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誰よりも君を想う素敵な恋だった
寒い冬の風。通り過ぎる車たち。眺めているとひたすらに自分がちっぽけに感じる。
家に帰れば大量の請求書。親からの通知。どんどん息が浅くなり苦しくなる。
この気持ちをどこへ捨てよう。いっそ息を止めた方が早いのか。
いろんな感情が自分の中で渦巻く。苦しい。
こんな時は外へ出る。どこまでもどこまでも気が済むまで進んでいく。感情をつづった音楽を聴きながら。
そんな毎日を送ってた。
○夜職の世界
<じゃあ、メンエス?>
<それしかなくね>
<決まり。探すわ>
ツーツーツー
電話の切れる音は寂しさが生まれる音。
明るい世界からまた暗闇に突き落とされるおと。
ピロン
<ここにしよ!!いいとこ見つけた!>
このまま夜職の世界に行ってしまうのかな。別にいっか。
おっけいと打ち込んでベットに倒れ込むと急に睡魔に襲われた。
<久しぶりに眠れそう>
○始まり
<もしもし〜今どこらへん?>
<もう駅ついたよ〜。あ見つけた!切るね>
電話を切って友達のところへ走る。
今日は親友のレアとメンズエステの面接に来た
<昨日サラから返事なくて焦った〜。まさか次の日面接になると思わなかったから>
<だね、朝起きてびびったよ。まあ早い方が嬉しいけど>
隣で話すレアはずっと前からの親友。友達は多い方だけど気を許せるのはこの子だけ。なぜか気が合う最高の親友。
担当のマネージャーから送られてきた位置情報を見ながら歩く。
たどり着いたのはどこにでもあるカフェだった。
二人で飲み物を頼んで席に着く。
<やば、緊張してきた>
<わかる。>
そんな話をしているとレアのスマホが鳴った。
多分マネージャーからというのは電話をしているレアを見れば分かった。
店の中を見渡すと大きな男の人がキョロキョロしながらスマホを耳に当てている。
<あの人だ>
大きな男の人がこっちに気付き目の前に座る。
(でか)
心の中で素直な意見をこぼしながらマネージャーに挨拶をする。
<いや〜二人とも小さいから分からなかったよ〜>
陽気な男の人はそう言いながら真冬なのに汗を拭う。
確かに私たち二人は同じ年代の女の子の中ではかなり小さい方ではあるが
(お前も十分でけーよ)
心の中でまた素直な意見をこぼす
そのまま色々話を聞き正式に雇われることになった。
<じゃあ今日、研修しちゃいましょうか!私は先に行くので後からタクシーで来てください>
と2000円を机に置きマネージャーは店を出た。
その5分後に二人で店を出てすぐ近くに止まっていたタクシーに乗る。
<今日面接からの今日研修ってえぐいね>
<すぐ働けるのはいいね〜>
こういう仕事はこれが普通なのかと話をしながら目的地に向かう。
教えてもらったところは公園だった。
タクシーから降りて少し歩くとブランコの近くにマネージャーがいた。
お釣りを渡して3人で歩き出す。
小学生くらいの小さい男の子たちがサッカーをしているのを横目で見ながら歩く。
(変わったな)
心の中は素直だ。口には出ないがそのまま自分が感じたことを言葉にしてしまう。
どうして人は変化を求めるんだろう。どうして変わっていくのだろう。
そんな疑問だけが頭に残る。
それは自分が自分に問いた疑問だった。
マネージャーに連れられてついたところはマンションだった。
オートロックを抜けエレベーターで4階に上がった。家の扉は三つあって、1番奥の扉を開けた。
中は普通の1Kの部屋だった。
思っていたよりも臭くはないし、きれいだった。
<あ、ゆいさんこんにちは。この子達よろしくお願いします。>
マネージャーが声をかけた先に少しぽっちゃりとした女の人が笑顔で立っていた。
<は〜い>
ゆいさんという女の人はニコニコしながらこっちおいでと私たちを呼ぶ。
<このセラピストさんはマッサージが好評でリピートのお客さんがたくさんついているんですよ。今日はこの方に研修をお願いしているのでしっかり勉強してね>
そう言いながらマネージャーは外へ出て行った。
そのまま自己紹介から始まり研修をした。研修は難しくもなく笑いながらしていたのであっという間に時間が過ぎていった。
終わったとゆいさんがマネージャーに電話をし数分後にマネージャーが帰ってきた。
何分か研修の内容や適当な会話をし、ゆいさんとは別れ外に出た。
外は少し暗くなっていて公園にいた男の子たちはもういなかった。
<今日はお疲れ様でした。シフトは後で送ってください。>
次のシフトの話などをしてマネージャーと別れ二人で歩きながら帰った。
<なんか思ってたよりやっていけそう>
ニコニコしながらいうレアは足取りが軽そうで私も嬉しくなった。
意外にも楽しそうと感じた。
今まで昼にやっていたバイトは飽き性の私にとって苦痛で仕方なく、シフトもだんだん減っていき当日欠勤ばかりしていた。
そんな私でもやっていけるような気分になれた。
<私、夜職の方が向いてる気がしてきた。>
<きっとそうなんじゃない?しかも日払い手渡しだし、多分やりがい感じられるからサラも続けていけると想うよ>
やっぱりレアは私を理解してる。何言ってるんだ。と言われるようなことを口にしてもしっかり受け止めてくれる。
レアと駅で別れると、また急に不安な気持ちが湧いてきた。
(イヤホンどこだっけ)
曲を聞くのは好きだ。その時の自分の感情に1番あっている音楽を探して聞くのが好きだ。
私の気持ちを音楽に乗せて代弁してくれる。それも、大きな声でみんなに聞こえるように。
何度、自分の気持ちを曲にしたいと思ったか。
紙に書いたことは何度もあるが結局いつも捨ててしまう。
誰も共感してくれなかったら?笑われたら?そもそも歌詞はかけても曲は作れない。
だから捨てる。
神様、どうしてこの世には幸せな人と不幸な人がいるのですか。
と月が輝く空を見上げて聞いてみる。
もちろん返事はなかった。