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第58話 〚見失う視界〛(仲間たちの焦り)―花火大会編・後半―
――ドンッ。
大きな花火が、夜空を裂いた。
その一瞬。
人の流れが、
一気に動いた。
「……え?」
みさとの声が、震える。
さっきまで見えていた澪の姿が、
人波に遮られて――
消えた。
「澪!?」
えまが声を張る。
しおりは、
必死に周囲を見回す。
「さっきまで、あそこに……!」
光、音、歓声。
全部が邪魔だった。
視界が、
何度も分断される。
「落ち着いて」
玲央が低く言う。
「今、澪は一人になった」
その言葉に、
全員の表情が一瞬で変わる。
「……恒一」
えまが歯を食いしばる。
「絶対、あいつだ」
「でも、姿が見えない」
しおりが焦りを隠せずに言う。
「どっちに……」
みさとは、
胸の前で手を握りしめていた。
「……澪、怖がってないかな」
玲央は、
一瞬だけ目を閉じてから、指示を出す。
「二手に分かれる」
「俺とえまは、右」
「しおりとみさとは、左」
「……了解」
短く返事が揃う。
それぞれが、
“ただの花火客”を装いながら、
必死に探す。
――その頃。
澪は、
人混みの中で立ち止まっていた。
(……海翔?)
声を出そうとして、
音にかき消される。
手の温度が、
もう、そこにない。
胸の奥が、
きゅっと縮む。
(……大丈夫)
そう言い聞かせても、
不安が、形になって迫ってくる。
背後で、
誰かの足音が近づく。
でも振り向く勇気が、
出ない。
――そして。
遠くで。
「……見つけた」
低い声が、
花火の音に紛れて消えた。
それが誰のものか、
まだ、誰も知らない。
夜空には、
次々と花火が咲く。
けれど地上では、
一人の少女を巡って、
必死な捜索が続いていた。
“間に合え”と、
誰もが願いながら。