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「……みんな、準備できた?」リーダーの村田が低い声で呼びかけた。
珠莉は弟の璃都の手を強く握った。
りとはまだ幼く、不安げに珠莉の顔を見上げている。
両親を失ってから、珠莉はどんな時も璃都を離さずに守ってきた。
他の子供たちや妊婦の松坂さんも中央に集められ、
大人たちが四角く囲むように立ち位置を決めた。
「絶対離れちゃダメだからね」
珠莉は璃都に耳打ちする。
りとは小さく頷いて、珠莉の手をぎゅうっと握り返した。
妊婦の松坂さんもすぐそば、珠莉たち姉弟を見守りながら優しく微笑む。
ガード役の大人たちは、傘や金属棒を構え、神経を研ぎ澄ませている。
ゆっくりと扉が開き、朝の空気がひやりと流れ込む。
村田が号令をかけた。「真ん中、前に進むぞ。大人は全員、目を離すな!」
大人たちが声を殺して周囲を見張る中、珠莉とりとは希望も不安も胸に、
しっかりと手をつなぎ歩き出す――。
まだ遠くでうめくゾンビの声。
だけど、珠莉も璃都も…「絶対生きる」この手だけは離さないと、心に決めて。
彼らは静かに、次のサービスエリアを目指して歩を進めた。