テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
先程まで晴れていた空から水滴が降る。浅く被ったフードには到底荷が重い。
傘など持ち合わせていない。
前髪のせいで鈍くなっている視界。
更になるべく雨に濡れないように、多少下を向いて走る。
家までは多少距離があるため何処か屋根を探す。
近場にコンビニがあったことを思い出し、走る。
自動ドアが開くと同時に、軽快な音が店内に鳴り響く。
ビニール傘と、ついでにペットボトルで飲み物も。
ふと外を見ると先程よりだいぶ小降りになっていた。
これなら傘はいらないか。
飲み物だけ買って外に出る。
フードだけで十分な雨。
ただ走った時に少し濡れた前髪が鬱陶しい。
そのまま歩いていると一瞬目眩がした。
ほんの少しの間、目を閉じて。
目を開けると、知らない場所にいるような感覚。
いや、知らない場所にいる?
感覚だけでなく、視界までもが何かおかしい。
何かではなく、確実に?
後ろを振り向くと、ついさっきまで歩いていた道ではないことしか分からない。
でも今までとは変わらないような、そんな場所にいる。
似たようなグレーのビルが沢山建って。
先程の場所とは違うのに、小雨の音は降り続ける。
興味本位で、そのままこの道を歩いてみる。
まるで人混みの少ない東京のような。
この道の奥には大きな館のような…ホテル?
もう少し先まで行くと、見覚えのある人影。
青黒い綺麗な髪色は綺麗に手入れされている。
でも青いマフラーをつけて、サイズの合ったコートを着て。
よく知っている彼とは違うような服装。
話しかけてみようとした。
が、声が出ない。
掠れた声さえ、何も出ない。
指先も自分じゃあまり動かせていないことに気付く。
なんだか勝手に動いているような。
操られているような?
意識はおかしいのに、体は平然と動いている。
甲高い耳鳴りで他の音がなくなる。
気持ち的には吐きそうなのに、実際そんなことは一切ない。
そのまま視界がブラックアウトしていく。
あぁ、なんて最悪な日。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!