第23章:二つ目の影、カティナの刃
黄昏の誓いから数日後――
ゲズとセレナは、ファルナの北東にある“風鳴谷”へ向かっていた。
だがその途中、突如として空が裂ける。
雷のような咆哮と共に、空間のひび割れから一人の女性が舞い降りた。
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【1. カティナ降臨】
長い黒髪を三つ編みに束ね、銀と赤の混じった戦装束。
背中には刀が二本。まるで風と雷を纏うような動き。
その瞳には、冷たい決意と、ほんの微かな哀しみが浮かんでいた。
カティナ「ゲズ=アストリア、そしてセレナ=リュミエール……確認。
私はカティナ。ルシフェル直属の影部隊――“深紅の残響”の筆頭」
セレナ「……まさか……あなた……!」
カティナ「そう。私はかつて、ウカビルと共に戦った――もう一人の“英雄”だった」
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【2. 剣、交える理由】
ゲズが剣を構え、セレナが前に出ようとした瞬間、カティナの刃が稲妻のように閃く。
ギリギリのところでセレナが防御の結界を張る。
カティナ「躊躇は命取り。私は“過去”に縛られてなどいない。
ウカビル様が闇に堕ちた今――私の使命は、希望を刈り取ること」
ゲズ「……それが“お前の信じたもの”かよ!? それで英雄かよ!」
カティナ「英雄……? ふん、あの名に意味などない。
ただ生き残るために戦い、そして選ばれなかった者は、皆……影へと堕ちる」
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【3. セレナの問い】
セレナが小さく息を呑み、問いかける。
セレナ「……あなたは……ウカビルを、“まだ”信じてるのね?」
カティナの表情がわずかに揺れる。
カティナ「信じてなどいない……信じてなど……もう……」
その刹那、ゲズが踏み込む!
ゲズ「なら、ぶつけてやるよ――俺の“信じる英雄の力”を!!」
雷の刃がカティナの双剣と激突し、周囲の岩壁が弾け飛ぶ。
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【4. 揺らぐ影】
激しい交戦の末、ゲズの雷撃がカティナの肩をかすめ、地に膝をつかせる。
だがカティナの目には、怒りも憎しみもない。
カティナ「強くなったな……“星の継承者”。
……だが、それはまだ“優しさ”で成り立っている。
優しさでは……ルシフェルには勝てない」
ゲズ「その優しさがあったから、俺はここまで来れたんだ。
お前だって……本当はまだ……!」
セレナが一歩前に出て、そっと言う。
セレナ「ウカビルを、救いたいと思ってるんでしょう……?」
カティナの瞳に、静かに涙が滲む。
カティナ「……会えるものなら、会いたいさ……本物の彼に」
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【5. そして立ち去る】
その瞬間、空間が再び裂け、ルシフェルの魔眼が上空に浮かぶ。
ルシフェル「カティナ、十分よ。戻りなさい。
“情”が動く前に」
カティナは振り返らずに立ち上がる。
カティナ「次に会うときは、容赦しない。それでも立ちはだかるなら――
私の刃は、“迷い”を殺すためにある」
そして闇の中へ消えていった。
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