戸惑いの声を漏らす。
「こんなの、すちに見られたら……」
ひまなつも同じくカラードレスに身を包まされていた。
普段の気怠げな雰囲気とは違い、長いスカートを引きずる姿はどこか大人びて見える。
「俺もかよ……。化粧にウィッグまですんのか」
ぼやきながらも、頬はほんのり赤らめた。
そして、再会の時。
チャペルの扉がゆっくりと開かれた。
タキシード姿のすちといるまが先に並び、その視線の先――そこに現れたのは、ウィッグを被り、化粧を施したドレス姿のひまなつとみことだった。
「――っ……」
一瞬、言葉を失うすち。
純白のドレスを纏ったみことが、恥ずかしそうに裾を摘まんで立っていた。頬は真っ赤、視線は落ちたまま。
「す、すち……見ないで……」
小さく呟いたその声は、かえって可愛らしく、すちの胸を締め付ける。
「……やばい、似合いすぎてる」
思わずこぼれたすちの本音に、みことはますます顔を覆いたくなる。
一方、いるまは横目でひまなつを見て「……悪くねぇな」と素直に褒める。
「はぁ!? やめろよ……!」
ひまなつはそっぽを向くが、耳まで真っ赤だった。
チャペルの中央、にやにやと眺めているのはらんとこさめ。
「ほらね! 最高でしょ!」
「思った以上に似合ってるよ、みんな!」
6人の笑いと戸惑いが入り混じる中、チャペルに柔らかな陽光が差し込んでいた。
スタッフの誘導で、それぞれがバージンロードに立たされた。
「では、これより模擬挙式を始めまーす」
軽い調子の司会の声が響く。
みことはドレスの裾を両手で持ちながら、視線を泳がせている。
「す、すち……ほんとにやるの?」
小声で問いかけると、隣のすちは苦笑いを浮かべながら「……もう流れに身を任せるしかないな」と囁く。
その瞬間、らんとこさめが後方で手を叩いて大盛り上がり。
「すちー! 手、ちゃんと貸してあげなよ!」
「そうそう、新郎っぽく!」
その声に押されるように、すちは赤くなりながらみことの手を取り、そっと指を絡めた。
指先の熱が伝わり、みことはさらに俯いてしまう。
入場の音楽が流れ、二人はゆっくりとバージンロードを歩いていく。
花びらの絨毯を踏むたび、すちは「これは夢か?」と思うほど現実感が薄くなる。
隣でドレスを揺らしながら歩くみことは、普段の可愛らしさに加えてどこか儚げで、胸が締め付けられるほど美しかった。
祭壇の前に立つと、司会が笑顔で言った。
「それでは、模擬挙式ですので誓いの言葉をお願いしまーす!」
「えっ……」
みことは驚きで固まる。
しかしすちは一呼吸置いて、彼の手をぎゅっと握った。
「俺は、これからもずっと……みことを大事にする。隣にいて、笑わせて、守る」
真剣な眼差しで言い切るその姿に、みことは目尻が熱くなり、震える声で答えた。
「……俺も。すちの隣で……笑ってたい。だから、ずっと……一緒に」
拍手が起こる。らんとこさめは「最高!」「本物みたい!」と大騒ぎし、いるまとひまなつも気恥ずかしそうに視線を逸らした。
「それでは、誓いのキスを……!」
「む、無理無理無理!」
司会の合図に、みこと慌てて首を振る。
だがすちは逃がさず、そっと頬に手を添えて顔を近づけた。
「大丈夫。……ちょっとだけね」
唇が重なり合う瞬間、チャペルに歓声が響いた。
みことは恥ずかしさで涙目になりながらも、すちの温もりに身を委ねた。
「次は……新郎・新婦交代でーす!」
スタッフの声が響き、チャペル内が再びざわめく。
「は? 俺らもやんの?」
いるまが思わず声を荒げると、こさめがにやりと笑う。
「もちろん! 今日は貸切にしてあるんだよー」
「ふざけんなよ……」
頭を掻きながらも、いるまはひまなつの方を見る。
彼はタキシードの裾を気恥ずかしそうに触りながら、小さく肩をすくめた。
「……どうせやるしかないんだろ?」
「……しゃーねぇな」
渋々ながら、いるまはひまなつの手を乱暴に取った。けれど、その掌は妙に優しく包んでいる。
音楽が流れ、二人はバージンロードを進む。
ひまなつは真顔を保とうとしているが、顔の赤みは隠し切れていない。
「なんか……人前で手繋いで歩くとか、すげー照れるんだけど」
小声で言うと、いるまは鼻で笑う。
「お前、普段ベタベタしてんのに今さらだろ」
「それとこれとは違ぇの!」と返す声が裏返り、後方のらんとこさめが大笑いする。
祭壇に立つと、司会が促した。
「はい、それでは誓いの言葉をどうぞー」
「俺から? ……」
いるまは、ひまなつを見つめると、表情が柔らかくなる。
「……オレは、お前がいねぇとやってけねぇ。だから、これからも……ずっと隣にいろ」
ぶっきらぼうな言葉だが、その眼差しは真剣そのものだった。
ひまなつは一瞬黙り込んだ後、唇を噛み、少しだけ俯きながら囁く。
「……オレも。いるまがいないと……不安になるから。離れんなよ…」
「「おー!」」
後ろからまた大歓声。らんとこさめは涙を拭うふりをしてふざけ、すちとみことは思わず微笑み合う。
「では、誓いのキスを!」
司会の声に、ひまなつは慌てて「いや、それは……」と後ずさる。
だがいるまは引き寄せ、強引に唇を押し当てた。
「んっ…!…ちょっ、いるまっ……!」
真っ赤になって抗議するひまなつに、いるまは口の端を上げて笑う。
「……文句あんのかよ?」
「……バカ」
照れ隠しの一言に、場内はさらに盛り上がった。
それぞれのブーケトス、写真撮影も和やかに進み、最後は6人で記念撮影。
写真を撮ったあと、らんが満足げに言う。
「これで最高の思い出できたな!」
こさめも「みんな、超似合ってたよー!」と満面の笑顔を見せた。
まだ「模擬挙式のお遊び」だと思っていた4人――すち、みこと、いるま、ひまなつ。
タキシードやドレスに着替えさせられ、花道を歩き、指輪交換の真似までして、豪華な会場の照明とスタッフに囲まれた。けれど「まあ、らんとこさめの企画だしな」と半ば冗談に受け止めていたのだ。
しかし模擬挙式が終わった直後、再び案内されたのは新郎側の衣装部屋。
鏡の前でタキシードを脱ごうとした瞬間、らんとこさめが扉を閉めて立ちはだかる。
「まだ終わりじゃねぇぞ。次は――本当の結婚式だ」
にやりと笑うらんの一言に、すちもいるまも思わず目を見開く。
「は?」
「おいおい……どういう意味だよ」
こさめは悪戯っぽく笑って続ける。
「ねぇ、本当のこと言うね。実はね、らんくんの実家、ブライダルと結婚式場の経営してるんだよ。で、今回ついにハワイに新しい式場をオープンするの。だからね、俺らに広告塔としてモデルになってほしいんだって!」
「はああああ!?」と声を揃える4人。
らんは照れ隠しのように後頭部をかきながら言葉を続けた。
「親父たちから頼まれてな……“お前らと仲間でモデルになってほしい”って。LGBTウエディングに力入れたいみたいでさ、実際のカップルの方がリアリティあるし、俺らならやれるって思ったらしい。だから――それぞれの両親にも話は通してある。みんな、招待も済んでる」
「招待って……!」
みことは顔を真っ赤にして慌てる。
「ってことは……俺らの親も来てんのか!?」
いるまが叫び、
「えぇ……俺、そんな準備してない……」
とひまなつはソファに倒れ込む。
すちは小さくため息をつきながらも、
「でも……らんらんの実家のことなら、軽くは断れないな」と冷静に分析していた。
らんとこさめは顔を見合わせてにっこり。
「だから、もう逃げられないんだよ。ちゃんと着替えて、最高に綺麗にして――次は本物の式、挙げようね」
4人は呆然としつつも、照明の熱と、式場スタッフの本気の準備ムードに飲み込まれていくのだった。
――次のドアが開いた時、そこは「遊び」ではなく「現実」としての結婚式会場だった。
スタッフに導かれて衣装部屋を開けると、そこには整然と並んだ真新しいタキシード。
しかもそれぞれ、色味やデザインがリンクしている。
らんとこさめは、深いロイヤルブルーと純白の組み合わせ。らんはシンプルなタキシード、こさめは軽やかなドレスシャツに蝶ネクタイ。
いるまとひまなつは、漆黒とシルバー。いるまは力強さを引き立てるジャケットスタイル、ひまなつは柔らかなシルバーグレーのセットアップで寄り添うように映える。
そしてすちとみことは、淡いエメラルドグリーンとアイボリーホワイト。すちは落ち着いたグリーンのタキシードに身を包み、隣に並ぶみことは柔らかな光沢を放つアイボリースーツで、まるで春の風のような透明感を纏っていた。
「……これ、まじで俺たち結婚式するやつじゃん」
いるまが顔を引きつらせる。
「LGBTウエディングって、こういう意味だったんだ……」
ひまなつがぽつりと呟く。
「ふふ、俺らお揃いじゃん。すごくきれいだよ」
すちは隣のみことに微笑む。
「……やだ、恥ずかしい……」
みことは鏡に映る自分の姿に戸惑いながらも、心臓が高鳴るのを隠せなかった。
らんとこさめが後ろから満足そうに腕を組む。
「ね? ちゃんと映えるでしょ。6人揃ったら最高に絵になるんだよ」
「そうそう!広告塔モデルにぴったり!」
やがて扉がノックされ、スタッフが告げる。
「ご家族の皆さまもお揃いです。新郎様方、会場へご案内いたします」
6人は互いに顔を見合わせ、照れや不安、そして少しの期待を胸に、色違いの衣装に身を包んで歩き出した。
――煌めく照明の先、そこには彼らの大切な人々が待つ本物の結婚式会場が広がっていた。
チャペルの扉が開き、らんとこさめが歩き出す。
バージンロードの両脇には、家族や友人たち、そしてスタッフが整然と並び、祝福の眼差しを送る。
らんは表情を崩さず、背筋を伸ばして堂々と歩く。
こさめは隣で少しはにかみながらも、笑顔を絶やさず手をらんにしっかりと握る。
「新郎お二人、ご入場です!」
司会者の声に、会場全体が拍手で包まれる。らんは軽く頭を下げ、こさめも笑顔で手を振る。
祭壇に到着すると、司会者が促す。
「では、お二人から誓いの言葉をお願いいたします」
らんは一呼吸置き、しっかりとこさめの目を見据えながら低い声で言う。
「俺は、何があってもどんな時もこさめと一緒に歩き続けます」
こさめは少し頬を赤らめ、手を握り返して返す。
「俺も、らんくんの隣で笑って、泣いて、ずっと一緒に歩きます」
誓いの言葉の後、指輪交換。二人は互いの指にそっとリングをはめ合う。
こさめの手が少し震えるが、らんの手に触れ、安心したように微笑む。
「よし、これで……」らんが小さく呟き、こさめも頷く。
司会者が最後に「誓いのキスをどうぞ!」と促すと、らんは少し照れくさそうに口元を緩め、こさめの唇にそっとキス。
こさめも頬を赤くしながら応え、会場から大きな拍手と歓声が上がる。
その後、二人はゆっくりと退場し、控え室で笑顔を交わす。
「……やっぱ、ちょっと緊張したな」
「でも、楽しかったね」
互いに照れ笑いを浮かべ、肩を並べて控え室を後にした。
らんとこさめの退場後、次はいるまとひまなつの順番。
扉が開くと、漆黒とシルバーの衣装に身を包んだ二人がゆっくりとバージンロードを歩き出す。
ひまなつは少し緊張した表情で、いるまの腕にしっかりと手を絡める。
「……やっぱ、照れるな」
「お前が赤くなってる方が可愛いんだけどな」
いるまは軽く笑いながらも、目線はまっすぐ前方の祭壇へ。
両親やスタッフが整列する中、二人は静かに歩き、祭壇へ到着。
司会者の声が響く。
「それでは、お二人から誓いの言葉をお願いします」
いるまは深く息を吸い、ひまなつを見つめる。
「俺は……一生をかけてひまなつを守ります。どんなことがあっても、俺の隣で笑っていられるような場所を作っていきます」
真剣な眼差しにひまなつは目を潤ませながら、でも口元に微笑みを浮かべて応える。
「……俺も、いるまの隣で一緒に笑って過ごしたい。離れたりなんてしません。」
司会者が促し、指輪交換。
ひまなつは少し手を震わせながらも、いるまの手にそっとリングをはめる。
いるまも微笑みながら、ひまなつの指を包み込み、しっかりと装着。
「では、誓いのキスをどうぞ」
照明に照らされた二人は目を閉じ、互いの唇を重ねる。
ひまなつは小さく身を委ね、いるまの手にぎゅっとしがみつく。
いるまも優しく抱き寄せ、唇を離さずに微かに笑みを浮かべた。
会場からは拍手が鳴り響き、二人はゆっくりと退場。
控え室でひまなつが小さく「……すごく嬉しかった」と呟くと、いるまは額に軽くキス。
「……俺もだ」
二人の絆が確かめられた瞬間、微笑みと幸福感に包まれた。
らんとこさめ、いるまとひまなつの式が終わり、いよいよすちとみことの番。
空気が少し変わり、照明が二人を柔らかく包む。
すちは淡いエメラルドグリーンのタキシード、みことはアイボリーホワイトのスーツ。
二人は互いに手を握り合い、深呼吸をしてからバージンロードを歩き始める。
みことは少し顔を赤らめ、唇をかむ。
「……やっぱり緊張する…」
「大丈夫、俺がそばにいるから」
すちは優しく微笑み、みことの手を握りしめる。
両親やスタッフが整列する中、二人は堂々と歩き、祭壇へ到着。
司会者が穏やかに声をかける。
「それでは、お二人から誓いの言葉をお願い致します」
すちはみことの目をしっかりと見つめ、静かに誓う。
「俺は、みことのすべてを受け止め、守り続けます。どんな時も、隣で笑い合えるように。感情豊かに過ごしていきます」
みことは少し涙ぐみながらも、深く頷き返す。
「……俺も、すちの隣で生きていきます。どんな時も…一生離れず、ずっと一緒にいます。」
誓いの言葉の後、指輪交換。
すちは優しくみことの指にリングをはめ、みことも少し手を震わせながらすちの指に装着。
司会者が最後に告げる。
「誓いのキスをどうぞ」
すちはそっとみことを抱き寄せ、唇を重ねる。
みことは驚きつつも甘く応え、互いに唇を絡め合いながら、世界が二人だけのものになったかのような感覚に包まれる。
会場からは温かい拍手と歓声が上がる。
二人はゆっくりと退場し、控え室で手をつないだまま互いの額を重ねる。
「……いつかはしたいと思ってたけど、こんなことになるとはね」
「うん……びっくりしたけど、楽しかった」
互いに微笑み合い、深い安心感と幸福に満たされる瞬間だった。
チャペルでの人前結婚式が全て終わり、6人は色違いの衣装をそのままに、披露宴会場へと移動する。
テーブルには家族が既に着席しており、温かい笑顔で迎えてくれる。
らんの両親は、息子の凛とした姿と、こさめのはにかむ笑顔に目を細める。
「本当に立派になったね、らん」
母親が微笑むと、らんも少し照れくさそうに頭を下げる。
こさめの両親も、息子が自信を持って歩く姿を見て安心した表情。
「こさめ、幸せになりなさいね」と優しく声をかける。
いるまとひまなつの両親も同じく、2人の姿を見て目を細める。
「お互いを支え合っているのがよく分かるわ」
「そうだな。これからも仲良くやってくれ」
いるまは少し照れくさそうにひまなつの手を握り、ひまなつも頷く。
すちとみことの両家は少し驚きと喜びが入り混じった表情を見せる。
すちの両親は、社会人として責任感ある姿と、優しく微笑むみことの姿に感慨深げ。
「すち、頼もしいね。みことさんも、うちの息子をよろしくね」
みことの両親は涙ぐみながらも微笑む。
「みこと、幸せになれるね」
「うん……すちと一緒にいると安心して笑顔になれる」
みことはすちの手を握り返し、自然に笑顔を見せた。
テーブルに着き、6人揃って食事が始まる。
料理を取り分け合いながら、笑い声や冗談が飛び交う。
すちはみことのグラスにワインを注ぎ、みことも照れながらも嬉しそうに微笑む。
らんとこさめ、いるまとひまなつも、それぞれ笑顔で会話を楽しむ。
「こうやって家族と一緒に食事できるの、すごく嬉しいね」
「うん、これからもずっと、みんなで集まれるといいな」
すちとみことは手を握り、互いに頷き合う。
会場全体に温かい空気が流れ、笑顔と祝福で満ち溢れていた。
披露宴が終わり、ホテルのラウンジ兼くつろぎスペースに戻った6人。
キャンドルの柔らかい光が部屋を包み、穏やかな時間が流れる。
みことはワインの余韻で頬を赤らめ、少しふわふわした様子。
「すち……抱っこして……」
甘えん坊スイッチが完全に入ってしまい、すちの手にしがみつく。
すちは微笑みながらみことを優しく抱き上げ、膝にのせる。
「つい飲ませちゃったな……でも、可愛いな」
みことは照れくさそうに顔を背けつつも、安心したように腕をすちに絡める。
その隣で、ひまなつもワインの影響でうとうと。
「いるま……」
甘い声で呼び、いるまの胸に抱きつく。
いるまは少し笑みを浮かべ、ひまなつの背中を優しく撫でながら座らせる。
「よしよし、寝かせてやるから安心しろ」
らんとこさめは二人の様子を見て微笑む。
「……みんな、楽しそうだな」
「ね、こういう時間が一番落ち着くかも」
こさめはらんの腕に寄り添い、肩を軽く叩いてじゃれ合う。
ソファやラウンジチェアに座りながら、ワインの香りと柔らかい光に包まれ、6人はゆったりと時間を過ごす。
みことはすちに体を預け、眠そうに目を細める。
「すち……ずっと一緒に……」
すちはみことの髪をそっと撫で、頬に軽くキス。
「ずっと一緒だよ。だから安心して」
ひまなつもいるまの胸で目を閉じ、らんとこさめも寄り添い合い、全員が心地よい疲労と幸福感に包まれたまま、ゆっくりと夜を過ごした。
すちは優しくみことを抱き上げ、ベッドへ運ぶ。
みことは頬を赤らめながらも、目を輝かせてすちの胸に顔をうずめる。
「……すち、いっぱいキスしたい」
すちは微笑み、ゆっくりとみことの唇に自分の唇を重ねる。
「お望み通りに」
唇が触れ合うたびに、甘く深い感覚が二人を包む。
みことは我慢できず、軽く唇を吸ったり、すちの舌に絡めたりと積極的に求める。
すちは応えるように、舌を絡め、唇で優しく圧をかけ、みことの体を手で抱き寄せる。
互いの呼吸が混ざり合い、部屋には静かな吐息と甘い空気だけが満ちていく。
みことは恥ずかしさと快感が入り混じった声を漏らしつつも、すちから離れられず、腕をすちにしっかり絡める。
すちはみことの背中や腰を優しく撫で、唇を離すことなく、二人の距離をますます縮めていく。
時間が経つにつれて、 すちはみことの頬に軽くキスを落としながら、腰を密着させ、互いの体温を強く感じ合う。
「……すち……もっと……」
みことは甘い声を漏らしながら、自分からすちに体を寄せる。
すちは微笑み、みことの腰に手を回し、体をそっと押し当てる。
互いの鼓動が重なり合い、呼吸が荒くなる。
すちはゆっくりと、自身の体でみことの中を押し広げていく。
みことは小刻みに体を震わせながらも、すちにしがみつく。
「……あっ……すち……」
快感に声を上げたいけれど、すちの唇で塞がれているため、声は漏れずに体全体で甘さを感じる。
すちは腰をゆっくり動かし、みことの体を優しく揺さぶる。
みことは必死に唇をすちに押し付け、舌を絡め、手をすちの背中や肩に這わせて応える。
「いっぱい……キスして……」
涙目でおねだりするみことに、すちはさらに唇を深く重ね、舌で優しく刺激する。
徐々にリズムが激しくなる。
すちは体を密着させたまま腰を打ち付け、みことを抱きしめるように揺さぶり続ける。
みことは喘ぎながらも、自らすちの舌を吸ったり絡めたりして甘え続けた。
互いの呼吸と吐息が混ざり合い、部屋中に甘く濃厚な空気が満ちる。
みことは体中で快感を感じながらも、唇を離さず、すちの唇を啄み、舌を絡めることをやめない。
すちはみことの体を抱きしめたまま、腰の動きを止めず、互いの快感を高め続けた。
やがて、すちはみことの柔らかい体の感覚に圧倒され、みことも唇の熱さに陶酔しながら、二人は同時に甘い余韻に包まれて果てる。
果てた後も、すちはみことを優しく抱きしめ、唇や額に軽くキスを落としながら、二人で静かに呼吸を整える。
みことはすちにしがみついたまま、安心した表情で目を閉じ、深く穏やかな眠りへと落ちていった。
ハワイでの数日間は、まるで夢のように過ぎ去っていった。
青く透き通る海での水遊び、波打ち際で手をつなぎながらの散歩、南国の市場やカフェでの買い物、夜にはライトアップされた街を歩きながら、笑い合い、じゃれ合い、甘い時間を積み重ねた。
すちとみことは手をつなぎ、互いの体温を感じながらゆったりと散歩したり、海に入ればみことがすちにしがみつき、すちは優しく抱きかかえて泳ぐ。
「すち……楽しい……」
「俺もだよ、みこと」
言葉は少なくても、互いの存在だけで満たされる幸福感に包まれていた。
いるまとひまなつ、らんとこさめも、手をつなぎ合い、じゃれ合いながらの観光や食事を楽しむ。
皆で揃っての記念写真や食事の時間、夜の部屋での談笑も、全てが思い出となった。
気づけば最終日。
飛行機の時間が近づくと、少し名残惜しそうに荷物をまとめる6人。
「またすぐ会おうな」
「次はどこ行く?」
笑顔で声を掛け合いながら、空港へと向かう。
飛行機の中では、疲れもあって皆それぞれうとうと眠る。
すちはみことの手を握り、みことも安心したようにすちの腕に頭を預ける。
窓の外に広がる雲の景色を眺めながら、二人は旅行での甘く濃厚な時間を思い返し、心地よい余韻に浸る。
あっという間に日本に到着し、空港で荷物を受け取る6人。
「ただいま」
「おかえりー!」
笑顔で声を掛け合い、再び日常へ戻る。
それでも、心の中にはハワイでの思い出と、互いへの愛情が温かく残っていた。
すちとみことは手をつなぎ、ゆっくりと空港を後にし、これからの日常でも甘く幸せな時間を重ねていくことを互いに感じながら歩き出すのであった。
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