霧人が露乃を探し始めて風霜が過ぎた。
季節は夏を過ぎ、秋を経て、
雪が溶け、また新芽が出た。
子が親になり、孫が墓を守り、
その墓も参る者が絶え、土に還った。
露乃は影さえ掴めない。
それでも霧人は焦っていなかった。
露乃も霧人も時節を待つことは不得手ではない。
時がかかっても
二人が揃うという願望さえ叶えば
それでいい。
そんな想いで粛々と霧人は歩を進める。
魔
取り憑かれた者は死に
魂ごと喰らわれ
最期は石や砂になり
自我を失う。
心の隙間に忍び寄り
いつの間にか人が人でなくなり
喜びも悲しみも楽しみも寂しさも
全てが魔の糧になる。
霧人も露乃も魔に魅入られる種類には
入らない。
だからこそ狙われた。
魔は霧人と露乃の
強さ
に目をつけた。
そして露乃は攫われた。
霧人の眼前で。
それが唯一、霧人の心の疵となっていた。
露乃。
霧人の半身。
妹を取り戻すためなら、如何なることもしよう。
霧人の想いは坂を昇るにつれ
大きく大きくなっていく。
坂の頂は
もうすぐ。
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