テラーノベル
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柊トワ
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こんにちは、ましゅまろです。
こちらの作品はフィクションです。実在の人物などには一切関係ありません。
この物語が多くの人の元に届く事を祈って。
それでは本編です。
『プロローグ』
「ほら、虹だよ」
誰かが虹を指さして笑う。
振り返ったその顔は、逆光で見えない。
「虹ってどうやってできるの?」
そんな疑問を俺が投げかけると、その誰かは微笑んだ。
「太陽の光が、鏡みたいに雨に反射して出来るんだよ。だから、虹は掴めない。でも綺麗だよね」
「掴めないなんて変なの。いじわるじゃん」
「そういうもんだよ」
俺の隣に座る誰かが寂しげに笑う。
「じゃあ俺が、虹を掴んだ最初の人になる!」
俺がそう宣言すると、誰かは驚いたような顔をした。
「すごい。じゃあ僕は莉玖が虹を掴んだところを、横で見てようかな」
「約束だからね!」
「うん。約束」
『第一部』
「続いては3年A組の発表です。自由曲は…」
始まっちゃった…
全クラスが歌を競う合唱コンクール。
僕・ゆうは、その伴奏者に選ばれた。
数ヶ月前のこと───
「じゃあ次は伴奏者決めるぞ。誰かできるか?」
誰も手を挙げず、静まり返る教室。
「そういえば結、お前ピアノ弾けるんだったよな。伴奏者、やってくれるか?」
「え、あ、はい…」
「よーし決まり!じゃあ自由曲は…」
半強制的に決まった役割。
別に苦手ではなかったけど。
「もう少し意見聞いて欲しかったな…」
無意識に口から零れた思い。
「…大丈夫?」
隣の席から聞こえた声に、弾かれたように隣を向く。
「え、あ、はい。大丈夫です」
「伴奏、頑張ってね。ゆいくん」
ふわっとした声の男の子で、すごく優しそう。
「ゆうです。…ありがとうございます」
ゆうくんかぁ、と笑った男の子は、こう続けた。
「敬語やめてよ。俺はリク。草かんむりに便利の利と、王へんに久しいって書いて、莉玖」
「…リク、くん」
「リクでいいよ。よろしくね!」
こんなタイミングで仲良くなったなんておかしかったけど、友達ができて嬉しかった。
「よろしくね」
鍵盤に指をのせる。
ピアノの静かな前奏から始まる曲を、間違えないように慎重に弾いていく。
最後、フィナーレ。階段を駆け上がるような音階の途中、一音音が消えた。
「ぇ…」
動揺して指が動かなくなって、伴奏が止まったせいで歌が聞こえなくなった。
ざわつくクラスメイトと、観客席。
きいん、と耳が鳴る。
リクがこっちに、走ってくるのが見えた。
「おはよう!」
合唱コンクールの翌日。
リクに声をかけられて、びっくりしながら挨拶を返した。
「おはよ」
席に座って、かばんを机から下ろした。
昨日の合唱コンクールの結果は散々で、クラスの雰囲気もぐちゃぐちゃ。
先生と委員長がなだめてくれたけど、結局雰囲気は悪いままだし、委員長もみんなに文句を言われてしまっていた。
「…ゆい、大丈夫?」
「大丈夫、だよ。…多分」
クラスメイトが囁き合っているのを聞きながら机に伏せて、リクを横目で見る。
「ねえ、ゆい」
「僕ゆうだよ」
「あそっか。ゆう、あのさ」
えっと、と口ごもったリク。
「旅行行かない?」
「…えっ?」
「旅行!」
「…ええ?」
旅行?
「旅行って?あの?」
「あの!」
「旅行しようってこと?」
「しようってこと!」
「何で?」
「ゆうと旅行したい!」
「シンプルだね」
目をキラキラさせるリクに、戸惑った。
「…いいよ」
「いいの?!」
「うん。リクならいいかなって」
「やったぁ!」
「約束ね」
小指を立てると、リクは少し戸惑ったような顔をしてから小指を絡めた。
「⋯うん。約束」
先生が教室に入ってきて、ホームルームが始まった。
「えーっと…莉玖、結、哉、凪、悠。道徳のプリント出してないな、放課後残れ」
「早く帰って旅行の準備したかったのに…」
リクの声を聞きながら、ふと疑問に思った。
「リク、プリント出してないの?僕は休んでたけど…」
「人権とか考えるの苦手でさ。ゆうも一緒ならよかった」
「ちょうど班活動あるから、全員分のプリント5人で埋めてくれ。先生はパン買ってくる」
「いや、何それ…」
ふーっと息を吐いた小さな男の子が、始めますかぁ、と呟く。
その手元には、『家族の大切さ』というプリントが置いてあった。
「委員長?何か、いつもと違う…」
くいっと大きなめがねを押しあげたその男の子は、うちのクラスの委員長だ。無理矢理押し付けられた感じで、いつもは地味な存在。一時期いじめられてたっていう話も聞いたことがある。
「あんなのキャラに決まってんじゃん。真面目くんっぽく生活してるだけだよ」
委員長───なぎさは、いたずらっぽく笑う。
「俺早く帰りてーんだけど。さっさと始めろ」
ぶっきらぼうに言い捨てた、なぎさと同じプリントを持っている長身の男の子。
「でも、かな───」
「うるせぇ。早く始めろ委員長」
かなは、クラスの中では不良として有名な生徒。
クラスメイトだけでなく、先生たちからも怖がられている。
「えっと…ハルはどう?」
リクが話をふったハルは、最近転校してきた男の子。手元にあるのは『将来の夢』のプリントで、提出していないどころか名前しか書かれていない。
全然誰とも話そうとしないし、休み時間は首にかけたヘッドホンで音楽を聞いている。
「…わかんない」
「リクはなんかある?」
なぎさがリクに質問しても、リクは苦笑いして返す。
「…俺もこういうの苦手なんだよね」
1時間ほどして、ようやく意見がまとまった。
ワークシートに記入していると、リクがふいに声を上げた。
「ねえ、みんな!俺とゆいさ、2人で旅行に行くんだけど…よかったら一緒に行かない?」
なんでこの状況で話しかけられたんだ、と思いつつも、3人の反応を待った。
「僕はいいよ、行っても。リクだし。かなは来る?」
「…別にいいけど。どうせ行かないって言っても連れてくだろ、お前」
「…行かない」
「ハルは来ないの?」
リクが寂しそうにハルを見ると、ハルはふいと目を逸らす。
「行かない」
「何で?」
なぎさの視線を浴びて、ハルは黙り込んだ。
「まだみんなのこと信頼できない」
「じゃあ…」
声を出すと、4人の視線が一気に自分に向いた。
「じゃあ、これからみんなで遊びに行こうよ」
「ゆう…」
「それいいじゃん!行こ!」
リクが声を弾ませる。
「ちょっと、まだいいって言ってな───」
「ハル、いい?」
「今じゃないでしょ…」
「…おい」
後ろからしたかなの声に、振り返る。
「…早く行くぞ」
顔をちょっとだけ赤くして、教室を出たかな。
「かな待ってよ!」
「可愛いとこあんじゃん」
「リク、なぎさ!」
「…」
「ほら!ハルも行こう!」
リクが笑って手を差し伸べる。
「…ん」
ハルが手を取って、カラオケ行きたい、と呟いた。
「カラオケいいじゃん!みんな門限ある?」
「僕は…18時とかかな」
「俺は別に…いつでも」
「僕も〜」
「俺19時!ハルは?」
「…19時」
厳守ね、とつけ足したハルは、下駄箱に向かって歩き出す。
「…ハル?」
リクがぽやっと声を出すと、ハルは振り向いた。
「…何?…早く行こ」
「…うん」
これにて第1話は終わりです。続きも一気に投稿していこうと思っています。
次の話でまた会いましょう。
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