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memi(めみ)
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しばらく沈黙が続き、お互いの息遣いが聞こえてきそうだった。
最初に沈黙を破ったのは勇人の方だった。
「泣かせた後に告白なんて、最低だってわかってる。でも…
仁人が何を思ってるのか、知りたい」
その言葉に仁人はピクリと肩を揺らした。
自分を見つめる視線から逃れられず、ずっと見つめあう形になっていた。
彼の揺るぎない気持ちはその瞳から感じ取れる。
だけど、自分の気持ちが追い付かない。信じる気持ちに自信が持てない。
仁人は自分の気持ちに素直に、できる精一杯の正直さで応えた。
「……どう返事すればいいのかわからない」
困ったように眉を派の字に曲げ、戸惑う瞳が零れ落ちそうだ。
その表情に、勇人はもっと早く伝えるべきだったと後悔した。
こんな顔をさせたかったんじゃない。
ただ、自分のしたことは許されることではないし、愛しい人の尊厳を踏みにじったことは事実だった。
「返事を急がせたいわけじゃない。ただ…お前を傷つけたから…これ以上、俺の行為でお前を、仁人を苦しめたくない」
勇人も出来るだけ正直に自分の気持ちを伝えた。
嫌われたっていいが、彼が自分自身を責めることだけは避けたい。
「……怖かったよ」
振り絞った言葉に、勇人は目をそらし顔を下に向けた。
「勇人の事は嫌いじゃない、だけど…どうしてこんな風に触れたのか、わからない…」
仁人の混乱と悲しみが伝わってくるようで、勇人は一層後悔した。
「…仁人を傷つけるつもりなんてなかった。どうしても欲しかった…お前が」
“欲しかった”
どういう意味か分からず、仁人は眉をひそめた。
「泣いた顔を見て、俺が何をしようとしてたのかやっとわかった。怖がらせたくなかったのに」
そっと顔を上げて仁人を見る。
「本当に、ごめん…ごめんなさい」
言いながら、勇人はうなだれた。
癒せない傷をつけて、一体どうするつもりだったんだ。
何度も押し寄せてくる後悔の渦に飲み込まれそうだった。
「…勇人、」
仁人は目の前の勇人を見つめて、ようやく言葉の意味を理解し始めた。
「勇人は…俺のことが好きなの…?その、メンバー愛とかじゃ、なくて…」
「…好きだよ。メンバーとしてじゃない。恋人になりたいし、全部繋がってたい」
仁人は咄嗟にうつむいた。勇人の返事を聞いて徐々に赤くなる顔。
表情は見えないが耳がピコピコと動いている。
「あの…好きだから、こんなことしたの?」
こんなこと、と言われて心臓が大きく跳ねる。
「…はい…本当に申し訳ございません」
「…嫌いだから、じゃないの?」
「…え、?は…そんな訳ない…お前の事嫌いと思ったことねーよ!ずっと、ずっと好きだったんだ」
追い打ちをかけるように言われ、仁人はさらに顔を赤くしてますます相手の目を見れなくなった。
“嬉しい”
嫌われているどころか、自分の事を好きと言ってくれたという事実に喜びの気持ちが溢れる。
本当に?何度も聞きそうになる。
あんな酷いことをされそうになって、いや、酷いことはされたが、それでも勇人の告白で気持ちが一気に踊るのを感じている。
何て単純で、バカなんだろう。まるで生娘のようだ。
そう思ったが、また聞かずにはいられなかった。
「勇人、もう一回教えて。俺の事嫌いじゃない?一緒にいてもいいの?」
「一緒にいてもいいのか?こんな俺が…自分に自信がなくて、先に身体を手籠めにようとしたんだ…」
自分に自信がなかった、なんて。そんなことある?あの勇人が。
だけど本当にそうだとしたら…
「…もしかして、俺が普段冷たくしてるから…?」
それしか思い当たらない。もしそうだったら、本当にバカなのは自分の方だ。
彼を、こんな行動に駆り立ててしまったなんて。
「…冷たいのはきっと冗談だろうとは思ってた。けど…なんて言うか…本当に嫌われてたらどうしよって考えたりは、したかも…」
徐々に小さくなる語尾に、逆に信憑性が増していく。
それとともに、今度は仁人がうなだれる番となった。
「…勇人、ごめんなさい。俺…照れ隠しで、冷たく反応してた…」
お互い顔が見れず、不思議な時間が過ぎる。
じゃあ、俺は勘違いでこんなことしちまったのか。
自分の冷たい反応のせいで、ここまで追い詰めたんだ。
『ごめんなさい』
二人の声が重なる。同時に、お互いの視線が絡まった。
「いや、悪いのは一方的に俺の方だから、謝るのは俺だけでいい」
「…勇人をここまで追い詰めてたなんて、俺こそ、申し訳ないから…」
うう…と二人で行き詰まる。
十年以上一緒に居て、こんな空気感になったのが初めてで、お互いどうしようかと目を見合わす。
次に沈黙を破ったのは仁人の方だった。
「…勇人は、どうしたい?」
改まった問いに、勇人は真剣なまなざしで伝えた。
「俺は…一緒に居たい。恋人として。だから、付き合ってほしい」
その時になってようやく空気が和らいだのを感じた。
それはまるで、二人がようやく前に進める合図のようだった。
「はい。…こんな俺でよければ」
照れくさそうに笑う仁人に、勇人はまた心を奪われた。
コメント
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めっちゃ良かったです…! お互い「自分が悪い」って謝り合うところ、すごく切なくて、でも二人とも本気で相手を想ってるんだなって伝わってきました。仁人が「勇人は俺のことが好きなの?」って聞くシーン、照れながらも勇人の言葉をちゃんと受け止めようとしてるのが可愛くて…最後の「こんな俺でよければ」って返事にじんわり来ました。勇人の後悔と仁人の純粋さが交差する、感情が繊細に描かれた素敵なエピソードでした!