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目に止まったその男性は、駅のホームにある自販機の前で財布を見ながらぼーっと立ち尽くしていた。グレーのニット帽に、水色のマフラーをしていて、顔はほとんど隠れていた。
何故か気になって、いても立ってもいられなくなった私は、声を掛ける事にした。
「あのー、どうかしました?お困りですか??」
「あ、ごめんなさい。実は、 寒かったので温かい飲み物でも買おうと思って財布をみたら、現金全然持ってないことに気付いて…この自販機、キャッシュレス機能壊れて使えないみたいで。すみません、ご迷惑おかけして。」
彼の財布に向いていた視線が私の方に向いたその瞬間、胸の鼓動が早くなるのを感じた。
「もし良ければ、これ使って下さい。」
私は、財布から200円取りだして彼に渡した。
「…」
彼は、無言になった後に、少し困った顔をしていた。
昔からお節介な性格で、つい余計な事までしてしまう…。あー、またやっちゃったなーなんて少し反省していると、
「あ、あの、こんな見ず知らずの僕が頂いても良いんですか??」
急に少し明るい声になった彼に驚きつつも、
「もちろん!!もし嫌だったら、お金渡したりしませんよ!」
「ありがとうございます。今日思ったより寒くて、身体冷えちゃってたので嬉しいです。」
そう言って彼は、初めて私に笑顔を向けてくれた。笑った顔は、少し少年っぽさを感じて何だか懐かしい気持ちになった。
私がこの懐かさの意味を知るのは、もう少しあとのお話。