コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
寝巻に使ったTシャツと短パンに再び着がえて布団に入ったものの、やはり眠れない。
―――てか、体感的には数時間前に起きたばかりなのに、眠れるわけなくない……?
諦めて目を開けた。
―――身体は疲れてるのにな……。
何も考えていない両手が自然と乳房に伸びる。
「―――と、危ない危ない……!」
ここで自慰行為をするのは、仙田に全てを見透かされている様で嫌だった。
仙田だけではなくあの男にもーーー。
『―――皆に迷惑の掛かる程度の騒音行為、さらには共有の場所での露出行為、性行為、自慰行為はご遠慮願います』
昨日アリスは、確かに自分を見ながら言った。
そして仙田が部屋に入ってきたときも―――。
『強姦されそうになったんですか?』
まるでゴミでも見るような目でこちらを睨んだ。
あの少年が嫌いだ。
人間だろうと、死神であろうと。
「――――」
アリスのことを考えていたら、いつの間にか指は自分の乳首を撫でていた。
「―――んん……」
一度弄りだすと止まらなくて、腰が浮く。
誰にしよう。
誰を思い浮かべよう……。
昨日、胸を揉まれ舐められ吸われたからか、一瞬、仙田の顔が浮かぶ。
ーーーやだ、あんな奴。
昔からヤンキーみたいな派手な人は嫌いだ。
何度か試したことがあるが、粋がってるくせにセックスは激しいだけで乱暴で下手くそだった。
それよりーーー
やっぱり社会人がいい。
後腐れのないワリキリの男がいい。
それでいて慣れてない純粋な人がいい。
なおかつ愛撫がしつこくなくて、挿入してからも遅漏じゃない、若い人がいい。
そう。
―――花崎みたいな、人がいい。
花崎の顔を思い出す。
近づいた時の彼の柔軟剤の清潔な匂いを思い出す。
―――彼はなぜ死んだんだろう。
あのムカつく女ーーー筒井美穂の、最後の姿を思い出す。
目が潰れ、スカートが焼け焦げたように黒く破れ、ミュールの踵が折れていた。
死因は、おそらく事故だ。
アリスは、事故で死んだ人間は2人だといった。
残る死因は―――。
事故、圧殺、刺殺、自殺。
自分はどうやって死んだんだろう。
誰かに殺されたのかもしれない。
遊んできた男たちに。
遊ばせてきた男たちに。
それか―――。
自分を一番憎んでいるあの男に。
でもきっと、花崎は違う。
誰かに殺されるようなひどい人ではない。
そしてきっと、
自殺するような弱い人でもない。
きっと彼が事故死の2人目だ。
そうに決まってる。
目を瞑る。
花崎の気配を思い出す。
ーーーきっと彼は、急に尚子を押し倒したりしない。
ベッドに足を下ろして座ってーーー
『大丈夫?』
優しく聞いてくれる。
『本当に、いいのか?』
コクンと頷くと、嬉しそうにそしてどこかほっとしたように微笑み、優しく唇を付ける。
一旦口を離して尚子の反応を見る。
大丈夫だとわかると抱きしめながら唇を合わせる。
今度は唇の温度がわかるほど強く。
そしてゆっくりと舌が入ってくる―――。
とろけるように優しく。
蜜をたっぷり含んだ舌が、熱く絡んでくる。
隙間から息が漏れる。
動きに合わせて声が漏れる。
「―――あ……」
想像しながら尚子の口からは本当の声が漏れた。
服の上から触っている乳首も硬くなっていく。
腰が左右に揺れ、短パンの縫い目が股間に食い込む。
―――ダメだ。
我慢できそうにない。
尚子は起き上がった。
◆◆◆◆◆
「――――はい」
ノックの音で彼は目を覚ました。
「―――ちょっと、いいですか」
薄い布団を剥ぐと、彼は足を下ろした。
ドアに寄り鍵を開けた。
ノブを回して開けると、男はそこに立っていた。
「――――!!」
男は音もなく部屋に入ると、後ろ手でドアを閉めた。
そして彼の襟首を掴み、そのままベッドに押し倒した。
「ーーーやっぱり。今夜あたり来ると思ってましたよ」
アリスは組み敷かれながら男を見上げた。
「―――花崎さん?」
名前を呼ばれた男は、アリスの細い体に跨りながらにやりと笑った。
◆◆◆◆◆
「――――?」
尚子は出来るだけ音を立てないように花崎のドアをノックしたが、中からは何の反応もない。
そのドアに耳を付ける。
反応どころか気配自体がないような気がする。
―――いない?まさか……。
ガッカリして尚子はもう一度ドアを見つめた。
ここで待っていれば戻ってきてくれるだろうか。
そもそもこんな閉鎖された空間でどこにいるのだろう。
誰かと話をしに行った?
アリスと?まさか。
尾山と?それこそ想像できない。
それでは―――。
仙田と?
あり得る。
花崎は仙田と和解したがっていた。
何か説得しに行こうとしてたんだとしたらーー。
尚子は仙田の部屋のドアを見つめ、ゴクンと唾液を飲み込んだ。
◇◇◇◇◇
「ーーいらっしゃい」
花崎とは対照的に、彼はたった1回のノックでドアを開けた。
「あの……花崎さん、来てないですか?」
遠慮がちに聞く。
「ーーー昨日はアリスで今日は花崎か。言いわけがいっぱいあっていいな、お前は」
仙田が笑いながら尚子の細い手首を握った。
「……でも今日は、逃がさねえぞ」
言いながら耳を嘗め上げられる。
「来たのは―――お前だ」
抱きすくめられながら部屋に引きこまれる。
―――ああ……。
心も体も満たされていく。
そうだ。本当は―――。
昨日の仙田が言った、アリスが呼んでいるなんて嘘だと気づいていた。
彼が何も言わずに襲ってきたら、少しの抵抗と、戸惑いの混ざる喘ぎ声で応えようと思っていた。
「お前、オナニーしてただろ」
それなのに仙田が要らないことを言うから。
羞恥心を誤魔化すために抵抗せざるを得なくなってしまった。
耳を嘗めた舌が頬を滑って唇に到達する。
―――ほらね、ヤンキー特有の乱暴で自分本位なキス。
頭では馬鹿にしてるのに身体はビリビリと痺れてくる。
それを見透かしたのか、それともただ単に前戯が面倒くさいのか、仙田の指が尚子の短パンの中に入ってくる。
「トロットロ……。今日もシテたのか?」
仙田が低い声で笑う。
やっぱり―――。
こいつの声と顔は悪くない。
尚子はそのたくましい腕に掴まりながら、彼の指に期待する。
早く薄い陰毛をかき分けて入ってきてほしい。
割れ目に指を突き立てて、中まで、奥まで……
早く……早く………!
早く……早く……早く…早く!!