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いざとなれば、近隣の村から誘拐してくるしかない。ただ、一度なら神隠し、ということにもなろうが、何度も続けば隠しきれるものではない。これは最終手段、どうしょうもなくなったときにだけ使える方法だった。では、普段はどうすればいいのか。村人が導き出した答えは――。
その日、ある神社の巫女が、猿神村を訪ねてきた。
「すいません、猿の霊の祟りによって困っているという文を出されたのは、こちらの村であっていますか?」
「おお、巫女さま、よくぞおいでくださった」
村の老人が巫女を出迎えた。
「さっそくお話を聞かせてください。まず、どんな被害が出ているのか、詳しく教えてください」
「はい、このところ、天候が悪いわけでもなく、病気にかかったわけでもないのに、作物が育たない、ということが続きましてな。わしは長く生きておるが、こんなことははじめてじゃ。村で話し合った結果、これは祟りに違いない、ということになりましてな」
「なるほど……。それで、それが猿の霊の祟りだと考えられた理由は?」
「はい、この村は糧が乏しく、さらに、たびたび猿に襲われて困っておりました。そこで、猿を虐殺したことがあるのです。もし、何かの祟りがあるとするなら、あのときの猿たちに違いないと」
「なるほど。猿を殺したとき、供養塔などは建てられましたか?」
「いや、そんな余裕もなく……」
「そうですか。確かに、猿の祟りの可能性はありそうですね……。あともうひとつ、猿に直接村人が襲われたことはありますか?」
「直接ですか? ありませんね」
「そうなんですね……」
「どうかしましたか?」
「いえ、猿の霊が祟る、という話はあまり聞いたことがなくて。どちらかというと猿は妖怪化し、直接襲ってくることが多いんですよ」
「そ、そうなんですね」
「ええ。その場合、物理的に襲ってきますから、私一人では対処が難しくて。霊体ということであれば、私一人でもなんとかなるとは思いますが、念のため少し調査させてください。それによって今後の対策を決めましょう」
「もし、妖怪化していたら、どうなるのでしょう?」
「一度神社に戻って、人を集めてきます。村の方にも手伝ってもらうかもしれません。まあ、なにはともあれ、まずは怪異の原因を突き止めないといけません。そうですね……、まずは猿が殺されたという場所に行ってみましょう。強い恨みが残っていないか、調べてみましょう」
「ぜひ、お願いします」
こうして二人は猿が虐殺された現場に向かうことになった。
(続く)