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しゃーく🦈
78
黒宮
16
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#太宰治
※中也が救われてほしい一心で書いたものです
『…なァ太宰…』
『手前…一体何がしたかったンだ?』
虚ろな目が焦点を合わせずに揺れる。きつく鎖で縛り上げられた腕は、動かすこともままならない。そんな中、中也は何も無い虚空に向かって呟いた。
『手前は…死ねてよかったなァ』
『俺が殺してやる心算だったのに…』
手入れの届かなくなり適当に伸びた髪が中也の頬を撫でて落ちる。自分が出した音さえ吸い込まれていきそうな静寂に包まれた部屋で、気づいたらことがあった。
————俺は、彼奴に恋をしていたんだ。尤も、恋とも言えない曖昧な感情だが。
『居なくなってから気づくなんか…遅えよなぁ』
「…中也?」
『…ハッ、俺もそろそろ限界みてぇだな…』
太宰だ。太宰が、目の前に居る。…まァ、着てる服の趣味は何時もよりずっと悪いが。
『何しに来たんだ。幻覚でさえ俺を嘲笑いに来たんだろ?太宰を殺せなかった、間抜けな俺を…』
目の前の太宰は何も話さない。当たり前だ、幻覚だから。此方に来ようともしない。俺がそうすると思うから。
水滴が、足に落ちた。可笑しいな、ここには水も無ぇはずだが。一滴、また一滴と、水滴が流れ落ちてくる。どこからだ。何故か、目頭が熱い。おい太宰、そこに突っ立ってねぇで、俺を嗤えよ。俺を罵れよ。こんなことで泣いて莫迦らしいとか、面倒だとか。何も言わねえのも、手前らしくねぇよ。
『ッ幻覚なら、…俺の言うことッ、聞けよ…』
「…中也」
まただ。太宰の声が聞こえた気がする。気のせいだと判っていても、期待をしてしまう。…視線を少し上に上げた。太宰が、此方に歩いてきている。
『…はは、可笑しいな』
『太宰が俺に態々近づこうなんか、するわけねぇのに…』
渇いた失笑が漏れる。幻覚だ。幻聴だ。…それでも、近づいてくる足音が、嬉しくて堪らない。こんな自分が、世界で一番嫌いだ。
『流石、幻覚だ。』
目を閉じ、未だ溢れ出てくる涙を流す。
…まるで、太宰に抱きしめられているような感覚がする。懐かしい匂いだ。細いが、長い腕。太宰の割と大きい手。やけに低い体温。…こんなんじゃ、何も温まらねぇよ。
『……抱きしめ、られて…?』
目を開ける。目の前には、さっき見た趣味の悪い服だ。触れられているような感覚まである。
「…幻覚だと思っているだろう、中也」
聞こえた。今度は、はっきりと。思わず顔を上げると、包帯の無い太宰が、目に飛び込んで来た。
『…手前、包帯は』
幻覚だ。きっと、幻覚なんだ。そう頭では言い聞かせているが、期待を。どうしても、してしまう。
「もう顔に包帯を巻くのは辞めたのだよ。折角の奇麗な私の顔が隠れていては、勿体無いだろう?」
太宰の指が涙を拭う。
「…酷い顔だ。私を想って泣いたのかい」
そう云って笑う太宰を見るだけで、心の底から安心する。なんとなく、俺の知っている太宰じゃないことは判っている。表情から雰囲気、服装まで、何もかもが違う。俺の知らない太宰だ。
それなのに、堪らなく嬉しいンだ。
可笑しいよな、ずっと嫌い合っていた仲だってのに。俺はもう、太宰に心酔してたなんて…。
「もう良いんだ、中也。」
「…汚辱を使おう、中也」
何時もなら、汚辱を使うことに少しは躊躇う。だが、今は、何故か太宰の言葉がそのまま胸に落ちる。今は太宰が居る。使っても、大丈夫だ。
そこからの記憶は無かった。気がつくと辺りに建物が消えていて、大量の瓦礫が散らばっていた。
『…生きてる』
太宰が、生かしたんだ。…また助けられちまった。あんな糞鯖に。次会ったら絶対文句云ってやる。
足音がした。2人…いや、5人。未だ追手が居たか。…正直、今の俺で勝てる気がしない。大分疲弊している。
それでも、俺は俺のできることを。
『…ッ未だ追手が居やがったか…』
碌に動かない腕に力を込めて立ち上がる。相手は5人。……なんとかなるか?
「ポートマフィアの重力使い、中原中也。」
見覚えがある。彼奴らは、確か…
「君を迎え入れよう」
「私達、旗会に」
コメント
3件
えっ…やばい、めっっっちゃ好きです…!!旗会に最後加入できたのかな…?
うわあ、第1話からこんなに重くて美しい…。中也の「太宰を♡♡♡なかった」後悔と、それでも幻覚と知りながら縋ってしまう心理描写が切なくて胸が締め付けられました。汚辱を使うシーンも「今は太宰がいる」という安心感が伝わってきてグッときた。最後に現れたのが旗会ってのも面白い展開ですね。続きが気になります!