ベロリッ
ふと、頬を舐められた。すまないは目をぱちくりとした。
───今、舐められた???
すまないは目の前の大きな狼にポカンとしていると、見覚えのある毛並みに、丸い瞳。
「・・・もしかして、“ハチク”?」
そうすまないは聞くと、
「ワフッ!」
「うわっわっ!?」
と、狼はすまないに飛びつき、べろべろと頬を舐める。でかいので、毛並みに埋まるし、舌がでかいので、頬どころか、顔がベシャベシャになる。
「ちょっ!ちょっと待って!!」
慌ててすまないは狼のじゃれ合いを止めた。でかいのに、先程の怖さを感じなかった。
「・・・やっぱり、ハチクなんだね?」
すると、狼、いや、ハチクはこくんと頷く。まるで、“こちらの言葉が分かるように”
「わふっ!」
と、ハチクはすまないの首根っこを甘噛みし、自分の背中へと放り投げる。
放り投げられたが、ふわふわとした毛並みに落ちたので、痛みはない。
すると、ハチクはまるで空を飛ぶかのように、走り抜ける。
きちんと、すまないが飛ばされない速度で走っていた。
「・・・ハチク、君が一体誰で、どうしてあいつらと知り合いなのかは僕は知らない“フリ”をしてあげる。だからさ、お願いがあるんだ。もし、息子たちに何かあったら、もし僕に何かあったら、息子たちの傍にいて欲しい。今までみたいに、家族として一緒にいて欲しいんだ」
そう言うと、ハチクは「わふっ!」と一声吠えた。
「え?もしかして、いいよって言った?・・・ふふ、ありがとう。ハチク」
そうすまないは微睡みつつ、ハチクと夜のお散歩を楽しんだ。