テラーノベル
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しばらく歩いて、道路の先に青い看板が見えた。【次のサービスエリア 14km】
その数字に、全員が足を止めて絶句した。
「じゅ、14キロ……」羽流がぽつりと呟く。
「こんなに……遠いの?」
誰かが弱々しく口にする。
珠莉は璃都の手を握り直した。璃都の顔にも、疲れと不安が浮かんでいる。
「歩くぞ」村田が前向きに言ったが、その声にも焦りがにじんでいた。
歩き続ける。
周りには転がる荷物や、壊れた街灯、時折遠くから聞こえるうめき声。車道の端に壊れた車も点々と見える。
みんな足を引きずりながら、必死で前に進む。
しばらくすると、
「……あれ、車が空いてる?」
加藤が少し先を指差す。
ドアの開いたワゴンやセダンが何台か、路肩に止まっている。
「乗れるやつ、探そう!」村田が声をあげた。
大人たちが素早く周囲に目を光らせながら、
一台一台、ドアを開けては状況を確認していく。
燃料が残っていない車、窓が割れている車、そして……
珠莉と璃都は、そんな大人たちの後ろで、言葉少なに車の影を見つめていた。
「おねえちゃん…大丈夫かな?」
「うん、だいじょうぶ。きっと動く車が見つかるよ」
珠莉は璃都の手を握りしめた。
どこかの車に、まだ生きる希望が残っていることを祈るように――
彼らは、乗れる車を探し始めた。
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