テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「…もしも俺にこんな力が無けりゃ、お前とまだ一緒に居れたのにな。」
彼はそう言って、悲しそうに空を見上げた。
検証検査の報告に来た彼は、最初は嬉しそうにしていた。次第にその表情は明るいものではなくなっていき、その時は、様子もいつもとは変わっていっていた。
「…もしも、なんて言ったって何も変わりませんよ。」
「ははっ、それもそうだな!」
「……あなたがもし、その力を隠せる術を持っていたら。その時は、その力を隠しましたか?」
どうしてこんな事を言ったのか、今でも分からない。
「おいおい、さっきと思いっきり矛盾してるじゃんか。…まぁ、そうだな…俺はそれでも同じ結果を出してたと思うぞ。」
彼はこちらを見て、冗談の様に笑った。
その様子はいつもの様だった。でもどうしてか、状況を見ると素直には喜べなかった覚えがある。
「それはまた…どうしてでしょう?」
「お前を守る為だよ。ほら…政府は一人でも力を持つ奴が出れば、少しの間は再検査しないだろ?その間だけでもお前は安全に居られる。だからだよ。」
「…僕は、やっぱり理解が―――」
◇ ◆ ◇
「…冬月さん、先生の話終わったよ。」
意識はそこで、いつもの見慣れた光景に移り変わった。
さっきのは夢だったんだ。そう分かった瞬間、ほっとした感情と、どうしてという感情が心の中で入り混じった。