テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
母親の葬式、子供はポカンとした表情で椅子に座り、父親はいつもと表情が変わらないように見えるが、どこか闇で覆われているような表情だ。
「ぱぱ、ままは?」
「………」
父親は子供の質問に答えられなかった。
「ぱぱ、…ぱぱってば。」
「…どうした。」
「まま、いなくなっちゃったの?」
父親は少し考えてから言った。
「……そうだ。」
子供は目を丸くして驚いた。
「ま、まま、…まま。」
子供は泣きじゃくった。父親は子供の姿を見て、ほろりと涙を流した。そして子供をぎゅっと抱きしめた。
「あ、あれ…、私、寝てた。」
ベッドから起き上がると、外は真っ暗だった。とても長い眠りについていたのだろう。
「…お腹空いたな。」
私は夜中にゆっくりと部屋をでて、階段を降りた。そして厨房に入り、冷蔵庫を漁った。
(なにか作れるものはないかな。)
その時、後ろから悲鳴が聴こえた。
「きゃあぁ!」
振り返ると、そこにはスワンがいた。
「ま、まままままマリー様っ!?」
スワンは私を見て目を丸くしている。スワンは一歩二歩と後ずさりする。
「驚かせてごめんなさい。少しお腹がすいてしまって…。」
「そ、そうなのですね。それじゃあ、なにかお作りしましょうか。」
「あ、ありがとう。」
私は食卓につき、食事がでてくるのを待った。数分後、机の上に置かれたのは、ほかほかのカツ丼だった。
「いただきます。」
手を合わせてそう言うと、さっそくスプーンを手に持ち、つゆが染みたご飯を掬い上げる。口に運ぶと、目の前が見えずらくなった。
「ま、マリー様、涙がっ。」
「え?」
私は涙を流しながら、カツ丼を食べた。
「…御馳走様でした。」
スワンはニコッと笑って皿を厨房に運ぶ。そして、戻ってくると微笑みながら口を開いた。
「マリー様、ずっと部屋から出てこなかったものですから心配したのですよ。」
「え?」
スワンが泣きながら続けた。
「マリー様、毎日毎日、何度ノックをしても返事がないものですから、本当に、本当に心配したのですよ。」
私は唖然とした表情でスワンを見つめた。
(もしかして私、そうとうな日数睡眠状態だったってこと!?)
私は部屋にあったカレンダーに顔を向けた。すると、あの日から3ヶ月も眠っていたことがわかった。
「そ、そうだったのね…。」
私は独り言を呟いて、部屋に戻った。
ー続くー
ご視聴いただきありがとうございました。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!