部屋に響くのは、連打されるボタンの音と、ゲームの中で飛び交うインクの弾ける効果音。
それに混じって、ふっかの必死な声が飛ぶ。
「そこっ……! もっと……! あぁっ、ダメダメ!! そっち塗られてるって!!」
大きめのクッションに埋もれながら、コントローラーを握りしめたふっかが焦ったように叫ぶ。
俺は隣に座り、落ち着いた手つきでボタンを押しながら、その様子をチラリと横目で見た。
(今日もふっかは健全にえっちだな……)
決してやましいことを考えているわけではない。
が、こうも必死に「もっと! もっと!」と連呼されると、どうしても余計な想像をしてしまう。
ましてや、ふっかの顔は真剣そのもので、少し口を開けたまま画面を見つめる姿がやけに色っぽい。
「おい、もっとってどこだよ?」
「そこ! そこ!! そこをしっかり塗ってくれないと勝てないんだってば!!」
「はいはい……っと」
淡々と操作しながら、それとなくふっかの近くに視線をやる。
ゲームに集中しすぎているせいか、ふっかは完全に無防備。
クッションにもたれながら、大きく足を開いて座っている。
……なんだろう、この妙な色気。
「ふっか、お前さ」
「ん? ちょっと待って、今やばい! ちょっ……あっ……!!」
タイミング悪く敵にやられたのか、ふっかが「あぁぁ……」と切なげな声を漏らす。
思わず吹き出しそうになりながらも、真面目な顔を作って画面を見つめる。
「……もうちょっと控えめに喋れ」
「は? なんで?」
「聞いてるこっちがドキドキする」
「え、意味わかんないんだけど?」
ポーズボタンを押してキョトンとするふっかを見ながら、肩をすくめた。
何も知らずに無邪気にゲームを楽しむふっかが、やけに可愛くて、ついちょっかいを出したくなる。
(まぁ、こういうふっかも悪くない)
そんなことを思いながら、再びゲームに集中することにした——。
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