「そ、それで、その……」
どう切り出そうかを迷って、なかなか喋り出せないでいる私を尻目に、
「会う日取りを決めるんだったな」
彼の方は低く抑えた声のトーンで、淡々と話を進めた。
「なるべく早くに会っておいた方がいいだろうから、明日の土曜日の午後なら空いているが、それで構わないか?」
「えっ、ああ、土曜日の午後なら、私も空いていますが」
「なら明日に。住所を教えてくれたら、こちらから迎えに行く」
畳みかけるように進められる話に、促されるままに住所を伝えると、
「では、午後一時には迎えに。明日は、よろしく頼んだ」
素っ気ない返答の後に、会話はプツッと途絶えてしまった。
「……嘘、切れちゃった……?」
プープーという通話が終わったことを知らせる音を聞きながら、私はスマホを耳にあてたまま、しばらく呆然としていた。
「……なんていうか、向こうはひどく淡白で、あんまり気乗りがしてない風だったけど……」
ようやく我に返って、電話を切ると、ややぞんざいにも感じられる対応に、自分は電話をかける前からずいぶんと緊張していた分だけ、相手の彼はそうでもなかったことに、少なからず落ち込みが隠せなかった……。
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