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「……私は、あなたにとって、何なんですか?」
「興味……前にも、そう言ったでしょう?」
本心は口には出せないまま、偽りの言葉を重ねた。
「そんなことじゃなく、この関係の意味を聞いてるんです……」
引き下がらずに言いつのられて、
「意味…ですか……」
じっとその顔を見つめて、今本当のことを話さなければ二度とは言えないだろうことを悟りながら、
「……体だけの関係…とでも、言ってほしいですか」
と、一言を放った。
言葉にした瞬間、息が詰まるようにも感じる。
そんなきつい言い方でしか、自身の気持ちを覆い隠せないことに、切なさが襲った……。
なぜ、伝えられないのだと……
そう感じている目の前で、彼女が泣いているのが知れると、
労るような想いが押し寄せた。
「……泣くほど、苦しいのですか……?」
そうせずにはいられない思いで、彼女の頬をつたった涙のあとに唇を寄せた。
「……あなたになんか、わからない……」
顔が背けられて、言葉にしなければ伝えられないことをわかりながら、
「……私には、あなたの気持ちがわからないというのですか?」
尚も、そう訊いた。
「……わかるわけなんか、ない」
涙に濡れた頬にあてがった手が力ずくで引き剥がされ、上目に睨み据えられる。
通じることのない思いを苦く噛み締めながら、鬱陶しげに髪を掻き上げて、
「……前にも、言ったはずですよね? 私の心の内などあなたには知れないと……」
首筋に唇を付けて、痕が残るほどの痣をその肌に残した。
どうしても、彼女を自分のものにしてしまいたくなっていた……。
「……この痕も、その証しです」
口づけたところを指でなぞると、
「……私は、あなたのものなんかじゃない」
彼女は辛そうな泣き顔で自らの身体を腕に抱き締めて、頑なに拒んだ。
息をついて、「……他に、好きな男もいないのでしょう? ……ならば、おとなしく私のものになればいい……」 そんな風にしかもう落とす術もないように口にした。
「……いなくたって、あなたのものになんかならない……」
伝わるはずもない気持ちが、空回りをしているのを頭の隅ではわかりつつ、
「……無意味ですね、そんなことは……」
言葉通りの無意味な台詞を連ねた。