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りゅず
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―――
🩷「……柔となにがあったの?」
🟡「……なんもないし」
🩷「……」
帰りの車内。運転しながら吉田に聞くと拗ねたような声が返ってきた。
🩷「……変」
🟡「…え?」
🩷「おまえ変だよ。今日は別人みたい」
🟡「……どういう意味で?」
🩷「え?」
🟡「別人って…そもそも俺ってなに?」
🩷「え…は?」
🟡「俺は……誰なの」
🩷「……誰って…おまえは吉田じゃん。仁ちゃんからうまれたんでしょ?信じらんねーけど……てかやっぱなんかあったっしょ」
🟡「……」
なんだろう。
めちゃくちゃ違和感。
🩷「……おまえはさ、そういう感じじゃないよね」
🟡「…え?」
🩷「いっつも明るくて可愛い担当ですっみたいな顔してたっしょ。」
🟡「……」
🩷「…仁人のめんどくせえとこ抜いたようなのがお前なんでしょ?」
🟡「……」
🩷「なんでそんな顔してんの?柔となにがあったよ」
🟡「……それは」
🩷「このまま帰るとさ、仁人が困るかもしれないんだよね」
🟡「…」
🩷「…だから全部話してもらうよ?」
🟡「…わかった」
そのまま車を走らせ手近な公園の横に停まる。降りる必要はない。
🩷「…話して。」
それから俺は黙って話を聞いていた。
少しギョッとするような内容だったけど、吉田が話終わるまでただ黙って聞いた。
🟡「………」
🩷「……そっか」
🟡「…ごめん、なさい…多分俺、、」
🩷「…うーん。そこまで言っちゃったんだ…」
🟡「…うん」
柔太朗は仁人と吉田が交代していることまでは気付いてないだろう。仁人がふたりいるなんて事には気付けない。でも仁人の様子が変わったことに気が付いていた…。
そして問い詰めるでもなく、ただ聞いてきた。
本当に吉田仁人なのか、と。
🩷「すげーな…アイツ。」
🟡「…」
🩷「舐めてたかもしんない」
🟡「…」
🩷「で、認めるようなことを言ったんだ」
🟡「…ちょっとだけ、、」
🩷「ハァ…ちょっと、ねえ〜…」
🟡「ごめん、なさい…」
🩷「…それから?」
🟡「え……」
🩷「それだけじゃないっしょ?」
🟡「……」
🩷「俺が行った時泣いてたよね?」
🟡「…泣いて、ない。」
🩷「いや直前まで泣いてたのさすがにわかるよ」
🟡「…はい」
🩷「で、なんで泣いちゃった訳??」
柔太朗が気が付きかけてることも重要だけど、多分ここからが1番重要なんじゃないだろうか。
🟡「…俺…柔太朗に聞かれて答えた時、うそ、付いてるみたいな気持ちになったの」
🩷「……」
🟡「…俺ってなに?って…そんなこと考えたことなかったのに」
🩷「…」
🟡「…俺…仁人のスペアなのに」
🩷「……」
🟡「代わりでしかないんだって…なんか急にすごい悲しくなって」
🩷「……」
🟡「でも柔太朗は……仁人じゃない俺を、知りたいって……言ってくれて…」
🩷「…うん」
🟡「…君を知りたいって…君はどうしたい?って、聞いてくれた……」
……思ってた以上にマズい気がする。
正体のわからない恐怖に襲われゾッと全身に鳥肌が立った。
🩷「……で、おまえはどうしたいの?」
務めて冷静に言葉を絞り出した。
🟡「………俺…ちゃんとした俺…?になりたい」
🩷「…」
🟡「…仁人のスペアじゃない、ちゃんとした俺になりたい」
🩷「…それって」
🟡「柔太朗にほんとの俺を知って欲しい」
🩷「………っ……ほんとのおまえって、、、なに?」
🟡「え…」
🩷「おまえは仁人から生まれたスペア…っいやコピーでしかないんだよ!!」
🟡「!?」
🩷「調子乗んなよ、そんなこと許されないだろうが!!」
見開いた目には驚きと恐怖が映ってた。
そんな顔させたいんじゃないんだ。
……俺は怖いんだ。
🟡「は、やと…」
🩷「……ぶっちゃけさ、正直に言って?…おまえ仁人になりてーの?」
🟡「……?」
🩷「仁人の、、代わりじゃなく、仁人になりたいんじゃないのか?」
🟡「……え?」
🩷「……そういう事なんでしょ?」
🟡「え…ちがうよ?」
🩷「……じゃあ、どういうこと?」
🟡「えっと……違う違う。ちがうよ」
🩷「え?」
キョトンとした悪気のない表情に思わず俺も気の抜けた声が出た。
🟡「俺、仁人になりたい訳じゃない」
🩷「…じゃあなに?」
🟡「えっと……よくわかんないんだけど、仁人は仁人じゃん。俺もそうなんだけど、そうじゃないでしょ?」
🩷「……まあそうだね」
🟡「うん。そこは勇斗と同じ認識だと思う。…なんか、嬉しかったんだ、柔太朗が俺を見付けてくれた気がして…」
🩷「見付けてくれた…?」
🟡「そう…見付けてくれた。なんか、今までは仁人の為に頑張らないとってバレないようにって思って毎日過ごしてたんだけど、俺は俺でいい…みたいな気持ちになったの」
🩷「……?」
🟡「…仁人になり代わりたいんじゃない。だってそしたら俺も多分生きていられないから」
🩷「そ…そうなの?」
🟡「だって俺は仁人から生まれて今もどこかで仁人と繋がってる」
🩷「……」
🟡「仁人と一緒じゃないと生きていけないんだよ」
そう言った吉田の顔はまた少し寂しそうで。
理解が追いつかない。
🩷「…つまり?」
🟡「んー…だから、例えば仁人が消えちゃったら俺も多分消えるんだ」
🩷「え!?」
🟡「本体がないと俺は生きられない」
🩷「そ…そうなの?」
🟡「うん、感覚でね、なんとなくわかる」
🩷「……」
🟡「んーと、アレ、ほらBluetoothのイヤホンあるでしょ?」
🩷「…イヤホン?」
🟡「うん。アレってさ、イヤホンを本体に充電して使うじゃん。大抵のやつは」
🩷「う、うん」
🟡「あんな感じ。本体が無くなったらもう充電出来ないからイヤホンは使えない。そんな感じ」
🩷「君仁人で充電してたの…?」
🟡「まあ…だいたいはそんな感じ。あっ、だって仁人が食べたり寝たりしないとさすがに俺も動けないし」
🩷「そうだったの!?」
🟡「ふふ、そう。だから俺も寝るけど別に眠くて寝てるんじゃないんだよね。仁人が寝たから俺も寝るかー、みたいな」
🩷「……なんか訳分からんくなってきた」
🟡「…うん、俺も」
ふふっと笑った吉田に完全に毒気を抜かれた。
言ってる意味は半分以上わかんないけど、俺が心配している事は起き得ないってことか?
吉田が仁人になり代わってしまうなんて事は…ない?
🩷「…さっきは怒鳴ってごめんな。…で、あのさ…今の話で1番聞きたいのはさ」
🟡「ううん。なに?」
🩷「……もしも、もしも仁人になにかあったらおまえも消えるって、、なんでわかるの?てかなんでそんなに簡単に言えちゃうの…?」
🟡「あー…」
🩷「怖くは…ないのか?」
🟡「んー…まずなんでわかるのかは、なんとなくかな?だから本体の消耗が激しい程俺が元気になる。本体を守らなきゃいけないから、限界まで頑張れる。怖くないかは……正直わかんないかな」
🩷「…」
🟡「…あんまり境目がないんだよ。俺と仁人って。同じ記憶を持ってるし同じ経験をしてる。少なくとも俺はそう思ってる。だから仁人になにかあってもそれは、自分が明日死ぬかもしれないけど今日から怯えて暮らす必要がない、に近いかな」
🩷「…なるほど」
🟡「うん。人間みんないつかは歳とって死ぬじゃん?勇斗も仁人もみんな。事故に合うかもしれないし病気になるかもしれない。それは俺も条件は同じなんだよ」
🩷「……」
🟡「きっかけが仁人ってだけ。俺は最初から仁人と繋がってるから、そう思ってる」
🩷「…なんかすげえな」
🟡「…そうかな……ねえ、いっこ聞いていい?」
🩷「うん?なに」
すっかり普通のテンションに戻った吉田とそれに引っ張られるように普通に話し出している自分に気付いてなんか妙にホッとする。
🟡「……俺って、そんなに仁人とちがう?」
🩷「え……う、うーん」
🟡「……」
🩷「いや…まあ違うっていうか、、俺は全部知ってるし…まあ違うかな」
🟡「うん…そうだよね」
🩷「…なんで??」
🟡「……柔太朗はなんで気付いたんだろう。」
🩷「……あー」
🟡「俺が仁人じゃないって、、そんなに俺下手くそだったかな?」
🩷「いや……普通、なら気付かないんじゃ、ないかな」
🟡「…普通なら?普通じゃないってこと?柔太朗はなにか他の人と違うの??」
🩷「いやあ…柔はまあ、普通だとは思うよ」
🟡「……なあんだ」
🩷「え、なにその感じ…」
🟡「うん……そうだよね…普通なんだよね」
🩷「よ、吉田?」
🟡「………おれ」
なんかまた嫌な予感がする…
さっきとは全く別の…。
🟡「……柔太朗のことが気になる」
🩷「……」
🟡「なんか……俺が生まれてから、あの日からもずっと仁人として生きてきたけど、柔はちがう気がする……」
🩷「…なにが?」
🟡「ちゃんと俺のこと見てくれた…気が付いてくれた」
🩷「…」
🟡「俺……嬉しかったんだ、、」
そう話す吉田の耳が赤い。
まじか…。
🩷「それで…?」
🟡「勇斗…怒らない?」
🩷「…うん、もう怒らない」
🟡「良かった……。じゃあ言うね…。俺…柔太朗のこと……考えるとドキドキする」
🩷「……」
🟡「さっきも……嬉しくて、でもなんか悲しくて泣いた。俺の事ちゃんと言いたいって。俺の事、仁人としてじゃなく見て欲しいって、おもった…。」
🩷「…吉田として見て欲しいの?柔太朗に?」
🟡「吉田かどうかは…わかんない。でも柔に決めて欲しいって、思った。」
🩷「なにを…?」
🟡「俺の……名前…俺だけの呼び方とか、名前みたいなの」
🩷「……」
🟡「それで、柔太朗にだけ呼んで欲しいって、思ったの…。」
予感的中。
…めちゃくちゃ迷ったけど、なんだか寂しそうな目の前の吉田が可哀想でつい口に出した。
🩷「吉田……それって、恋しちゃったって事?」
🟡「え…?」
🩷「多分だけど…恋じゃね?」
🟡「恋…?」
🩷「おまえ柔太朗のこと好きになったんだと思うよ」
🟡「………」
3秒くらい黙った吉田が不意に俯いて顔を手で隠した。
🩷「え?…吉田さん?」
🟡「…っ」
よく見たら顔も耳も真っ赤っか。
うわ…なんだこれ。
🟡「嘘……おれ…柔太朗のこと、、好きなのかな……」
🩷「は、はは…そうじゃない?」
さっきからの流れから吉田の人生の新たな扉を開くアシストをしてしまうとは思ってもみなかった俺は、頭を抱えそうになる。
が、まるで少女のような反応をする吉田がなんだか可愛くて、そっと頭を撫でるしか出来なかった。
🟡「……うー、めっちゃ恥ずかしい」
🩷「……まあ、いいんじゃない」
🟡「そうかなあ…っ」
吉田が落ち着くように頭を撫でてやりながら、俺は考えていた。
仁ちゃんになんて言おうか……。
吉田が酷い目に合う未来しか見えなくてまた頭を抱えそうになったのだった……。