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ある日のことだった。子供が母親に「遊園地に行きたい」と言い出した。
「遊園地、最近行ってないわね。」
「うん。またメリーゴーランドにのりたい!」
母親が父親の方をちらっと見る。父親が母親の視線に気づいたとき、深々とため息をついて行った。
「行ってやってもいいが、俺はメリーゴーランドには乗らないぞ。」
子供はその言葉を聞くと目をキラキラと輝かせて母親に言った。
「じゃあ、いけるってこと!?」
「そうよ。それじゃあ、明日行きましょうか。」
「やったー!」
母親は父親の表情をちらっと見る。少し不機嫌そうな表情だったが、いつもとどこ違っていた。
「わぁ!ゆうえんちだぁ!」
「迷子にならないように手を繋ぎましょうね。」
「うんっ!」
母親は子供の手を握る。すると、子供が父の指を握る。父親は驚いて手を振り払う。
「ぱぱ、てぇつながないとまいごになっちゃうよ?」
「…っ俺はいいんだ。」
「だめっ!おとなでもまいごになるひとだなんてたくさんいるんだから!」
子供は再び父親の指を握ろうとする。すると母親がそれを止めようとする。
「ぱ、パパは迷子にならないから大丈夫よ。たとえ迷子になっても、絶対に戻ってこれるからね。」
「そうなの!?ぱぱすごいっ!」
「…ッチ。」
メリーゴーランドの列に並ぶ母親と子供。 その近くのベンチに座る父親。
「さぁ、私たちの番がきたわよ。」
「やったぁ!」
母親と子供は同じ馬に一緒に乗った。母親は片手で棒を掴み、もう片手で子供を支えた。メリーゴーランドが愉快な曲を奏でながら動き始める。すると、突然メリーゴーランドからぱきっ、ばきっ、と音がする。するとメリーゴーランドの屋根がゆっくりとこちらに傾く。母親は目を丸くする。その時、母親は父親に向かって子供を投げる。
「あなたっ!この子をお願いっ!」
「!」
父親は飛んでくる我が子をさっと掴む。その時、ばきっという大きな音がする。
「ぁ」
屋根がどんっと地面に叩きつけられる。
「…お、おまえっ………。」
父親は崩れたメリーゴーランドに走って向かう。子供もそれについて行く。
「まま…?」
「おいっ、どこだっ!どこにいるっ!」
その時、視界の左側に母親の腕が見えた。父親と子供はその腕のところに近づく。その時、父親は子供の目を咄嗟に塞いだ。
「ぱぱっ、どうしたの?」
「…お前は見なくていい。」
その後、遊園地には救急車が4台ほど来たそうだった。
ー続くー
ご視聴いただきありがとうございました。