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18 - 「やっぱり」💚🩷

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2025年04月02日

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俺は恋愛ものの作品が嫌いなわけじゃない。

むしろ好きなほうだ。

キュンとするシーンや、甘い雰囲気の中で互いを想い合う描写には、読んでいるだけで幸せな気持ちになる。


ただ、時折出てくる「煽ったお前が悪いんだからな」とか「俺をその気にさせたのが悪い」と言って相手を抱く男の描写が、どうにも引っかかる。

もちろん、フィクションの世界だからそういうのも楽しむ人がいるのは分かる。

でも、俺はどうしても違和感を拭えなかった。


好きな人に触れたくなる気持ちに、理由や責任を押し付ける必要なんてあるのか。

煽ったとか、誘ったとか、そんなの関係なく、ただ純粋に惹かれて、求めてしまうものじゃないのか。


恋愛って、そういうものじゃないのか。

好きだから、相手を抱きたくなる。

好きだから、触れたいと思う。

理屈なんてなくていい。ただ、心が求めるままに、互いを求め合う。

それこそが、本当に愛おしくて、美しい瞬間なのに。


そんなことをぼんやり考えていたある夜、俺は阿部ちゃんの腕の中にいた。


いつもなら、阿部ちゃんは反応を確かめながら、優しく触れてくる。

決して無理はしないし、俺が心地よくいられるように気遣いながら、慎重に触れてくる。

けど、今夜は違った。


「……っ」


阿部ちゃんの呼吸が乱れている。

熱を帯びた腕が、強く俺を抱き寄せた。


触れる指先には焦りが滲んでいて、普段の冷静さがどこにもない。

理性を保とうとしながらも、それが崩れそうになっているのが、手に取るように分かる。


――珍しいな。


そう思いながら阿部ちゃんの顔を見上げると、阿部ちゃんは眉を寄せ、必死に何かを堪えているようだった。

奥歯を噛み締めるようにして、震える呼吸を整えようとしている。


「……っ、俺が我慢できないせいで、ごめん……」


耳元で聞こえたかすれた声に、心臓が跳ねた。

阿部ちゃんの表情には、堪えきれない情欲の色が滲んでいた。


普段は理性的で、冷静な阿部ちゃんが、今は本能に負けている。

理性と欲の間で揺れながら、それでも俺を大切にしようとしてくれる姿が、たまらなく愛おしく思えた。


「……我慢しなくていいのに」


そっと頬を撫でながら囁くと、阿部ちゃんの目が揺れる。


――やっぱり、こっちの方がかわいい。


理性を手放した阿部ちゃんが、愛しくて仕方なかった。

 

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