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全国大会の会場は、思っていたより静かだった。歓声も、緊張も、
全部が遠く感じる。
大きなスクリーンに映る自分の名前を見て、
ようやく実感が追いついた。
――ここまで、来たんだ。
奇跡みたいな勝ち上がりだった。
派手な連鎖も、完璧な操作もない。
ただ、ミスをしないことだけを徹底した。
それだけで、
全国大会の決勝卓に座っていた。
対戦相手の名前が表示される。
《KIRISHIMA》
霧島蓮。
同じ広告を見て、
先に行ってしまった存在。
通話越しではなく、
画面越しでもなく、
同じ会場で、同じ席に座る。
「久しぶりだな」
蓮は、あの頃と変わらない声で言った。
「ここまで来るとは思わなかった」
その言葉に、嫌味はなかった。
むしろ、純粋な驚きだった。
試合が始まる。
蓮は攻める。
速く、強く、迷いがない。
俺は守る。
遅く、地味で、確実に。
観客は、きっと蓮のプレイの方を見ている。
俺の画面は、退屈に映っているはずだ。
それでいい。
俺は、
自分のやり方でここまで来た。
一瞬のミス。
蓮のフィールドが、わずかに乱れる。
俺は焦らなかった。
ただ、積み続けた。
最後のブロックが落ちた時、
勝敗は、もう決まっていた。
――勝った。
画面に「WINNER」の文字が表示される。
歓声。
拍手。
トロフィー。
全部が、現実感のないまま流れていく。
蓮は、少し笑って言った。
「お前の勝ちだ」
その言葉を聞いた瞬間、
不思議な感情が湧いた。
嬉しい。
でも、
心の奥が、どこか空っぽだった。
俺は、全国1位になった。
それなのに――
人生が変わった気が、しなかった。