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#高校生
第28話 「福岡学院戦」
夏季県高校野球大会準々決勝。
柳城高校 ― 福岡学院。
福岡中が注目する一戦だった。
無観客に近い静かな球場。
それでも、張りつめた空気は伝わってくる。
初回のピンチを切り抜けた柳城。
だが福岡学院も、簡単には流れを渡さない。
二回。
福岡学院エースの直球が唸る。
――ズバン!!
球場に響くミット音。
「速ぇ……」
柳城ベンチから声が漏れる。
150キロ近いストレート。
県内屈指の右腕だった。
小早川啓介は打席で深く息を吐く。
(でも……打てない球じゃない)
三回。
福岡学院が先制。
二死二塁。
高めを叩かれる。
センター前。
1対0。
だが柳城は崩れない。
以前なら、強豪相手に空気で負けていた。
でも今は違う。
ベンチから声が飛ぶ。
「一点ずつ!!」
「まだ行ける!!」
五回。
試合が動く。
柳城先頭打者が四球で出塁。
送りバント成功。
一死二塁。
打席には小早川。
福岡学院バッテリーは、インコースを攻める。
初球。
詰まる。
ファウル。
二球目。
外角。
見逃し。
追い込まれる。
球場が静まり返る。
三球目。
低め。
小早川が食らいつく。
――カキン!!
打球は一二塁間を抜ける。
同点タイムリー。
1対1。
柳城ベンチが一気に沸く。
福間監督は腕を組んだまま、小さく頷いた。
(逃げてない)
中盤以降。
試合は完全な投手戦になる。
一点が重い。
七回。
福岡学院の攻撃。
一死満塁。
最大のピンチ。
球場の空気が重くなる。
打席は五番。
小早川はマウンドへ向かった。
「大丈夫です」
エースを見る。
「絶対、守れます」
戻る。
ミットを低く構える。
初球。
ストライク。
二球目。
ファウル。
追い込む。
三球目。
外角低め。
打った。
――ゴロ!!
ショートへ。
6-4-3。
ダブルプレー!!
柳城ベンチ総立ち。
「うおおおお!!」
流れが、柳城へ傾く。
八回裏。
二死三塁。
打席には四番。
福岡学院は敬遠気味。
一塁が空く。
次は小早川。
球場が静かになる。
福間監督は、ベンチで動かない。
勝負。
初球。
ストレート。
振り抜く。
――カキン!!
打球は三遊間へ。
ショート飛びつく。
届かない。
レフト前。
勝ち越し。
2対1。
柳城ベンチが爆発する。
舞も立ち上がって叫ぶ。
小早川は一塁上で拳を握った。
最終回。
福岡学院最後の攻撃。
二死。
ランナーなし。
最後の打者。
フルカウント。
球場全体が息を止める。
投げた。
振った。
――センターフライ。
捕球。
ゲームセット。
柳城高校 2―1 福岡学院。
ベスト4進出。
その瞬間。
柳城ナインがマウンドへ駆け寄る。
涙。
叫び声。
笑顔。
福間監督は静かに帽子を取った。
ついに。
柳城高校が、“本当に強いチーム”として見られ始めていた。
夕焼けが、静かなスタンドを赤く染めていた。
第28話 終
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