テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
先程まで晴れていた空から水滴が降る。浅く被ったフードには到底荷が重い。
傘など持ち合わせていない。
前髪のせいで鈍くなっている視界。
更になるべく雨に濡れないように、多少下を向いて走る。
家までは多少距離があるため何処か屋根を探す。
近場にコンビニがあったことを思い出し、走る。
自動ドアが開くと同時に、軽快な音が店内に鳴り響く。
ビニール傘と、ついでにペットボトルで飲み物も。
ふと外を見ると先程よりだいぶ小降りになっていた。
これなら傘はいらないか。
飲み物だけ買って外に出る。
フードだけで十分な雨。
ただ走った時に少し濡れた前髪が鬱陶しい。
そのまま歩いていると一瞬目眩がした。
ほんの少しの間、目を閉じて。
目を開けると、知らない場所にいるような感覚。
いや、知らない場所にいる?
感覚だけでなく、視界までもが何かおかしい。
何かではなく、確実に?
後ろを振り向くと、ついさっきまで歩いていた道ではないことしか分からない。
でも今までとは変わらないような、そんな場所にいる。
似たようなグレーのビルが沢山建って。
先程の場所とは違うのに、小雨の音は降り続ける。
興味本位で、そのままこの道を歩いてみる。
まるで人混みの少ない東京のような。
この道の奥には大きな館のような…ホテル?
もう少し先まで行くと、見覚えのある人影。
青黒い綺麗な髪色は綺麗に手入れされている。
でも青いマフラーをつけて、サイズの合ったコートを着て。
よく知っている彼とは違うような服装。
話しかけてみようとした。
が、声が出ない。
掠れた声さえ、何も出ない。
指先も自分じゃあまり動かせていないことに気付く。
なんだか勝手に動いているような。
操られているような?
意識はおかしいのに、体は平然と動いている。
甲高い耳鳴りで他の音がなくなる。
気持ち的には吐きそうなのに、実際そんなことは一切ない。
そのまま視界がブラックアウトしていく。
あぁ、なんて最悪な日。