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2023/10/15 一部訂正しました。
第5話
「ん〜っ…」
カーテンを勢いよく開け、伸びをする。
「‥なんか、嫌な予感するな‥」
そう私の勘が言っている。
大抵、めめさんになんかに巻き込まれるとかなんだけど。
『やぁやぁ、〝Latte〟さん』
「‥は?」
見たことの無い顔。角。目の色。
『あッは、やっぱ混乱してるよね』
気付けば椅子の上でくつろいでいたそいつは、笑いながら言う。
「え〜ッとぉ‥誰ですか‥?」
『ん?あぁ、私は御前崎八幡宮。八幡でもボンガとでも自由に呼んで〜』
‥????
八幡‥はまだ分かるけど、ボンガって全くかすってなくね??
「あー、八幡‥さん、なんでここに?」
『いや〜、私の野生の勘がここで面白いことが起きるって叫んでて〜。』
「えぇ‥」
やっぱ嫌な予感は確定じゃん!!
…てか、野生の勘って叫ぶんだ。
『まぁまぁ、なんか起きたら守ってあげますよ。』
「えっと、じゃあ‥めめさんと同じ、守護__」
『‥めめさん?』
「守る」のだから、守護妖怪だと思ったんだけど‥
『‥めめさんが、いるの?この近くに?』
「えッ、そう、ですけど‥」
余りにも強い圧に弱々しく答える。
それにしても、めめさんになにかされたのだろうか。
『‥めめさんが居るところ、連れてって。』
‥とても必死だ。
そう、青く情熱的な鋭い目から伝わってくる。
「あ、ッはい‥」
隣の部屋のインターホンを押す。
『はい〜?』
「あッ、いえもんさん、えっと、めめさん居ますか?」
『あ、はい。呼んできますね』
‥とりあえず呼んでもらえたが、この妖怪__八幡さんの目的はなんなのだろうか。
『私になにか用ですか?』
『‥めめ、さん‥ですよね?』
『あ、八幡さん。どうしました?』
『どうしましたッ、じゃな‥ッ』
必死に涙を手で拭う八幡さん。
『ッ‥置いてくん、酷いですよ』
『あー、まぁ、付いてこられちゃ困るので。』
「‥???」
彼女たちはなんの話をしているのだろう。
『‥でも、また会えて、私も嬉しいですよ。』
「‥」
めめさんの、作り物にしか見えない、貼り付けた笑顔。
それが怖くて怖くてたまらなかった。
『‥ッ、あの、っ…』
『なんでしょう?』
『‥もっ、かい…戻ってきません、か…っ』
『‥どうしましょうか』
「‥ッひ、…」
まるでわかっていたかのように、貼り付けの笑顔で答えるめめさん。
『‥みんな、おかしく、なってんですよ‥ッ』
『‥Latteさん、入っててください。』
「ぇあ、はい‥」
めめさんに言われるがまま、いえもんさんの部屋にお邪魔する。
ドアを閉めるときにちらっと見えたのは、
『‥嫌ですよ、そんなの。』
冷徹で残酷な、めめさんの顔だった。
『__!』
『‥__。』
『〜〜、__‥!』
外で言い争う声が聞こえるが、そんなことよりも、さっきのめめさんの顔が、脳裏にこびりついて離れない。
「‥Latteさん?」
「あ、ッ‥はい?」
玄関から動かなかった私を疑問に思ったのか、声を掛けてくるいえもんさん。
「えっと‥これ、結構よくありますよ」
「‥へ?」
よくある‥つまり、あの言い争いが、あの冷徹なめめさんの表情がよくあるということ。
あぁ、考えただけで恐ろしい。
「あ、お茶出しますね」
そんな言葉も、私の耳には入らなかった。
そして、窓から見えた。
空が紅く、黒く染まる時。
真っ黒な、紅く光る“満月”。
「‥なんこれ」
そう呟くいえもんさん。
私が聞きたい。
ドアの先から、聞こえた。
『‥はは、めめさんが遅いから‥来ちゃった。』
真っ黒な羽と天使の輪っかを持つ、堕天使が。