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#高校生
第27話 「ベスト8の景色」
夏季県高校野球大会。
柳城高校は、ベスト8まで勝ち上がっていた。
あと二つ。
その言葉が、自然と頭に浮かぶ。
だが、小早川啓介は浮かれていなかった。
一年前。
同じベスト8で、西陵学園に敗れた。
あの悔しさを忘れていない。
試合前日。
柳城高校グラウンド。
夕方まで続く守備練習。
「一球で終わるぞ!!」
福間監督の声が飛ぶ。
ノック。
中継プレー。
バント処理。
細かい確認が続く。
部員たちは泥だらけだった。
練習後。
小早川は一人、ブルペンに残っていた。
そこへ舞が来る。
「まだやるの?」
「少しだけ」
舞は苦笑する。
「最近ずっと“少しだけ”やん」
啓介も笑った。
でも本当は、不安だった。
今年なら行ける。
周囲もそう言う。
だが期待が大きいほど、怖さも増していた。
舞は少し黙ったあと、小さく言う。
「お兄ちゃん」
「ん?」
「去年より、今の方が強そう」
啓介が舞を見る。
「みんな、お兄ちゃん見てるもん」
その言葉に、小早川は少し驚く。
以前の自分なら、考えられなかった。
“チームを背負う”
今は、その意味が少し分かる。
翌日。
準々決勝。
相手は――
福岡学院。
全国常連の強豪。
球場へ入った瞬間、空気が違った。
アップの動き。
打球音。
ベンチの雰囲気。
強い。
誰が見ても分かる。
だが柳城ナインは、下を向かなかった。
試合前。
福間監督が全員を見る。
「名前で負けるな」
静かな声。
「相手が強豪でも、同じ高校生や」
全員が頷く。
「お前らは、ここまで積み上げてきた」
「それを出せ」
整列。
礼。
――プレイボール。
初回。
福岡学院の攻撃。
いきなり連打。
無死一三塁。
球場がざわつく。
だが小早川は落ち着いていた。
マウンドへ向かう。
「一個ずつ行きましょう」
エースが頷く。
初球。
スクイズ。
小早川が前へ飛び出す。
捕球。
ホームへ。
アウト!!
柳城ベンチが沸く。
さらにダブルプレー。
無失点。
流れを渡さない。
その瞬間。
福間監督が小さく頷いた。
(強くなった……)
だが、本当の勝負はここからだった。
第27話 終
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