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第16話 〚仮面の裏、覚悟の前〛
最近、恒一はマスクを外すことが増えた。
休み時間。
廊下。
放課後の昇降口。
「え、ちょっと待って」
「西園寺って、こんな顔だったっけ?」
女子たちの声が、ひそひそと広がる。
「普通にイケメンじゃん」
「今まで気づかなかった」
その輪の中には、
りあの姿もあった。
「前から整ってるとは思ってたけどさ」
「やっぱ優等生って感じ〜」
恒一は、気づいていた。
自分が注目されていることも、
評価されていることも。
(……今さらだな)
鏡を見なくても分かる。
昔から、そういう視線を向けられてきた。
でも――
胸は、まったく動かない。
(どうでもいい)
恒一の興味は、
最初から一人だけだった。
白雪澪。
女子たちの笑顔も、
甘い声も、
全部、背景に過ぎない。
(澪が、俺を見てくれればそれでいい)
その一方で、
誰も思わなかった。
――この優等生が、
――このイケメンが、
――誰かを追い続けているなんて。
「まさか、西園寺が?」
教師も、生徒も、
その可能性を最初から外していた。
それが、
恒一の“最大の盾”だった。
一方。
海翔は、静かに状況を見ていた。
澪の隣。
下校時。
放送委員の活動中。
常に、澪の位置を把握する。
「……澪」
「なに?」
「一人になるとき、必ず言って」
澪は、少し驚いてから頷いた。
「……うん」
海翔の表情は、
もう、迷っていなかった。
人気者でいること。
波風を立てないこと。
――それらは、もうどうでもいい。
(守るって、決めた)
澪が気づかないように、
一歩前に立つ。
もし、誰かが越えてくるなら――
今度は、黙っていない。
その頃、
恒一は廊下の端で、
二人を見ていた。
マスクは、していない。
(……邪魔だな)
でも、笑みは浮かべなかった。
まだ、
“その時”じゃないから。
校内の空気は、
静かに、しかし確実に張り詰めていく。
仮面が外れ始め、
覚悟が固まり、
――衝突は、避けられなくなっていた。