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#怪異
阿炎快空
123
リユ
232
#ダークファンタジー
阿炎快空
82
阿炎快空
111
『通じた——オーマ!私達、今、あなたの中にいるの!』「わ、私の『森』に?一体、どうして——」
『説明してる暇はないの!お願い!上を見て、入口を開いて!』
「わ、わかりました!」
オーマは言われるままに天を見上げ、口を大きく開けた。
同時に、自らの口を『森』と接続する。
「おい、サビ猫。アンタ、さっきから何をごちゃごちゃ——」
と、魔女がそこまで言ったその時だった。
オーマの口から迸った見えない〝力〟が、鳥籠を粉々に粉砕した。
衝撃波はオーマを中心に、四方八方へと爆発的な勢いで伝播した。
「くっ——何だいこりゃあ!?」
魔女は〝力〟に耐えようと一瞬踏ん張ったが、難しいと判断するや、舌打ちを残して瞬時に姿を消した。
一方、蒼梧と二体の怪物は衝撃波の直撃を受け、それぞれバラバラの方向へと吹き飛ばされた。
〝力〟の放出が途切れるのとほぼ同時——オーマの口から、何かが赤い空へと向かって勢いよく飛び出した。
——それは、箒に乗った由宇と修であった。
「——由宇、下だ!下に戻って!」
僕の叫びを受けて、由宇は短く、
「わかってる!」
と叫び返した。
空に向かって垂直に上昇した箒は空中で方向を転換し、縛られ転がっている蒼梧の元へと飛ぶ。
あっという間に蒼梧の近くまで行くと、由宇は地面から僅かに浮かんだままの状態で、蒼梧に向かって右の掌を向けた。
パキパキパキ——という音と共に、蒼梧を拘束していた鎖が千切れる。
「大丈夫、中村君!?」
「ああ——何とかな」
そう言って体を起こした蒼梧を見て、修は息を飲んだ。
頭には短い角が生え、体のあちこちに緑色の鱗が浮かび上がっている。
その姿はナギに——半竜族にそっくりだった。
「蒼梧、一体——」
「修さーーーん!」
僕の言葉を遮るように叫びながら、オーマが猛ダッシュで近寄ってきた。
箒に跨ったままの僕の体をぴょんぴょん駆け上り、顔へと張り付く。
「さすがは修さん!絶対来てくれるって信じてましたよお!」
「わ、わかったから——ちょっと、離れて——」
僕が必死にオーマを引き離していると、
「—— ■■■■■ッ!」
何語かわからない、しゃがれ声の呪文が、辺りに響いた。
途端——箒はまるでロデオマシーンのように暴れだした。
「うわあっ!?」「きゃあっ!?」「わわわっ!?」
僕、由宇、そしてオーマを振り落とした箒は、離れたところに立っていた正当な持ち主——〝宵闇〟の魔女の元へと一目散に飛んで行った。
「——ったく、この浮気者が。こいつは誰にでも扱える代物じゃあないはずなんだがねえ」
箒を左手でパシッと掴み、魔女が鼻を鳴らす。
その肩にはいつも通り、ナハトが乗っていた。
「にしても、『森』は一つに繋がってるという話は聞いたことがあるが——まさか別の猫の口から脱出するとはねえ。本当に忌々しい餓鬼共だよ」
毒づきつつ、魔女がパチンと指を鳴らした。
——ぞくり。
背中に悪寒が走り、僕は慌てて周囲を見回した。
遠くに吹き飛ばされていたはずの側近二体が、音もなく姿を現わす。
魔女も合わせて三角形を描くようにして、僕達を取り囲んだ形だ。
「もう少しばかり、きつめの仕置きが必要みたいだねえ。仕方ない。死んじまったら、そん時はそん時だ——」
魔女が、真っ暗な瞳をカッと見開く。
「——お前達、やっちまいなあ!」
その言葉を合図に、全員が動いた。
「イヒッ!」
青い怪物が地面を蹴り、あっという間に間合いを詰め、蒼梧へと襲い掛かった。
それに対する、蒼梧の反応も速かった。
「——っらあ!」
二者の拳と拳が、激しくぶつかり合う。
「ぐおおおおおおおおお!」
巨漢に似合わぬ速度で突っ込んでくる赤い怪物を狙い、修は拳銃の引き金を引いた。
赤い光の線が走り、脇腹を貫く。
しかし。
血と肉が飛び散るも、怪物は倒れなかった。
「ぐ——おおお!」
苦悶の声をあげよろめいたものの、グッと踏みとどまり、再び修へと向かっていく。
「お前の相手はアタシだよ、小娘!」
魔女は箒を握っているのと反対——右の掌を、由宇へと向けた。
由宇も、両の掌を魔女へと向ける。
「ハッ!さっきの〝力〟は、やっぱりお前かい!肉体を伴ったままあれだけの〝力〟を放てたのは褒めてやるよ!だが、マグレはそうそう何度も——」
その言葉が終わるのを待たず、由宇の掌から〝力〟が迸った。
「——何いっ!?」
魔女が驚愕する声が響く中、二つの〝力〟が衝突する。
「マグレかどうか——確かめてみれば!」
ナギは、彼らの闘いをただただ見つめることしかできなかった。
——モリヤオサムとシイナユウが、オーマの口から『森』を脱出した際。
鳥籠を粉砕した〝力〟に吹き飛ばされながらも、ナギは魔女が姿を消すのを目の端でとらえていた。
地面を暫く転がった後、慌てて体勢を立て直し、周囲を見回す。
魔女は——居た。
一箇所へと集合した修達から少し離れた位置に、その姿はあった。
続けて、ナギはナカムラソウゴに目をやった。
遠目に見る彼の姿は、より一層、半竜族に近づいていた。
信じられないが、それでも信じる他ない。
魔女は嘘をつけないのだ。
〝宵闇〟がニアだと言った以上——ナカムラソウゴの正体はニアなのだろう。
とは言え、頭では理解できても、まだ心が付いてこない——
「——お前達、やっちまいなあ!」
魔女の叫びを合図に、闘いが始まる。
ナギは再び、そろりそろりと魔女へと近寄った。
シイナユウと魔女が対峙しているのを、真横から眺める。
魔女の肩に、黒猫の姿を確認する。
まだだ。
まだ、〝その時〟ではない。
しかし——〝その時〟が来たら、一体どうすればいい?
ナギが迷っている間にも、戦況は刻々と変化していく。
赤い怪物の背後に回り込んだオーマが、口から蔓を伸ばし、怪物の足首に巻き付ける。
「——ぐおおっ!?」
「今です、修さん!」
足を引かれ、前のめりに倒れた怪物の頭部に、モリヤオサムが至近距離から狙いをつける。
銃声。
閃光。
そして。
「があっ……!」
怪物の頭が吹き飛び、脳漿が飛び散った。
怪物の巨体は二度、三度と痙攣したが、それを最後に動くのをやめた。
青い怪物が顔面目がけて射出した酸を、ナカムラソウゴは紙一重で躱した。
「ヒャアアッ!」
奇声と共に振るわれた腕をかいくぐり、蒼梧は怪物の背後へと回り込んだ。
「くらえっ!」
後方から飛びついた彼の腕が、怪物の首を締めあげる。
「グ、グゲエッ……!?」
怪物は少しの間苦しそうにもがいていたが、やがて、ゴキリ——という鈍い音が響くと、腕をだらりと垂らして脱力した。
「こんの……小娘ぇ……!」
側近達が斃される中——覚醒を遂げたシイナユウを前に、魔女もまた苦戦を強いられていた。
〝力〟に押され、じりじりと後退する。
「才能、ってやつかい……気に入らないねえ……!」
魔女は憎々しげな口調でそう言うと、続けざまに大声で叫んだ。
「——ナハト、下がってな!」
ナギの心臓が、ドクンと跳ね上がる。
決断の時だ。
(わ——私は——私は——)
立ち尽くすナギの目の前で——飼い主の命令を受けた黒猫が、その肩から飛び降りた。
コメント
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第73話「反撃」、めっちゃ熱かったです…!オーマの口から由宇と修が飛び出す展開、想像してなくて鳥肌立ちました。蒼梧が半竜族っぽくなってるのも、ニアの正体に近づいてる感じがしてゾクゾク。ナギの「決断の時」っていう緊張感がすごく伝わってきて、次の行動が気になります。由宇の覚醒、魔女が苦戦してるのも熱い…!オーマが修さんの顔に張り付いてるシーン、ちょっと可愛くて笑っちゃいました(笑)続きが待ち遠しいです!